依頼へ出発
三時十分前
食事を終えたユーリスたちは校門前に向かっていた
この場合ユーリスしか呼ばれていないのだが二人ともついてきた。二人曰く
「オレも光速の姫を一目見たいんだぜ。お前だけ見るってのは卑怯じゃね」
「二人がどれくらいいちゃいちゃしてるか見るため」
だそうだ。ったく、何がいちゃいちゃだ。そんなことしないっつーの
あ、ちげーよ。そういうのに興味がないわけじゃなくて、カナンさんとつりあわないだけだからな
「ユーリス。あんな美人さんと一緒にいられてうれしいでしょ」
ティアはユーリスの顔を見上げてそう質問する
「あー、確かにな。受けている依頼がSランクじゃなければ最高かもな」
もうすぐ校門だ。すると銀髪の美女が佇んでいるのを見かける
間違いはない。カナンだ
「あ、ユーリス君。こっちよ」
カナンに呼ばれ少し駆け足で向かう
ユーリスは着くや否カナンのほうに向き
「すみません、カナンさん。せめてあと二、三十分速く来るべきでした」
頭を深くまで下げ謝る(決して遅れてはいない)
「いや、そんなに気を使わなくていいよ。あと五分はあるもの」
(なんかこんなユーリス気持ち悪くない?)
(確かにな。あいつがかしこまっている姿見るの初めてだしな)
ユーリスの態度を見て幼馴染み二人がひそひそと話す
おそらくユーリスは心の中で「うるせぇ」とでも思っているのだろう
「そちらの子は」
カナンは後ろの二人、ジャックとティアを指差す
「俺の友・・・いいえただの人型精霊でしょう」
「ひでぇ扱いだな。つかそんなもんいねぇし」
ユーリスはさっきまで話していた仲間を人ではないと全否定。はたから見ればひどい光景だ
「声が聞こえたのだけど」
「最近の人型精霊は話すことが出来るので」
カナンの言葉まで押し切り否定する
「そろそろ我慢の限界だ」
ジャックはユーリスの言葉を打ち切らせる
「俺は」「私は」
ジャックとティアの声がもろにかぶる
「お前からでいいよ」
「それはこっちの台詞だよ」
「Aクラスなんだから普通先なのはそっちだろ」
「Aクラスは普通は後だよ―――」
「―――確かジャックさんにティアさんですよね」
エンドレスになりそうだった会話をとめたのはユーリスではなくカナンだった
『えっ、なんで分かるんですか』
二人だけでなくユーリスまでもが聞き返す。それだけ驚いたのだろう
「ティアさんは特にSクラスに匹敵するAクラスの方ですから。それなりに耳にするのですよ」
ユーリスはカナンの会話から予想してつぶやく。それよりも口からこぼれたの方があっている
「アマリリス経由か・・・」
「ええ、学園長がよく言ってますよ」
ティアは質問する
「ほかにはよく聞くAクラスの人はいます?」
「いいえ」
「へー、なんかおかしいね。ユーリス」
「あ、ああ」
「どうしたの、ユーリス。中った?」
「なんでもない。それと俺は生ものは口にしてない」
冷静な突っ込みを入れる。そして心の中で考える
(確かにな。ティアはAクラスの中で優秀だが、あくまで優秀レベルだ。Aクラス最強というわけではないからな)
となると・・・
(原因は俺か?)
俺はアマリリスに目をつけられているから個人情報は徹底的に調べられているだろう
人間関係はもう筒抜けだ
「時間にもうなるんじゃないか」
ジャックのその一言で意識を戻す
「ん?あ、もうこんな時間か」
「そうですね。そろそろ行きましょう」
「ちなみに何でいくんですか」
「歩きです」
はっ?
意味が理解できずにそう返してしまいそうになった
「え、冗談はよしてくださいよ。カナンさん。テルツァ鉱山まで100キロはありますよ。100キロ。一般的に歩く距離じゃないですよ。あははは・・・」
「この目が嘘ついてると思う?」
―――まずいカナンさん、やりかねん
間違いない(おそらく)、少なくとも目はマジだ
「という嘘はほっておいて」
「カナンさん。意外と悪魔ですね・・・」
ティアがそう言う
「乗り物は馬です」
「馬っすか・・・」
こちらは歩きより速いとは言えちょっとやそこらでは目的地テルツァには着かない
「騎乗術は習ってないの?」
「騎○位?」
「黙ってろ。お前は恥じらいというものを知れ」
ガズッ
ユーリスの拳がクリーンヒットする
「あぁ、すげぇいいよ。お前最高、マジ最高。そしてその殴っても殴っても罪の意識のかけらすら感じさせないそのアホ面最高。そしてサンドバックジャック最高おおぉぉぉぉぉぉぉぉおおおッ!!」
「オレの名前はサンドバックじゃねぇぇぇぇッ!」
「あ、そうだっけ」
「そんなことも覚えられねぇのか」
「大丈夫。わざとだから」
「てめぇ、て何の話だったけ」
「さっき言っただろ。って、脳みそすら入ってないお前の頭じゃ覚えられないか」
「それぐらいはいっとるわ!」
隣からティアの「はぁ」というあきれのため息が聞こえた。しかたねぇだろ
「それと、馬も嘘よ」
「カナンさん、小悪魔系ですね。確実に」
「それと、本当に乗り物はなんですか?」
ユーリスはまじめに質問する
「そろそろくると思うのだけど」
カナンのその声を待っていましたかと言うようなタイミングでバタバタバタッ、という騒音が上から響いてくる。なんだろうと言わんばかりに三人は空を見上げた
「えっ、あれってもしかして」
口をぽかんと開けたままの上を見上げたティアがそういう。
「『ホワイト・リコラス』社のヘリ?」
ユーリスとジャックは声をハモらせていった
ホワイト・リコラス
世界中で騒がれている大手機械メーカー
といいながらも剣や槍、弓なども作っている
車という動く機械で迷ったらここ
武器で迷ったらここ
日常電化製品で迷ったらここ
などともいわれるくらいだ
最先端兵器もここで研究されている
「そうよ」
カナンは肯定する
「HR・MGM L NS。それがこの機体の名前」
『それって先月公開の最新作じゃないですかっ!!』
三人は度肝を抜かされた
HRはホワイト・リコラスの略
MGMはそれぞれ魔道砲、誘導弾、大型旋回式機関銃の頭文字
要するにこの機体は55cm超高出力魔道砲2門や核弾頭誘導ミサイル6機や秒間150発の弾を乱射する機関銃4機を搭載していて、一国をボタン一つで滅ぼせるような危ないやつだ
「ツテを使ってね」
普通戦争用のような代物はツテでも無理だと思うから、何かしら醜い手段をとったのだろう
「いいな。あの機体にユーリスは乗れて」
「まあこれに乗っていく所に魔神がいなければ最高かもな」
ヘリコプターに二人は足を掛ける
「いってらっしゃい。カナンさん」
「いってらっしゃい。カナンさ~ん」
(あ、俺幼なじみ二人の眼中にない)
ヘリコプターに乗り込む。武装内容や見た目のいかつさに対し中は広くいきなり見たらビジネスの飛行機と間違えるような感じだ
ユーリスはそこらへんの席に座る(隣はカナン)
席に座りシートベルトをすると
ヘリの乗組員に
「約三十分くらいです」
といわれる
三十分か、案外長いなと思っていると
「ねえ」
突然隣のカナンが横を向いてユーリスに聞いてくる
「なんですか、カナンさん?」
「君って、特別なの?
学園長は大きく評価している。そしてまだほとんどの人が知らない超高位精霊のことまで知っている」
少し沈黙が続くがユーリスは口を開く
「今回は本気で行く予定です」
「本気?」
「はい。本気で行くつもりです」
この状態での、な
二十五分たってテルツァにたどり着く
「あの子がユーリス君か・・・」
彼らは気づいてない
「面白そうだ。魔神の自我をこちらで操り、視覚同調させて、少し暴走させるかな」
この事件はたまたま起きたわけではなく必然であったこと。そして
これは、一人の人間によって監視されていることを