本音
「じゃ、ねぇちゃん。ちゃーんと休んどけよ!行ってきまーす」
大きな声が、ここら辺一帯に響き渡った。
この声の主は、春輝。
インフルエンザに感染してしまった姉の看病を任せられ、ずっと1人で家でゲームをしていた春輝だったが、離れて暮らしていた、1番上の姉が帰って来てくれたため、遊びに行っているわけだ。
途中で、りほを見つけた。
三日月公園にいたりほの表情は、心なしか暗いように感じた。
春輝は、話しかけてみることにした。
「よぅ、りほ。こんなとこでどうした?」
「あ、春輝・・・えっと、遊んでたの」
「バーカ。6年も一緒にいるんだ。なんかあったことぐらいわかるってーの」
「ははっ、やっぱかなわないなぁ。実はね、私、悠斗の事が好きでね・・・へへっ、びっくりしたでしょ。って当たり前かぁ・・・この事、誰にも言ってないんだよ。だから言わないでね?でね、私は悠斗の事が、とっても好き。だけど・・・悠斗は、愛莉の事が好きっぽいんだ・・・ってか、絶対好き。だって、この前の『キミとmystery』の放送で、悠斗、愛莉の口の中に舌を入れてキスしたんだって。絶対これって、好き・・・ってことだよね・・・嫌いな人とか、普通の人に、こんなことできる?できないでしょ。でね、愛莉も『なんかわかんないけど、気持ちよかった』って言ってるから、自分では気づいてないのかもしれないけど、愛莉も悠斗の事が好き。つまり、2人は両思い・・・ってことだから、りほの入る隙ないじゃん?だからね・・・ちょっと・・・あ、なんかごめんね、こんな事、春輝に言っちゃって・・・本当にごめん・・・」
「・・・おまえにも」
「へ?」
「りほにも、入る隙くらいあるんじゃねぇか?だいじょーぶ!ちゃんと自分を信じろよ!じゃなきゃ、おれの知っているりほじゃないと思うぜ?」
「ははっ、春輝は優しいね。ありがとう。でもいいの。だって私、悠斗もだけど、愛莉もだぁいすきだもん!応援しちゃうよっ」
その時だった
りほの目から、涙が出てきた。
「なんなのかなぁ・・・これっ。私、なんで泣いてるんだろう・・・応援するって自分で言ってるのに・・・なんで涙なんかっ。私って、嫌な人だよね・・・ごめんっ」
「りほ・・・」
「じゃ、じゃあね。春輝」
「あ・・・」
そう言って、りほは逃げるようにしてこの場を立ち去った。
自分の初恋の人を悲しましてしまい、自分の親友を傷つけてしまうかもしれない・・・
春輝は、自分の無力さを、痛いほど感じていた。