第二十五話 何かがおかしいと思ったら、それは何かの前兆である。
というわけで半ば強引に食堂へ連行された俺。
まだ昼時前の食堂に、人はほとんど居ない。話し声も聞こえず粛然としていて、食事のときの賑やかさが嘘のようだ。
「おい、食堂なんかに何の用が……」
「まぁまぁ。付いてくれば分かるわよぉ〜」
先程から文句を言おうとした瞬間、麗太がマスク越しのにっこり笑いでやんわり止めてくる。
見事に丸め込まれてるような気が。オカマは口が達者なのはもはや常識なのだろうか。
「というわけだ。下級兵士はぐだぐだ言わずさっさと付いて来るのだ」
雷華も相変わらず偉そうに、靴を踏み鳴らしながらふんぞり返っている。
……あれ、下級兵士扱い?
確か、気が付いたら一等兵まで(勝手に)昇格してたはずだよなぁ、俺。
くだらないことに疑問を覚えながらも、調理場の方へ移動する俺と雷華とオカマの三人。
すると「ずずっ……」と、何かをすするような音が聴こえてきた。
その人物は湯のみを両手で、礼儀にそった持ち方で口に運んでいる。
「……なんでぃすか、ぞろぞろと。人がまったりと熱いお茶を飲みながら、ホッと一息ついてるところだというでぃすのに」
そこにはただ一人、筑祢ちゃんだけがぽつんと座っていた。
調理場の奥にある畳の間。この場所は、いつも食事時など忙しくしている給食当番さん用の休憩スペースである。
だいたい六畳ぐらいの広さだろうか。少し大きめのちゃぶ台の周りに座布団が何枚か敷かれており、さらに隅っこの方にはまだ何枚か座布団の余りが積み重なっている。一番奥の壁には「暴飲暴食」と書かれた掛け軸が。いや、この四字熟語はいろいろとダメだろ。
「ごめんね筑祢ちゃん、ちょっと台所をお借りしたいのよん」
「何をするつもりでぃすか、麗太さん。自分の持ち場を忘れたのでぃすか? あなたは掃除当番でぃしょうに」
軽い口調で話しかける麗太と、訝しい表情で麗太をじっと見つめる筑祢ちゃん。だかそんな視線に気付かないかのように、オカマ少年麗太は話を続ける。
「いやぁね、何をするって決まってるじゃない。お料理よ」
と、ここに来て初めて何をするのか分かった俺であった。
俺は、さっきから妙に静かな、隣にいる雷華に問いかける。事の発端はコイツだろうし。
「おい、雷華。何故料理を?」
俺より頭一つ分くらい身長の小さい少女の、その小さな肩をチョンとつつく。
するとワンテンポ遅れて、雷華の肩がピクンと動いた。そしてハッと気が付いたようにこちらを振り向く。考え事でもしていたのだろうか?
「……なんだ、お前か。どうかしたか」
「いやどうかしたかじゃなくてな、なんでいきなり料理なんて作るんだ? と俺は聞いているんだが」
俺がもう一度言い直すと、何故か雷華は不機嫌そうに、パチパチと電気を纏いながらこう返答した。
「別に、気が向いたから料理を作るだけではないか。何か異論でも?」
「異論はないが……」
「なら雷華様が料理したって良いではないか。風にぃ――ゴホン! 風太だって料理出来るし、アイツに出来ることがこの全知全能の雷華様に出来ないわけないだろ」
そのとき、雷華の言葉の何かがミョ〜に引っかかった。
が、しかし。それの正体を掴む前に話は進行してしまう。
「二人とも、使用許可が取れたわよ〜」
ほらぁ、と麗太が見せてきたのは、いらない書類やチラシの裏を使ったエコ百パーセントのメモ用紙。そこには拙い筆跡で「なにかしでかしたら、そっこくごはんぬき」と書かれている。
サッとちゃぶ台に目をやると、頬杖をついた筑祢ちゃんが、エコなメモ用紙の束に落書きをしていた。なんか得体の知れない怪物の絵だった。
「さ、じゃあ早速始めましょう。久々に腕がなるわ〜」
妙な態度の雷華。
無駄に意気込んでいる麗太。
何故かふてくされてる(ように見える)筑祢ちゃん。
理由も分からず手伝わされる俺。
皆少し様子が違うのも気になるが……料理って言っても何を作るの?
そもそも、何のために?
一ヶ月以上更新が途絶えてしまい申し訳ありません。
しばらくの間はスローペースの不定期更新になると思います。
文章量も減り、一話完了の形で終わらない中途半端なモノになります。
どうかご了承下さいませ。
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