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今日までの想い
最終話です。
宜しくお願いします。
その晩はご馳走だった。
俺は小さな手で、ハンバーグを捏ねたのを覚えている。
そう言えば父は、俺が物心ついた時から、食べ物を残すことについて煩い人だった。
さっきの怒声は、そんな父だからこそ出た俺へのメッセージだ。
そう今では思う。
そして――
夕飯を食べ終えると、直ぐ、いつものように父とお風呂へ入いる。
その時聞こえてくる。
「チャリンチャリン」
それが――
俺が聞いた、母の最後の“いってきますのベル”だった。
交通事故だった。
かごには、チョコモナカが一つだけ――
袋に入れて、かけられていたと言う。
―――
あれから13年たった現在。
今日の度に想う。
何故あの時ひねくれてしまったのだろう。
何故あの時チョコレートで我慢しなかったのだろう。
何故あの時ありがとうが言えなかったのだろう……。
後悔の念と、あの時、上目で見た母の優しい笑顔――。
そして、最後に聞いた、あのベルの音だけが、子守唄のように悲しく頭に残る。
優しかった母はもういない。
FIN.
最後まで読んで頂きありがとうございました。
宜しければ、評価等して頂ければ幸いです。