優しい質問
第五話です。
宜しくお願いします。
俺のその態度に、母は怒ることなく、
「シンちゃんごめんね…ごめんねシンちゃん…ごめんねごめんね……。」
と、悲しそうな顔で俺をなだめた。
すると父が泣いている俺の元へやってきて、こう言う。
「シンジ!わがまま言って食べ物を粗末にするな!」
と。
まあ当然だ。
その父の怒声に拗ねてしまった俺は、ひねくれた顔をし、黙ってその場に座り込んでしまった記憶がある。
そんな幼心の俺を気遣い、最初に話かけてくれたのは母だった。
「ねぇ、シンちゃん。今日はハンバーグするんだけど、食べる?」
最近は聞くこともなかった母の優しい質問。
しかし、一度拗ねてしまった俺は、その質問に、素直に答えられない。
すると母は、独り言のようにこう言う。
「シンちゃん、手伝ってくれるかな~?シンちゃんが手伝ってくれないとハンバーグできないなぁ。」
「手伝ってくれる?」
うつ向き、ひねくれた俺の顔に、おでこをくっつける。
その母の顔を、上目でチラッと見ると、そこにはいつもの笑顔があった。
俺は少し考えた素振りをし、首をコクッと縦に降る。
「よ~しじゃあ作ろう~!」
そう言うと、母は俺の頭の後ろを優しく撫でた。