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幼き日の記憶
第二話です。
宜しくお願いします。
話は14年前に遡る――。
当時、俺はまだ大人の事情ってやつを当然分からなかったが、父から後で聞いた話だ。
父が勤めていた会社が、業績不振で倒産寸前。
リストラ対象として父が選ばれ、リストラさせた。
まぁよくある話だ。
それからは母も俺を育てながら工場で働いていたらしい。
俺は幼稚園に預けられ、迎えにくるのはいつも父だった。
母が帰ってくるのは夜の9時とか10時とか――。
遅い時には0時を回っていたこともあったという。
夜飯はいつも弁当かラーメンか……そんなものだった。
3歳にしては栄養のない食事をしていたと、父が言っている。
その事に関しては、別に俺も恨んじゃいない。
寧ろ――。
母に会えないことの方が辛かったと、当時そう記憶している。
そして、朝はまた早い。
8時には家を出ていく。
「チャリンチャリン」
と、いつも“行ってきますのベル”を鳴らして。