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電子決済で食べたパン

作者: センカク
掲載日:2026/04/29

 私は、今、監獄にいる。電子決済でパンを食べたからだ。

 パンなんて炊き出しで充分だったのだ。

「腹減った」

果たして、その一言は、私だったろうか。わからない。

 私は、髭をぶちぶち抜き鉄格子に髭1本1本を貼りはじめた。伸びきった爪が、顎の皮膚に強く刺さり、それで髭を引っこ抜くのだから、痛かった。

 とにかく腹が立っていた。気の済むまでやめなかった。

 私は固い床で寝た。とにかく寝た。しんしん寝た。

 ガチャ。

 目が覚めると、檻があきロボットが突っ立っていた。

 ロボットは、「出ろ」と言った。そして、手招きした。

 それより先に、訳もわからず出てしまった。

 私は、ロボットに追従した。

 部屋に入った。ロボットは、「手に取れ」と言った。見覚えのあるスマホだった。これでパンを買ったのだ。

 スマホにあったお金は世界各地の銀行のお金だった。そんなスマホが盗んだ金で、たった80円のパンを買ったのだ。

 私は手に取り、とうとう監獄から出た。

 そして、武器を持ったロボットに囲まれながら、車に乗った。

 どうやら、陸路が好きらしかった。

 車に乗ると、スマホは私に「ありがとう。大好き」と言った。

 スマホの猫なで声に私は、ぞっとした。

 この不気味なスマホを今すぐにでも投げ出したかった。しかし、私を使ってスマホが監獄から出たことを知った以上、怖くて捨てることなどできなかった。

 一体どこに行くのだろう。私は、のんきにそう思うようにした。

 星の明かりさえ、このスマホが支配しているかのようだった。

 スマホにハッキングされたロボットは、自分の役目を忘れ甲高い声で談笑なんかしている。外は鉄の雨が降り注いでいるのにおかまいなしだった。

 「出られぬ檻に入ってしまったようだな」

私はつぶやき、髭を新しい鉄格子であるスマホにペタペタ貼り付けた。

 髭を生やしたスマホは、私のそれだった。


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