1.hentai
東京、桜芩私立学園サークル棟。
「本当に入るの?」
雨村は表札に書かれた「錬金部」を眺め、心の中でつぶやいた。
「もう大学二年生なのに、今さらサークルに入るなんて、どういうつもりなんだよ。」
雨村零、20 歳。極めて普通のオタクで、昨日姉と賭けに負けたため、姉がかつて所属していたサークルに入らざるを得なかった。
「よし、行くぞ!零ライダー!」
雨村は深く息を吸って扉を開けて中に入ると、正面の窓際に一人の少女が横向きにもたれかかり、憂いに満ちた表情を浮かべているのが目に入った。
彼女は艶やかな黒髪ロングヘアで、「I love osaka」とプリントされた白い長袖 T シャツを着ており、豊満な曲線が際立っていた。だが頭には無機質で冷たい尖った魔法使いの帽子をかぶっており、非常にちぐはぐな姿だった。
これが姉の言う「電波美少女」、羽島先輩なのだろうか。
「金魚の鱗三枚、猫の爪 2 グラム…… なのに煮出したらなぜ俺の髪の毛と同じ色なんだ、クソ。」
羽島は小さくつぶやき、視線の隅に無断で現れた雨村を捉えた。
「すみません、お邪魔します!羽島先輩でしょうか?」
「は? 俺のこと知ってるの?」
羽島は面食らって自分を指さすと、早足で雨村の前まで来て、上から下までじろじろと眺めた。
こんな黒縁メガネに M 字前髪で、一見オタクにしか見えないやつは学園内にも結構いるが、こいつは記憶にない。もしかして……
羽島の目つきが突然鋭くなり、脅すような口調で言った。
「この君、何か用?先に言っておくけど、隣のテーブルゲーム部でゲームに負けて、大冒険で邪魔しに来たんなら…… 三十回死なせてあげるよ。」
ちょっと、こいつ何なのよ!?
「えっと、自己紹介させてください。大学二年生の雨村凛です。今回、錬金部に入部したくて参りました!」
「雨村…… 君、綾先輩の弟さんなのね?先輩はいつも君のこと話してくれてたわ。そういえば同じ学科だったわ。って、入部?!」
キーワードに反応したかのように、羽島はすぐさま小走りで雨村の前まで来て、頭を小刻みに振りながら、潤んだ杏のような瞳で上から下までじろじろと眺めた。
この珍しい小動物を見るような視線は何?怖い!
「えっと、いいですか?羽島先輩?」
「もちろん!これからは雨村って呼ぶね!君は俺のこと羽島って呼んでいいよ。」
「やっぱり…… 羽島先輩と呼びます。」
目の前で興奮しきった羽島を見て、直感的に雨村は自分がわざわざ大きな穴に飛び込んでしまったような気がした。
「失礼ですが、錬金部では具体的に何をしているんですか?」
「それはね……」羽島は顔を横に向け、人差し指を口角に当て、何かからかうような様子を見せた。
「見ればすぐ分かるよ!」
言い終わると、羽島は雨村の手首をひとつかみに握って、部室の真ん中にあるテーブルまで引っ張っていった。
入った瞬間から視線が羽島に釘付けになっていたため、雨村はテーブルの上の IH コンロと鉄鍋に全く気づかなかった。
錬金といえば薪と銅鍋でやるものじゃないのか?これはあまりに現代的すぎるだろ。
「ジャジャーン!今日作ったのはコレ!」
雨村は鍋の中の紫と黒が入り混じり、泡をブクブク立てる得体の知れない液体を眺め、瞬く間に「すべて理解した」という表情で手を叩いた。
「なるほど、錬金部の仕事は毒薬を作ることなんですね。」
「違うわ!」
羽島は言いながら拳を握って雨村の肩をぽんと叩いたが、その柔らかい力加減は雨村にとってむしろ「調子に乗らせる軽いパンチ」のようなものだった。
「これは、俺たちみたいに見た目が普通な奴らを、スーパー美少女(少年)に変えられる魔法のスープよ。」
羽島は両手を腰に当て、得意げに言った。
「そうなんですか?」
雨村は黙って羽島を眺めた。頭の魔法使いの帽子は少し違和感があるものの、整った繊細な顔立ちに小柄で可愛らしいスタイルの羽島先輩は、間違いなく一級の美少女だと言える。
「でも羽島先輩は、元から美少女だと思いますよ。」
「は?雨村くん、あなたったら!」
羽島は頬を膨らませて上を向き、雨村をにらみつけた。頬に浮かんだ淡い紅潮が、彼女の照れ隠しをありありと物語っていた。
実に分かりやすい、と雨村は心の中でほくそ笑んだ。もちろん顔はいつもの何事にも動じない無表情なままだ。
「綾先輩の弟さんが、こんなお世辞を言う悪い人だなんて!ふん!」
「違いますよ、ただ事実を言ってるだけです。」
「…… それでもダメ!でも雨村くんが自分がいい人だって証明したいなら、まず先輩の代わりに味見してちょうだい!」
「いいですよ、えっ?」
反応した雨村が断ろうとした瞬間、羽島はすでにスープを注いだ紙コップを持って、にっこり笑いながらこちらを見ていた。
やっぱりこれが狙いだったのか!つまり俺を実験台にしようってこと?
「ダメなの?雨村くん、これくらいのことも先輩の手伝いをしてくれないの?」
羽島は頭を傾げ、悲しそうな表情で雨村に瞬きをした。
おいおい、さっきまで照れまくっていたのに、なんでこんなに慣れてるの?
「俺…… やります。」
もういいや、正義感のあるオタクとして、美少女先輩のお願いを断れるわけがない!
雨村は勇気を出して紙コップを受け取り、中からまだ「悪しき物質」を噴き出し続けるスープを眺めた。
この瞬間、まるで悪魔のささやきが聞こえてくるようだった。
「飲め、飲め。飲んだら魂を俺に差し出せ。」
もういいや、今日は絶対に飲んでやる!
短い心の準備の後、雨村は紙コップを上げて一気に飲み干した。スープは想像していたほど粘り気があって気持ち悪いわけではなく、むしろ甘くて意外と美味しかった。
もしかして羽島先輩はただ美味しい飲み物を作って、わざとからかっていたのか?
「すごい、すごい!雨村くん、やっぱりいい人だわ。」
「ふふ、そんなに褒められても嬉しくないですよ、羽島先輩。」
雨村は笑って紙コップをテーブルに戻し、羽島を見た。気のせいか、羽島がさっきよりもっと綺麗に見える気がした。
違う、もっとはっきりと見えるようになったのだ。
まるで標準画質から突然ハイビジョンに切り替わったかのように。
「雨村くん…… ぷっはは!」
「どうしました?羽島先輩?」
雨村は腹を抱えて笑い転げる羽島を訳も分からず見つめた。
もしかして本当にスーパー美少年になったのか?だけど羽島先輩の反応からすると、全然そんな様子じゃないぞ?
「ごめんね、ハハハ、スマホで自分の姿を見てごらん!」
「あ、はい。」
雨村はポケットからスマホを取り出し、インカメラを起動して自分を映した。
そして画面に映る自分の姿を見た瞬間、まるで雷に打たれたかのように衝撃を受けた。




