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辺境伯爵

「ソフィアさん、ちょっといいかい?」


「はーい、今参ります」


 朝からの仕事を終え、そろそろ午前のお茶の準備をと思っていたところで、マイア様から声がかけられた。

 ソレイ茶を濃いめに入れ氷の入ったグラスに注ぎアイスティーを準備し、前日焼いたマドレーヌとソレイオレンジをお皿乗せ、全てを盆に乗せた私は階段を上がりマイア様の下へと向かう。


「マイア様、お待たせいたしました」

「ソフィアさん、急がせてごめんね。ああ、もう午前のお茶の時間か、いい香りがするね」


 マイア様の私室にあるティーテーブルにお茶をセットし、使い魔たちにもそれぞれの好みの飲み物とオヤツを出してから、私もマイア様の向かいの席へと座る。


「うん、ソフィアさんが入れたお茶が一番美味しいな」

「ありがとうございます。フフフ、マイア様に褒められたってコリンさんに自慢出来ますね」

「フフ、コリンのお茶も美味しいけどね。ソフィアさんのお茶の方が優しい味がするよ。まあコリンの場合コーヒーばかり淹れるからかもしれないけどね」

「コリンさんはコーヒー好きですからねー」


 コリンさんはおぼっちゃまなだけあって、高級なソレイ茶も、高価なコーヒーも、遠慮なく茶葉や豆を使い飲みたい気分に合わせ自分好みのお茶を入れる。

 使った茶葉は私は掃除や消臭剤として活用するが、コリンさんは当然ゴミ箱にポイなので、最初お茶を淹れるところを見た時は「ヒッ」と思わず変な声が漏れてしまったものだ。


 あれを見てからはコリンさんがいても私がお茶を淹れるようにしている。

 自分の平安を守る為だったけれど、そのせいかマイア様はすっかり私の味になれてしまったのだと思う。

 コリンさんごめんね。マイア様の舌は私好みになってしまいました。

 心の中でひっそりと謝っておいた。


「えーと、実は先ぶれが届きました」


 ヒラヒラと手紙を振って見せる苦笑いのマイア様を見て、ついに来たか! と私は頷く。


「マイア様、辺境伯様ですか? それとも第二王子様ですか?」


 私が生活に慣れるまであの二人は呼ばないからとマイア様は仰ってくれていたのだが、ここで暮らして早1か月、遂に相手側が猛攻撃を仕掛けて来たのだろうと私は察した。


「うん、ブレイデン、ソレイの辺境伯だ。コリンの兄だからそんなに身構えなくて大丈夫だよ。コリンやハンと同じ扱いでいいからね」

「辺境伯様ですね、承知いたしました。しっかりとおもてなしさせて頂きます」


 コリンさんもマイア様も辺境伯爵をコリンさんと同じ扱いでいいと言うがそうはいかない。

 相手はこのソレイの辺境伯。

 マイア様との生活を守るためにもしっかりしなきゃと気合いが入る。


「それとブライアン、図書館の館長をしているブレイデンとコリンの叔父も一緒に来るらしい」

「えっ、あの館長さんもですか?」

「うん……ソフィアさんなんだか嬉しそうだね」


 また苦笑いになったマイア様にうんと頷く。

 図書館の館長さんは本好きな私を見て図書館を案内して下さった素敵な紳士だ。

 あの日からお会いしていなかったのでお話し出来ることがとても嬉しい。

 本の事だけでなく、図書館についてももっとお話ししたかった。


「お二人とも泊まられますか?」

「うん、たぶんだけど泊まると思う。あ、あとブレイデンの方は従者が一人付いてくると思うけれどそっちも宜しくね」

「従者……分かりました。従者用のお部屋も準備しておきますね」

「ありがとう、でもあまり堅苦しく考えなくて良いよ。従者はレン、ハンの兄だからね」

「ハンさんのお兄様ですか、承知致しました。仲良く出来るように頑張ります」

「フフフ、ありがとうソフィアさん」


 コリンさんのお兄様は辺境伯なのだ、当然従者もいる。

 だけどそれがハンさんの兄だと聞いて、三馬鹿幼馴染の関係性に納得する。

 それにやっぱりあの三人はマイア様の側近のような存在なのだろうと理解した。


「そう言えばロイ……さんにもご兄弟がいらっしゃるのですよね?」


 妹がいると言っていたロイ。

 彼女は一緒に来ないのかな? と素朴な疑問が湧くと、ああとマイア様が頷いた。


「ロイの妹はブレイデンの妻の護衛騎士なんだ」

「辺境伯夫人の護衛騎士……」

「ソフィアさんと年も近いし今度紹介するよ。きっと友人になれるだろうしね」

「はい、ありがとうございます。楽しみです」


 女性騎士に会えると聞いて私の楽しみがまた増えた。

 ロイの妹さんだからきっと背も高く騎士らしい女性でカッコいいのだろう。

 本の世界にまた入り込むようで、ロイの妹に会うだけなのにワクワクした。


「あ、そうだ、マイア様、皆さまはいついらっしゃるのですか? 辺境伯様はお忙しいですし、一週間後とか? いえ、二週間後とかでしょうか?」


 私の当然の疑問にマイア様がピタリと止まる。

 マドレーヌを食べていたので答えられなかったのか、頑張ってモグモグと咀嚼していてリスのようでちょっと可愛い。使い魔たちとはまた違った魅力がある。

 マイア様は口の中のマドレーヌを食べ終わると、辺境伯からの手紙を広げ私に見せてくれた。


『マイア様、明日時間が出来たので遊びに行きます! 今度こそ断っても絶対に行きますからね! 叔父もついでに連れて行きまーす。ブレイデン』


 コリンさんのお兄様。

 

 手紙を見て血の繋がりを理解した。


 中身がそっくりだ。


 それも残念な方に……


「ソフィアさん、えっと、本当にごめんね」


 笑顔なはずの私を見てマイア様が何故か謝る。

 マイア様は全然悪くないので「大丈夫ですよ」と答えたが、ソレイの領主一家には教育的指導が必要だと感じた私だった。


おはようございます。今日もご訪問ありがとうございます。

ブクマ、評価、ありがとうございます。

ヤル気頂いております。

今日はちょっと短めですみません。

夢子


別連載作品

その言葉後悔いたしませんか?

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