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詐欺られアリスと不思議のビニールハウス  作者: 鈴埜


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32/97

32.単なる石ころから作れるの

 収穫祭最終日。

 今日でこの騒ぎも終了だ。

 昼間トシと散々話して、やはり早めにキャルにも話を持っていくべきだと思った。

 なので、彼らの家の前にいる。

 ノックをしようと手を挙げたところで扉が開く。

「どうした?」

 ロイだった。

「びっくりした。よくわかったね」

「アリスの気配は把握してる」

 索敵の魔法は使われていなかったと思うが……。

「あのね、キャルさん、いる?」

「キャル? 珍しいな」

 入り口で話していると後ろから声がかかった。

「アリスちゃんなら入っていいよ」

 メルクだ。

 ロイは頷いて、アリスを中に招き入れた。

 家は二階建てで、個室は二階。一階に小さなキッチンとリビング、トイレに水浴びができるスペースがあるそうだ。

「部屋見てみる? ベッドとタンスだけしか入らないくらい狭いけど」

「五部屋あるんでしょ?そりゃ狭いよね」

「正確には六部屋。一つは収納になるんだろうな、冬に向けての」

 テーブルと椅子は割と大きめだった。

「で、キャル? たぶんそろそろ起きてくる。昨日もずいぶん飲んでいたようだからな」

 言ってるそばから階段を降りてくる音がした。

「おはよー、あれ、アリスじゃん、どうしたの?」

「お前に用があるってよ」

 メルクの言葉に首を傾げる。

 とにかく水分だと水を飲んで、みんなでテーブルに座った。

「何?」

 促されるが、何から話すべきか。

 とりあえず、腕輪からだろう。

「あのね、その腕輪」

「お! 入る? 入るなら私が紹介してもらったのは王都の友だちだから……」

「違うの、あのね、この間入会金、金貨三枚って言ってたよね。腕輪はタダでもらうの?」

「ううん、腕輪は金貨二枚。まあ綺麗だし、この分もすぐ補填できるし」

「じゃあ、紹介されるとき入会金の金貨三枚と、自分用の腕輪の金貨二枚と、次へ渡すための腕輪の分金貨四枚?」

「そうそう。紹介するのに腕輪は必須だからね。お互いが会員だと知るのにも。その次配る分とか、さらに三人目を紹介するときとかはまた紹介した人から買う。次に紹介する人が決まった時点で、追加の腕環は買うね。だけど、私みたいに街を越える人もいるでしょ? 地域の代表みたいな人がいるのよ。その人を通してもいいの。お金のやりとりも、その人を通してしたりもするんだ。冒険者も多いから」

 割としっかり金や腕輪が移動する仕組みは出来上がっているようだ。


 アリスがその先を続けないので、キャルが少し苛つきだす。

 どう言ったらショックを受けないか考えるが、アリスにはその方法が思いつかなかった。

「あのね、この数字を見てくれる?」

 トシに言われて書き写したものだ。


「ミールスの街って、人口どのくらいなの?」

「人口?」

「十万を越えたと聞いたことがある」

 ロイは知らず、メルクが教えてくれる。

 十万。そんなに少ないのか。

「キャルの所属している組織ってこんな感じだと思うの」

 一番トップが一人、あとはドンドン枝分かれしていく図。

「二倍に増えていくんだ」

 そしてさらに別の数字。

「一人目を第一階層、二人目を第二階層ってするの」

 トシに説明されたことを上手く伝えられればいいのだが。

「階層が増えるごとに、上の人は金貨三枚を得るけど、人数は倍になるの」

 キャルの目が数字を追う。


「この一番下の数字。新規の会員数でしょ? それと同じだけの人数がすでに会員になってる。十五階層目、16,384人だけど、実際は32,767人。さっき十万人って言ってたでしょ? 十七階層目で会員数はすでに131,071人なんだ。もちろん、これは順調に会員を増やしたらってことだけど。キャルはさ何階層の会員なんだろうね」


 アリスがそこで言葉を止める。

 キャルが数字をじっと見続けていたからだ。

 何を思っているのかが読めない。


「王都は百万都市と言われてる。となると、王都の中だけでこの仕組みが作られても一番下の会員が524,288人になる二十階層のときに王都中の人間が会員になるってことか」

 アリスは首を振る。

「自分の家族まで会員にする? 困ったときの助け合いは、『うちの息子が困ったことになっていまして』でも通じるでしょう? まさか、会員本人のみしか助けない、なんてことはないだろうから。息子の悩みがその人の困りごとなんだもん。だから新規会員が得られないのは、もっと早い段階だよ。金貨三枚に加えて腕輪分の金貨を持っている人もそんなにたくさんいない。ちょっとの余裕がないと入れない会でしょう?」

「確かにな。入会金以外の、腕輪の代金が、すぐ回収する分だとしても必要になる」

「紹介のスピードとかはその人によって違うだろうから、こんな綺麗な増え方はしないとしても、金銭面的な得をするのは上の方の人。一番下の人はそのうち紹介ができなくなって、入会金を払い、さらに自分の分はいいとして、紹介しなければいけない二人分の腕輪の代金を回収できないことになる」


 アリスとメルクがそう話している間も、キャルは何かを考えているようだった。やがて、顔を上げる。

「それで? あんたは何が言いたいの?」

「うん……」

 互いを助ける組織として、最下層を考えずにいれば平和なものなのかもしれない。会員に迷惑をかけないようにと、日々の暮らしにも気をつける。

 だが最下層は。手元に残る腕輪の不安。これを誰かに押しつけなければ回収できない金貨七枚。自分の腕輪分もと思えば金貨九枚だ。

 金貨九枚は大金だ。何ヶ月も過ごせるのだから。

「キャルはもう出した分は回収したって言ってたから……大丈夫だと思ってるかもしれない。でもこの、次が見つけられない人がたくさん現れたときに、何が起こるか私もわからない。私は、この街から出たことはない。私の周りのルールしかしらないから。ただ、手っ取り早いのはすぐ上の人に不満をぶつけることだと思うの」

「上のやつに詰め寄る。あと、地域ごとに代表者がいるんだっけ? そいつに詰め寄る。それか、泣き寝入りだ。金貨七枚の負債を抱えて」

「一番儲かってる人は腕輪の人物だな。腕輪の代金は半額を紹介者に渡すんじゃないんだろう? それは売れた分だけ直接儲かる品物だ」

 ロイの言葉に、キャルは少しだけ嬉しそうな顔をする。

「そうよ、この腕輪にだってかなりの価値があるでしょう? この赤い石も綺麗だし――」

 そう、赤い石なのだ。アリスがまず不審に思ったこの赤い石。

「あのさ、キャル。収穫祭とかのお祭りで、露店に並ぶすごく安い綺麗な石のリングって知ってる?」

「もちろん。私もいくつか持ってるよ。友だちは彼に買ってもらったって喜んでた」

 やはり、普通は知らないのか。

「あれね、――単なる石ころから作れるの」

ブックマーク、評価、いいねありがとうございます。

誤字脱字報告も助かります。


実際今の世の中でネズミ講ってどんな風に展開してるんですかね〜


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