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詐欺られアリスと不思議のビニールハウス  作者: 鈴埜


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27.きちんとせめて元は取れよ。技術料は別として

 ロイは冒険ギルドには行かず、真っ直ぐアリスの店に来たそうで、しばらくしてメルクたちがやってきた。

 冒険ギルドに行きたがらないのは、行く度に、次のランクへの試験を受けようと言われるからだそう。つまり、今シルバーの下になったところなのだが、依頼受注数は十分なので、とっとと中になろうと誘われる。それも冒険ギルド長に。


「光栄なことだが、ロイは嫌がる」

「面倒な依頼を受けたくない」

「基本パーティーなんだから、そこまで面倒なことにはならないでしょ」

 マリアの言葉に、ロイはもう応えることをせず頭を振るだけだ。

「アリスさん、麺がいいです」

 フォンはさらにウサギを獲物袋から取り出す。

「こいつも使ってください」

 これはつまりだ――。

「うちで夕飯を食べるつもりですね……」

「そういうこと。必要な物があるなら買ってくる。この後みんな一度家に帰って着替えてだから、三時頃には来られるよ」

「まあ、いいですけど。椅子と、食器類と、食べたいものは持参してください」

「あれが欲しい! あれ、揚げ焼き? お酒にすごく合うやつ!」

「なら、鳥も買ってきてください」

 ウサギでもいけそうだが、失敗しない方が大切かなと。


 一度解散だと、回復薬を補充してみんな出て行く。

 さてどうしよう。

 フォンがチナ鳥のクリームシチューが本当に美味しかったらしく、何度も褒めてくれた。あの後スミレに、魔法の調味料ルーを使わずに作る方法を聞いてみてはいる。が、コクを出すのに鶏ガラスープを事前に作ったりしないといけないので、今日は無理だ。まず鳥の骨がない。今日鳥を食べるとしても、鶏ガラスープは煮込まなければできない。

 シチューはまた今度にさせてもらおう。どうせ冬はずっとこちらにいるのだから。

 そこまで考えて、彼らの冬の食事の心配を結局していることにため息をついた。

 パスタをクリームシチューの技術を使ったクリームパスタにすることにした。ウサギはシンプルに丸焼きにしよう。もう内臓も処理されている。塩コショウであとはせっせと油を掛ける作業だ。こちらは早く来た人にやってもらえばいい。コショウが赤しかないがいいだろう。白が通常品、青が高級品だ。


 収穫祭の時期になれば市場が賑わう。露店が普段以上に人でごった返すのだ。そういえば去年はロイが買い出しを手伝ってくれた。今年も手伝ってもらうのなら、その見返りとして保存食作りを手伝わなければならないだろうか?

 一人二人分なら別に構わないのだが、よく食べる五人分はぞっとする。もうひと稼ぎして、商会に外注がベストだと思う。

 ただそうなると、ロイの手は借りられない。祖父もいないのだし、アリスは早めに準備をしようと決心した。

 素材倉庫にあるカボチャを丸ごと持ってきて、切り分け、蒸かす。できあがったら荒く潰して、ドライフルーツと、柔らかいチーズと混ぜる。軽く塩コショウ。


 食材と食べたいものを大量に抱えて帰ってきた彼らも働かせた。

 客の相手は勝手を知ってるロイに任せていたら、客がやたらときて普段より売り上げがよくなった。必要な物を買って行くのならばよいのだが。


 


 結局日が暮れても飲んで食べてで、アク抜きの魔道具を使って芋を漬けるのが遅くなった。

 翌朝はかなりゆっくり起きて、開店の時間ギリギリになる。

 とはいえ、今日は芋を蒸かす日だ。店は片手間。

 二つの種類を一時間くらい蒸かしたところで、取り出し、鍋の中ですりつぶした。湯を加えて、少し温度が下がったところで、頑張って作った麦芽の粉を加える。ここから温度を一定に保つ魔道具を出してその上に鍋を置く。蓋もしておいた。夕方前までこのままだ。少量ずつしか作ってないが、さてどうなるだろう。




 だんだんと甘い香りが強くなってくる。楽しみになってきた。なんといっても、高い砂糖を使わないで済むのがありがたい。

 あちらでは砂糖は安い物なら一キロ二ヒャクエンしないのだとトシが言っていた。ヒャクエンがどんな単位なのかはわからないが、口ぶりではとても安いのだ。料理をするときも、真っ白な砂糖を惜しげもなく使っていた。

 物の価値がかなり違っている。


 今日は芋の具合が気になるので、昼も眺めていた。温度は間違っていないと思う。沸騰したお湯と、冷たい水を同じ量混ぜ合わせたときを半分とすると、とかなり細かく指示を受けた。

 それに、少し混ぜてわかったが、とろとろになって、芋の繊維だけになりつつある。

 大体言われていた様子になったので、次はザルでこし、綺麗な布でこす。

 そして煮詰めて完成だ。後は芋の粉を敷いた上に、煮詰めて固まりつつある飴を転がし棒状にして切る。これは、のど飴と同じ。

 薄茶のそれは、甘い香りを強く放っていた。


 一つ口に放り込む。

「しっかり甘い!」

 手間はすごく掛かるが、材料費はそれほど掛からない。なかなか良い物ができた。後は収穫祭までに量産する。

 麦芽を作り、芋を蒸す。

 スミレもトシも、どちらの芋飴も美味しいと言っていた。

「とんでもなく変わるわけじゃないし、サツマイモは山ほどあるから使ってね」

「これは原価いくらくらいになるんだ?」

 常に原価が気になるようだ。そして、価格も。

「十個で銅貨一枚かなぁ」

「銅貨っていうと……五百円か」

「お祭り用の無償奉仕なのか?」

「無償じゃないよ? ここでがっつり稼ぐお店も多い」

「なら、きちんとせめて元は取れよ。技術料は別として」

「はあい」

 だが、これ以上は高くすると子どもたちが買えない。

「のど飴は粒が小さくて同じ値段だったから……」

「だったら芋飴もこんなに大きく切らないでもっと小さく切ろう。そうだな、今の半分大きさにして、同じ値段にすりゃいいだろ」

「ロロ芋もそんなに高いものじゃないんだよね。このくらいの箱で銀貨一枚。そこから今回の十倍はできるし……」

「あんまり甘味がある世界じゃないんだろ? 高く売っとけ。そのうち作り方聞いてくるやつがいるぞ」

 それは確かに。そうなったらどうするか。

「売り上げの何割かもらうようにしたら、定期収入になるな」

「まあ、そんなことになったらまた相談させてください」

「おう。作り方がややこしいからそうそう真似出来んがな」

 とりあえずこれで収穫祭の準備はできそうだ。

ブックマーク、評価、いいねをしていただけると嬉しいです。


芋飴作り方調べてげっそりした!!

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