エピローグ
さて、ここまで長々と読んてくれてありがとう。
簡単に結論をいうと、この物語は俺が過去に女の子に騙されてフラれた黒歴史の話だ。
それとこの話を通じて本当に言いたいことは
【夢を追いかけるなら、ちゃんと自分でセーフティネットを張って、後から社会復帰できる手段を用意しとけ】
――たったこれだけだ。
それとなんでこのメッセージを伝えたいかというと、バラちゃんの末路が悲惨だったからだ。
彼女は過去に声優になる夢を追いかけた末に辛い現実にぶち当たり諦めた後、自暴自棄になって快楽を求めた故に、結局最後は社会復帰することができなかった。
(※勘違いしないでほしいが、決して声優になる夢が悪いわけじゃない。あくまでが偶然それが彼女のキッカケだっただけだ)
何があったかというと――具体的な内容は省くが、彼女が居なくなって数ヶ月後、一度だけ彼女から助け求める電話がかかって来たのだ。
その時は嬉しい反面、怒りが勝ってしまい、強く彼女に何があったのか問いただしてみた。
そしたら、なんと彼女は酷い生活状態で、昔の僕――今の俺だったとしても救える状態じゃなかった。
そして最期は音信不通になって、生きてるのか死んでるのかさえも分からなくなった。
あと他に彼女の事を語るとすれば、彼女の本質は『悪』だった。
なぜなら、彼女が居なくなった後働いて居た店に行って、彼女はどうして急に居なくなってしまったのか他の子に聞いた。
すると理由は不明だが、彼女は急にお金ができたとかで、店をトンズラしたらしく、さらに俺が知らなかった裏の顔のエピソードが数多くあった。
そしてそのエピソードの中で、特に俺がビックリしたのが、当時彼女のトレードマークであるメイド服――実はそれは彼女が別の店で働いて居た時に借りパクした衣装だったのだ。そして盗んだ理由は彼女曰く
「可愛かったから」
――だとさ、
「な? 俺の予想した通り悪女やったろ?」
そう言って津山が俺に茶化すように笑う姿が容易に想像できる。そして今だから言える――津山よ、いつでもお前は正しかったし、人を見る目が確かにあった。若い頃お前に反発して済まない。
さて元カノの悪口はこの辺にしとこう。
こうして苦い思い出を経験した俺はその後、世の中の理不尽さや、大人の世界の汚い部分などを学習して、今では純粋さの欠片も無い。
あとは趣味でこうして小説を描きながら創作活動を楽しんでいる事と、相変わらず可愛いメイドの女の子が好きで、たまにそういった子に出会える店に通っていたりする。
そして――現在。
「ハヤシさん、今までありがとうございました。私、夢を追いかける為に今日でこの店をやめます」
「こっちこそ毎回来る度にアゲハちゃんと会話ができて面白かった。今で楽しませてくれてありがとな!」
今日はメイドの店員――アゲハちゃんが、声優の夢を叶えるのに集中する為に、店を辞める日だ。
「ごめ〜んアゲハちゃ〜ん! 向こうのお客さんがアゲハちゃんと最後にお話したいって〜」
「わかりました! ……というわけですみませんがハヤシさん、私他のお客さんに挨拶に行ってきます」
「おうまたな! 俺ずっとアゲハちゃんの事を応援してるからな、絶対に君なら夢を叶えられるから!」
「はいありがとうございます!」
この会話を最後に、アゲハちゃんは他のお客さん席にずっと向かった。
「……」
「絶対に夢を叶えられるから――(キリっ! とか言っちゃってさぁ、ほんとはあの子が私と同じ末路を迎えないか心配なんでしょ?」
「……」
「ほら見てよ向こうの席の様子――あの子ったら、ハヤシ以外の多くのお客さんにチヤホヤされちゃって、多分アレがあの子が人生で一番輝く最初で最後の瞬間だよ」
「……あのさ、感傷に浸ってるときに冷める事を言わないでくれよな――バラちゃん」
「嫌でーす! こうして私が心の中に現れてあげないと、ハヤシは現実を見れないし、女の子に騙されちゃうでしょ?」
「お前が言うんじゃねえよ、さっさと心の中かは消えてくれ」
「はいはい、消えたらいいんでしょ。けど最後に一ついい? なんで私の名前をバラちゃんって呼ぶの? 普通にダサいから本名のアイって呼んでほしいんだけど」
「えーとそれはだな――」
最後にバラちゃんの思い出を一つ語ってこの物語を締めよう。
10年前――ホテルにて
「アイちゃんはなんで身体に薔薇のタトューを入れたの?」
「えーとそれはねぇ――私はもう人生失敗したし、安定した道を外れて茨の道を歩む覚悟――っていうか、受け入れてるっていうのかな……あとは――私の名前が愛だから」
終わり。