1話 同じ夢を持つ女の子
今から語るこの話は、俺(作者――れこん)が実際に体験した事だ。
それをフィクションを交えつつ、できるだけリアルに伝えたいと思う
あと、結論を言うとこの話の結末はバッドエンド、誰も救われないし胸糞悪いオチだ。
それでもいいならどうか読んでほしい。
そして彼女――バラちゃんという存在が居た事を誰かに知ってほしい。
……。
「へぇ、ハヤシさんってクリエイター目指してるんですね、すごいなー」
「実はそうなんだよ。けどあんまり実力が無いから夢で終わりそうなんだけどね」
「えぇ~、でもこの前描いたイラスト見せてもらいましたけど、すごく良かったですよ? 自信持って下さい」
「マジで? 褒めてくれてありがと、自信がつくぜ」
ここは若い女の子と会話ができるバーだ。
ここに来てけっこう経つが、妙に気が合うキャスト――アゲハちゃんと知り合い、毎回俺は毎回会いに来ていた。
「よっしゃ、褒められて気分が良くなったからドリンク頼むわ、それからアゲハちゃんもドリンク頼みな」
「本当ですかぁ? いつもありがとうございます」
「いいってことよ」
自分で自分がチョロい客だと自覚している。
だけど目の前にいるアゲハちゃんは可愛い上に頑張り屋でしっかりしてるからこうして応援したくなってしまう。
「「カンパーイ」」
「そういえば、ハヤシさんなら理解してくれると思うんですけど、聞いてもらっていいですか?」
「ん? いいよ、なになに♪」
「実は私、声優になることを目指してて、今は専門学校に通ってるんですよ」
「へぇいいじゃん! すごいな! それじゃあ毎日レッスンとかしてんの?」
「はいそうなんです――それから……」
……。
「今日も楽しかったよアゲハちゃん」
「私もです、ハヤシさんに私の目標の話ができて良かったです。あとこの会話したの実はハヤシさんだけなんですよ? はっきり言って私ハヤシさんの事けっこう信頼してるんです」
「マジで!? けどそれって営業で言ってるでしょ?」
「もう! そんな事ありませんよ、本当に信用してるんです!」
「そう、ありがとね。だったら俺は君が声優になる夢を本気で応援するよ、必ず夢は叶う!」
「本当ですか! ありがとうございます。だったらまた来て会話して下さいね」
……。
店をあとにして帰るときに思い出してニヤニヤする。アゲハちゃんが俺の事信用してくれて素直に嬉しい。もしかしたら彼女は俺に惚れてるのかも!
……
なーんてな。
俺もいい年だ。アゲハちゃんが俺の気分をを良くする為にリップサービスしてくれてる事は百も承知してる。
それに、俺もなんだかんだ言って彼女の夢『声優になること』を本気で応援なんてしてない。
だけど一応言っておくが、その事をアゲハちゃんに直接伝えて夢を否定する気はさらさら無い。メリットもないし、デメリットの方が大きいからだ。
あとこういう店では騙されてるとわかっててもあえて乗っるほうが女の子も調子に乗って良く会話してくれるので楽しい。要するにお互いに騙し騙されるのだ
「けどなぁ、アゲハちゃんが『声優』になるのって無理だと思うんだよなぁ。しかもよりによってあの子と同じ夢を追いかけてるんだもんなぁ……思い出すなぁ」
今から10年前。
俺はある女の子と出会った事を思い出した。