4-君はいらない
まさかまさかのブックマークと評価がついたので平日ですが投稿しました! ありがとうございます!
(次話の書き溜めはありません)
「え?」
今、何て?
旅についてこなくていい、そう言われた気がする。ついてこなくていいって何だ。僕は一緒にいられないのか? 誰と? ライナと? 何でそんなことになったんだろう。頭の中に沢山の疑問符が浮かんだ僕は、その処理しきれなかった感情をテーブルに叩きつけて叫んでしまっていた。後から考えると僕らしくない行動だったと思う。
「なんで、どうして!」
「君が弱いからだ。君自身もわかっているはずだ」
「そんなこと……!」
ないとは言えない。寧ろ、周りのスペシャリストと比べて自分は凡人なのだと思っていた。僕だけが秀でる何かがない。僕だけが中途半端で皆の足を引っ張っている。暴走していた感情が自己分析によって平常へと戻っていく。
「今日の戦闘でもそうだろう。あのワーウルフとの戦いは、剣を振るう速さが問題だった。大方弱点の場所を考えていたせいで、対応に遅れたといったところか」
「……何でわかるの?」
「君のことは全てわかっているつもりだ。……あ、いや、そんなことはどうでもいい」
ライナはコホンと小さな咳をして仕切り直すとそのまま話を続ける。
「あの戦闘はブレイやカルテならなんなく乗り切れたはずだ。彼らは魔物の弱点を頭に叩き込んでいるし、咄嗟の判断もできる」
「……」
「それを君はできない。君は、私たちと比べて実力差がある。それは君もわかっているはずだ」
悔しいが、彼女の言う通りだった。僕は凡人だ。他の人たちと比べて、勝っている部分は何もない。
「よって君という戦力が欠けることよりも、君を庇うことで我々が負担しなければならない労力が上回ると判断した」
「それはそうかもしれないけど」
「君がいても仕方がないんだ。私たちは、いや私はそれぞれの分野に特化している人物を欲している」
「でも……」
それはわかる、わかっている。……つもりだ。
戦闘であればライナやブレイさん、補助であればカルテさんやマーモさんのように、それぞれが何かに秀でた人物でパーティを組めば効率良くいくはずだ。
わかってはいるのだ。そこに必要のないのは誰か、自分でもわかっていた。だが諦めたくなかった。いや、今でも諦めたくない。僕はライナが大事なんだ。彼女と一緒にいたいんだ。
引っ込み思案だった僕は、故郷の村では友達すらまともに作ることができなかった。数少ない僕の理解者である、大好きな両親を失ったときに手を差し伸べてくれたのがライナだった。彼女が僕をどん底から救ってくれたのだ。
だから僕は恩返しがしたい。彼女に役に立ちたい。その気持ちから、僕にしては珍しくライナの言うことに反論しようとしていた。
「でも、やっぱり」
「そうか。君なら私のことを一番に理解してくれていると思っていたが、失望した」
背筋にゾクリと寒気が走る。ライナは今までに聞いたことのないような冷たく、突き放すような声で言い放ったのだ。僕は彼女と幼馴染だが、今発したような声はまるで聞いたことがなかった。
「最後に一度だけ言っておこう。一度だけだ」
彼女は雰囲気を殺すナイフのような声色で僕を突き刺す。
「ウェン、君は足手まといだ。パーティの足枷なんだ。この魔王を倒すためのパーティに、戦力として数えられない人間は必要ない」
「僕だって戦力くらいには……」
「あぁ、かもな。しかし私と君は数年一緒にいるが、君は私に勝る部分がないだろう。剣技ならブレイ、魔法ならカルテ、補助ならマーモ。他のパーティメンバーは私を超える何かを持っているが、君は何もないはずだ。君は私たちの足を引っ張らず、かつ私を超えるような戦力になると言えるか?」
僕は黙った。黙ってしまった。それが彼女の質問への回答になると知っていたはずなのに。