11-それ相応のことって何ですか?
「勇者の追っかけかなんか?」
「……そうです!」
危なかった。もう少しヨツノノさんが話してくれるのが遅ければ自白して盛大に自爆していたところだった。彼女がそう思い込んでいるうちに話を合わせておこう。それが僕のためにもなる。
「そーかそーか。有名人の追っかけかー」
何故か腑に落ちたような顔をしたヨツノノさんは、うんうんと頷くと酒を飲みほして勢いよく席を立つ。すると彼女は先ほどまで座っていたその席に片足を乗せると、店の中全体に届くように声を張って問いかけた。
「この中で勇者のことを知っている人いるー⁉︎」
……そして彼女のおかげで、僕は店内にいる荒々しい男たちの視線を一気に浴びることとなった。
こちらに顔を向ける人たちの表情は様々だ。驚いたような顔をしている人もいるし、面白そうだとでも言いたげな顔をしている人もいる。どの人にも共通して言えることは、僕とヨツノノさんから視線を外す人はいなかったということだ。恐らくそれはヨツノノさんが席に足を乗せたことも関係しているのだろう。その行儀の悪い体勢のせいで、彼女が履いているスカートから下着が見えそうになっていたのだ。
とにかく彼女がどこまで狙ってやっているのかはわからないが、おかげで情報が集まりそうなのは事実だ。体を張って注目を集めるヨツノノさんに感謝しつつ、僕は一歩前に出てより強く視線の雨を浴びる。
「勇者様を探しているんです。ご存じの方いませんか?」
「ガキには興味ねぇ、下がってろ!」
視線の次に降るのはブーイングの嵐だった。観客が求めているのは僕ではなくヨツノノさんだったということだ。
「まーまーお兄さんたち落ち着いて。勇者を探しているのはあたしも同じだから」
「え、そうだったんですか?」
「君は黙ってて」
一瞬ではあるが、ヨツノノさんは凄まじく呆れた顔を浮かべた。僕は何か失望されるようなことを言ってしまったのだろうか。自分が相手の気持ちを読み取れるほど器用な人間だとは全く思っていないけれど、だとしても彼女の考えていることは全く読めないところが多いなぁ。
そして当の本人であるヨツノノさんはこの注目を利用して、皆を煽るような言葉を放つ。
「どう? あたしたちに情報を提供をしてくれたら、それ相応のことをしてあげるけど」
そんな約束をして大丈夫なのだろうか、僕は謝礼と言えるほどのお金は持っていないのだけど。心の中でそうは思っていたが、先ほど黙っていてと言われたこともあり僕は言葉を飲み込んだ。




