9-疑うより信じてみる
「あー、そんなに思いつめなくても」
ヨツノノさんはいつの間にか注文していた紫色のお酒を啜ると、再び僕へ言葉をかけ始めた。
「君ってさ、良い子だよね」
「……は?」
何故かはよくわからないが、僕は胸が痛くなるような一言を放った人に褒められた。話の流れが読めない。もしかして僕は今、ご機嫌取りでもされているのだろうか。
そうだ、先ほど相手を疑うことを覚えた方が良いと思ったばかりじゃないか。この人は一度僕を騙した人だ、この言葉にもきっと裏があるに違いない。そう思いながら僕は彼女の真意を確かめるため、睨みつけるようにしてヨツノノさんの顔をジーッと見つめた。その視線を浴びた彼女は、少しばつの悪そうな表情を浮かべて再びお酒を口に含む。
「いやさ、あたしが適当に言った言葉にそこまで悩むとはね。思わなかったんだよね」
「そうだったんですか?」
「ほぼほぼ初対面なのに相手のことなんてわかるわけないじゃん。なんか色々聞かれて面倒くさかったからそれっぽいこと言っただけ」
本当にそうなのだろうか。適当な一言にしては、彼女の発言は的を射ていた。もしかしてこの言葉も嘘で、何か裏があって……。
同じ思考が頭の中をグルグルと回っていく。一体何を信じればいいのだろう。頭がおかしくなってしまいそうだ。
「あーもう。だからほら、そんな難しい顔をしない」
堂々巡りする負の回廊から僕を連れ出してくれたのは現実の温かな感触だった。
温もりの正体は隣に座っていたヨツノノさんだ。気づいたら僕は彼女の肩を抱かれ、そのまま顔を引き寄せられて彼女の胸元に顔をうずめるような状態となっていた。
「本当に君は疑うことに慣れていないんだね。だからあたしの言葉を疑おうとして苦しくなるんだ」
「……お恥ずかしながら、その通りです」
「でもその方があたしは好きだな。疑うことしかできない人より、信じることしかできない人の方が、上手く言えないけど綺麗だと思う。我がままだとは思うけど、どうか君はそのままでいてほしい」
「それは、嘘ですか?」
「どうかな」
肩を放した彼女は、いつか見せたときのような爽やかな笑顔を浮かべていた。きっと今言ってくれたことは嘘ではないのだろう。そう思うと温もりは離れたけれども、代わりに心の中が温かくなっていた。
疑うことを覚えた方が良いのは事実だろうけど、それで苦しくなるくらいだったら、やはり僕は人のことを信じられるような人間でいたい。そのような決心をして、ここに来た目的を果たそうと今度は僕の方からヨツノノさんに声を掛けるのだった。
いい加減だいぶ前に書いていたウェンの設定画を公開しようと思います。
4月中には、4月中にはやります。




