7-思い違いの仲人
「……あっ」
目が合った最初の数秒こそ表情が変わらなかったものの、彼女の顔色は僕を僕だと認識した途端に段々と青ざめていった。まさか過去に見捨てた人物と再会するだなんて思ってもみなかったのだろう。とても気まずそうな表情を浮かべている。
「……どうも」
「あ、うん。……どうも?」
「何、二人は知り合いだったのか! さては君が落としたい女はヨツノノだったわけだな。ハハーッ!」
気まずい沈黙が流れていた僕ら二人とは対照的に、金髪のお兄さん――、確かブッツと呼ばれていたその人は、明るい勘違いで一人だけ盛り上がっていた。それが本来の性格なのか、お酒のせいなのかはわからない。けれども彼の明るい声が、この空間唯一の癒しとなっていることは事実であった。
「待てよ、ならば俺はお邪魔虫というわけだな? ではここから去らなければいけないな。ハハッ」
「え?」
しかしその唯一の空間は、勘違いを進めてこの空間から離れようとした。
「なーに気にするな! 確かにオレはこいつを狙っていた。だがオレは人の恋路を邪魔するような無粋な男じゃあない」
「いや、そうじゃなくて」
「じゃあな坊や。検討を祈ってるぜ、ハハッ! そこの店員、この二人の会計はツケにしておいてくれ。明日オレがまとめて払うよ。ハッハー!」
ああ、きっとこの人は心の底から良い人なのだろう。そうでなければ、今日偶々隣にいただけの僕をこんなに気に賭けたりしないはずだし、他人の会計を払うなんてしないはずだ。
だが同時に思い込みが酷く激しい人でもある。僕とヨツノノさんは仲が良い知人じゃない。寧ろ悪縁で繋がってしまった仲の悪い他人だろう。そんな状態の二人を残されても困る。
そうは思っていたのだが、僕とヨツノノさんが言い訳をする前にブッツさんは店を出て行ってしまった。行動が早いのは結構だけれども、だとしたら僕に絡むのも早めに切り上げてほしかったと思う。
……さて、残ってしまった僕たち二人の間には、人が大勢集まっている酒場とは思えないような暗い空気が再び流れていた。僕もヨツノノさんも、中々互いに口を開くことができない時間が続く。当然だろう。僕は彼女に騙され、彼女は僕を騙したのだから。
あまり話が進んでいませんね……。良くない良くない。




