7-僕にできること
「では戦い方についてだが、まずは先ほど話したように敵の攻撃をひたすら避けることだ。特に致命傷を負わないようにすることだな」
僕が戦法の概要を理解できたことで、マントさんが話す内容は具体的な戦い方についてへと変わっていった。
「以前のクラーケンとの戦いだが、あれは悪いパターンとしてとらえるべきだろう。とくに最初のような無策に突撃する姿は、正に愚の骨頂だと言える」
それは確かにそうだ。あの時は船が沈むかもしれないという状況だったし、一度クラーケンの足と戦って勝利していたということもあったが、それを考慮しても僕はひどい戦い方をしてしまった。マントさんがいなかったら、今頃僕は死体となって海をさまよっていただろう。僕は改めて目の前の人に感謝をした。
「戦いになったとき、まずは相手の動きをよく観察すること。そうすれば敵の攻撃を見極め、避けることも反撃を行うこともできるだろう」
「逆転の一手を探すということですか?」
「あぁ。見つからなかったら、一度逃げて体制を立て直すという選択肢をとっても構わない。ともかく今のお前の実力では、対等に戦える敵は限られている。そのことを忘れないことだな」
なるほど。確かに今、マントさんが教えてくれたことは大切だ。
勝負に勝つことを意識するよりも、相手との実力差を図ること。実力差がわかれば一方的に攻めることができたり、反対に逆転の一手に賭けた戦いができるかもしれない。これは今までの僕にはない考え方だった。今までは全体的な実力が高いパーティにいたこともあり、パーティのみんなで戦えば適わない敵はいないと、そんな考え方が頭のどこかに強く残っていたのかもしれない。
だが今は違う。今は僕一人なんだ。実力で適わない相手なんてたくさん存在する。大事なのは、その中でどう立ち振る舞うかということのはずだ。適わない相手と対峙した時、僕がどう行動するか。それを意識して戦うことで、もしかしたら格上の相手を倒す手段を身に着けることができるようになる、そんなこともあるかもしれない。
今僕の胸に渦巻いている気持ちは希望だ。この戦い方を習得できれば、何かが変わるかもしれないという根拠のない希望が僕の中に存在していた。
「悪くない目だ。それでいい」
マントさんはそんな僕に優しい視線を送ってくれた。
「船を救うときに出した荒唐無稽な発想、そして交渉の際に見せた相手に対する察しの良さ。その二つの実績を考慮すれば、お前にはこの戦法の方があっているはずだ。努力しろ」
「はい、ありがとうございます!」
僕のこれまでの行動が、今の僕の希望を作っている。それがとても嬉しくて、僕は満面の笑みを目の前の人に向けた。
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