6-僕にあるもの
「お前が目指すのは勝利ではない。相手の隙をつき、倒すことだ」
その言葉は彼なりの補足だ。おかげで言っていることは理解できた。
それでも意図は理解できなかった。相手を倒すことと勝利することの差が、だ。勿論そこに違いが存在することはわかっている。だが明確な違い、本質というところを僕は捉えきれなかったのだ。
「理解できるか」
「できていないです」
「その顔を見ればわかる。仕方があるまい、もう少し詳しく話してやろう」
普段はここまでしないのだが、と小さく呟いてから彼はもう一段階詳しい補足を添え始めた。
「まず先に質問をするが、俺とお前が一対一で戦ったとき、どっちが勝つと思う?」
「マントさんです」
考えるまでもない。僕が彼に勝てる要素など全く思いつかないからだ。仮に僕がマントさんの顔に砂をかけるような卑怯な行いをしても、恐らく彼は僕を倒せるだろう。
「ではお前が俺の知り合いを人質に取り、一方的に攻撃できる状況ならばどうだろう」
「えぇ……」
想像以上の卑怯な行いを提案されてしまった。確かにその内容ならば僕にも勝ち目があるかもしれない。絶対にやりたくない手段だし、絶対にやらないと思うけど。
だが、仮に提案された内容を行って僕がマントさんを倒すことができたとして、それは勝利とは言えるのだろうか。少なくとも僕は、自分がそんな手段でマントさんを倒すことができても全く嬉しくないと思う。
「そうだ。仮にそのような手段で勝負したとして、それは勝利とは言えないだろうよ」
また考え事が顔に出ていたのだろうか。マントさんは先ほどまでの僕の考えを把握しながら話を広げる。
「だが同時にお前は俺を倒すことができる。それが勝利と、倒すという行為の差だ。流石にこれで理解はできるだろう」
「えぇと」
確かに理解はできた、と思う。要はどんな卑怯な手を使ってでも勝てということだろう。相手の能力を上回る戦いよりも、不意を突いたりズルい戦いをすること。目指すのは本質的な勝利ではなく、例え一瞬だとしても相手を怯ませるような状況を作るということだ。そのあとは先ほどマントさんが言っていたように逃げるなりなんなりすれば良いのだろう。
「無論、卑怯な手を使うにしてもそれ相応の努力は必要だ。それに関しては今後も鍛えていく必要があるとは思うが、そこに求められるのは才能よりも発想だ。その部分は心配していない。俺はお前の発想について、ある程度評価している」
あ、それが優れている点だったのか。話題が戦法についてに変わっていたのですっかり頭から離れていた。
3月半ばまでには次のチャプターに移れると思います。




