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2-あなたのことを考えて

交渉だけで時間を使ってしまっている……。

「なら、僕を弟子にしてくれませんか」

「何?」


 それはマントさんの予想を裏切る発言だったのだろう。目を丸くした彼の表情を見ればすぐわかる。

 僕は彼が落ち着くまで返答を待つことにした。彼が驚いている間に続きを話しても聞き入ってもらえないと思ったからだ。そうして時計の秒針が一周した頃、彼は表情を普段のものに戻した。


「マントさんの道を塞ぐようなことはしません。代わりに僕を鍛えてほしいんです」

「……」


 マントさんは視線を何もない空間に移して話を続ける。


「何故俺がお前を鍛える必要がある」

「世界を救うためには力が必要です。マントさんの力を直接借りられないなら、その力を受け継いだ誰かがいれば目的の達成に近づけるんじゃないかと」


 この理由で納得してもらえたかはわからない、が彼は話を打ち切らなかった。

 

「貴様がその誰かになるということか」 

「はい。どうでしょう」

「ふん」


 目の前の彼は鼻を鳴らすと、視線を僕の方に戻した。その視線は僕に価値があるのかを確かめる、品定めをするような目をしていた。少しの沈黙の後、マントさんは再び口を開く。


「メリットはなんだ」


 それは先ほどと同じく、お願いではなく交渉をしろということだろう。見方を変えれば、拒否をしないということは彼の中に僕を鍛えても良いという考えがあるともとれる。これはチャンスだ、逃してはいけない。そう思った僕は必死に頭を使い、彼に与えられるメリットを考えた。

 すぐに考えついたのは、僕たちが世界を救ったときに『世界を救った人間を師事した人物』としての名声を得られるというものだ。だが僕はすぐに考えを否定した。名声が欲しければ彼自身が勇者パーティに参加すればよいのだから、パーティへ誘ったときに了承しているはずだ。つまり、彼は名声を欲していない。

 ならば富だろうか、そんな考えも浮かんだものの、恐らくそれも違うと思われる。富が欲しければクラーケンを倒したり船を救ったときに、何かしら要求してくるのではないだろうか、そう思ったからだ。

 そうして彼の発言や行動を振り返っている間に気が付いた。彼が一番求めているのは自分の道を進むことだということに。ならばその道を進みやすくすることが一番の交渉材料となるはずだ。


「早く答えろ。俺は無償でお前の師を務めるつもりなど全くない」

「はい、わかっています」


 何をメリットとして提案すれば良いかはわかった。あとは交渉に使える具体的な材料は何か、それだけだ。もちろんそれを用意するのが最も大変なのだけど。

 だがこうして僕が考えている間にも、段々とマントさんに苛立ちが募っていくのもわかる。これ以上待たせたら弟子をとる話自体をなかったことにされるかもしれない。それは困る。仕方がない、と割り切った僕は賭けに出ることとした。


「貴方が困ったとき、僕や僕の知り合いが貴方を助けることができます」

「……ほう」


 彼の表情が変わった。見たことがある表情だ。あれは、そうだ。僕が船を持ち上げることを提案した時と同じ顔だった。

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