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0-彼女らの朝食風景

二話投稿文(といっても短いですが)を用意していたら前回更新分が短くなっていました。

今回よりチャプター3です。多分修行編です。

――――――


「おいライナ、掲示板のニュースを見たか!」


 食堂の扉を荒々しく開けたのはブレイ・ドソドだ。顔色を青くした彼は、息を切らしながらパーティリーダーである勇者の元へと駆けつける。

 勇者であるライナ・サバイバは、同じパーティメンバーのマーモ・ティンスターと共に朝食をとっていた。彼女たちは香ばしい匂いのするバタートーストを、サクッという良い音をたてて美味しそうに食べている。少女二人が作っていたそんな和やかな雰囲気の中に、筋骨隆々とした体つきの男が慌てた様子で割って入ってきた。


「優雅に朝食をとっている場合じゃないぞ!」

「なんだブレイ。君は食事を静かに楽しむ人間だと思っていたが」

「そうだがそうじゃない! お前はニュースを見たか!」

「見た。ウェンが乗った船のことだろう」

「あぁそうだ。やはりお前も見ていたか……」


 ブレイはどこか悔しそうに目を閉じて拳を振るわせる。ニュースの内容はこういうものだった。『コーキョ行きの船、クラーケンに襲われる』。宿屋の掲示板に張り出されていた新聞には、現在乗客に死者は確認できていないものの、負傷者は数名ほど確認されていると記載されていた。

 そしてその船にはかつての仲間が乗っていた。それも本来なら船に乗る必要がなく、彼らが追い出したことによって乗船することとなった仲間が。これでその仲間が負傷したとすれば、それは自分たちのせいだ。ブレイはそう考えていた。


「ウェンは無事だろうか。あいつ、正義感は強いからな。クラーケンのような魔物が出てきたとあれば立ち向かうはずだ。だがアイツの実力では……」


 ブレイは最後まで言葉を発することはなかった。彼はクラーケンに勝てないと言ってしまえば、ウェンの幼馴染であるライナを不安にしてしまうと気が付いたからだ。しかしブレイが言いかけたことは事実であり、ライナもそれに気が付いていた。だからこそ、ライナはこう言った。

 

「彼は無事だ」

「なに?」

「ウェンは無事だと言っているんだ」


 それはブレイの聞き間違えではなかった。彼女の顔に映る迷いのない淡々とした表情が、まるでウェンの無事を見届けたかのように錯覚させる。その錯覚のせいか、ブレイは聞き返すのが遅れてしまった。

 

「……あ、そう思いたいのかもしれんが、まだ情報は……」

「知っているんだ」


 ライナはバタートーストを紅茶で胃の中に流し込むと、そのまま視線をブレイの方へと移す。


「レワーカ港でマーモが遅れて集合していたそうじゃないか。その時に鳥を一匹、ウェンの元へ派遣していたらしい」

「え、鳥を?」


 レワーカ港といえば、先日までパーティが滞在していた港だ。あそこでウェンは故郷であるコーキョ行きの船に乗り、ライナやブレイが属する勇者パーティはコノナドという別大陸まで進む船に乗った。確かにあの時、ウェンを見送った後にマーモは遅れてやってきた。仲間の姿が見えないと、今ここにいないカルテ・ヘイレンが心配していたことをブレイは思い出す。


「その鳥の言葉によるとウェンは無事とのことだ。どうやら船内にいた人物と協力してクラーケンを倒したらしい」

「船内にいた人物だと? それは一体」

「すみません、そこまではわからないんです。あの子はその協力者の姿を見る前に、わたしの下に帰って来ちゃったみたいなので。あと、あの子が戻って来ちゃった以上、今後はウェンさんの無事は確認できないんですけど」


 ここまで会話に入ってこなかったマーモが補足をする。あの子、というのは派遣した鳥のことだろう。ともかく、ウェンが無事でよかった。クラーケンを倒したという協力者のことは気になったが、今は素直に安心させてもらおう。ブレイはほっと胸をなでおろした。


「……ところで、なんで鳥なんて派遣してたんだ?」

「……」


 何故だろう。マーモは沈黙を貫いた。その頬が赤く染まっていた理由も、ブレイはわからなかった。

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