1-助けてもらう役割
バタバタしていますが新作スタートです。
といっても最初はスロースタートになりそうですが!
「ウェン! そっちに行ったぞ!」
「は、はい!」
前線で戦っていた剣術の師匠であるブレイ・ドソドさんの声を聞き、僕はこちらに向かってくる魔物に対して剣を向けた。二足歩行の獣人型の魔物は、凄まじい速さで大地を蹴り、こちらへと向かってくる。
あの魔物の弱点は首元のはずだ。昔ブレイさんに教わったように、そこを攻撃できれば一発で倒すことができるはずだ――。そう考えている間にワーウルフは僕の目の前まで距離を詰めてきた。
「やぁぁぁ!」
襲いかかるワーウルフと戦うために僕は剣を振るった。しかし僕の剣よりも向こうのほうが早い。判断が遅れた僕に罰を下すかのように、ワーウルフの爪が僕の喉元を目がけて貫こうとする。
回避か、防御か。いやいずれも間に合わない。反撃の手段は? なんとかする方法は? ……いや、どれも間に合わない。自らの剣が目に入ったが、この一瞬で浮かんだどのアイデアもこの場で成せる自信がなかった。
どうしようもないと諦めた僕は、死を覚悟して思わずその場で目を閉じてしまった――。
「グァッ」
だが次の瞬間目を開けると、ワーウルフはその場に倒れていた。その背中は焦げてぷすぷすと燃えている。誰かが炎の魔法を使ってワーウルフを倒したのだ。
「最近のあなたって、いつも行動が遅れるのね」
魔法を使った赤い髪の女性はカルテ・ヘイレンさんだった。彼女は宝石が先端に埋め込まれた杖を僕に向け、更に睨みつけるように僕を見る。悲しいことに、僕は彼女から睨みつけられるに値する十分な理由があることを自覚していた。
「ウェン、いい加減にして。これで貴方のカバーに入るのは何度目だと思ってるの?」
その通りだ。僕はここのところ、パーティの中にいても役に立つことができていなかった。それどころか足を引っ張り、このように味方に助けられる始末だ。呆れ果てた顔をするカルテさんに向かって、僕は深々と頭を下げる。