9-悪魔討伐
スマホを落としてしまい、ちょっと色々と時間を落としてしまいました。
「うぉぉぉぉっ!」
僕は大きな叫び声をあげた。自分を鼓舞するために、そして気持ちだけでも負けないようにするために。足が動かせない状況だとしても勝ちをあきらめるわけにはないかない。先ほどまでならともかく、今なら僕の方が相手よりも気持ちが上だ。
叫び声のおかげだろうか。目の前にいる敵に表情らしい表情はないけれど、心なしかクラーケンが怯えているように見えた。事実、先ほどまで僕を狙って攻撃を仕掛けてきたクラーケンの足が、今は動揺しているかのようにピタッと止まっている。そうか、今がチャンスなんだ。
「マントさん! お願いします!」
「了解している」
察しのいいマントさんは既に詠唱を終えていた。彼が前に手をかざすと魔法陣が浮かび上がり、そこから一閃の光が現れ、鋭い槍となって敵を襲い掛かった。
「飛閃光槍!」
光の槍はクラーケンの本体を貫き、奴の体に深い傷を負わせることができた。傷口からは体液が流れ、床の墨と混ざり合っていく。
クラーケンは目を血走らせると、ギョロリとその目玉をマントさんの方へ動かした。攻撃の標的が僕からマントさんに変わったのだ。奴はまるで先ほどマントさんにやられた時のように、足を槍のようにピンッと伸ばしてマントさんを貫こうとする。攻撃の対象となったマントさんは詠唱に夢中で無防備の状態だ。これはまずい、そう思った僕は剣を持ち直して視線をある一点に向けた。そして。
「いっけぇ!」
手にしていた剣を投げつけた。
投げた剣は目的の場所、先ほど光の槍が刺さった傷跡に向けてまっすぐに飛ぶ。
「――――ッンッッ!」
よしっ、ジャストヒット。傷跡に刺さった剣が全身に痛みを伝えたのだろう、伸びていた足はマントさんまで届かずに動きを止めた。時間を稼ぐことには成功したようだ。僕は剣を持っている手とは逆の手を握りしめてガッツポーズをとる。
背後の方に視線を向けると、マントさんは詠唱を唱えながら口元に笑みを浮かべていた。遠いからよく見えないけれど、よくやったと褒めてくれている気がする。
「……対の音色は終わりと始まりをもたらさん」
マントさんの詠唱は続き、魔力が彼の体に集まっていく。どうやら詠唱の終わりが近づいているようだ。強い魔力を込めた魔法のせいか、彼の体自体が赤く光り始めている。
「粉砕せよ。灰燼滅破!」
彼が魔法を唱えると、その体に集まっていた赤い光が弾けるように広がった。そして今度はクラーケンの体が赤く輝く。
酷く動揺したクラーケンは光り輝いている部分まで足を動かし、まるで掻くように体を擦り始めた。しかし赤い光は収まらない。それどころか輝きを増していく。マントさんの魔法の意味をそのまま受け取るのであれば、この後クラーケンは。
「ンッ――ンンッッ――――!」
やはりそうだった。クラーケンが鈍い声を出した直後、大きな爆発を起こし残骸を飛び散らせることになったのだ。




