表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/50

4-勇者の心、少年の中に

臨時更新です。

 阿鼻叫喚とは現状のようなことを言うのだろう。船員の叫びを聞いて、ある人は悲鳴を上げてその場にうずくまり、ある人は泣きじゃくり、ある人は近くにいた船員の胸倉を掴んで問い詰めている。悲しみが、絶望が、人々を襲っていた。悪魔のせいで甲板には負の感情が蔓延していたのだ。

 こういう状況の時、ライナならどうするだろう。世界を救おうとする勇者である彼女なら、どう皆に接するだろう。

 ふと、目の前で泣いている男の子が目についた。その男の子はまるであの時の僕のように、膝を抱えて泣いていた。


「大丈夫だよ」


 そんな彼を見ていたら体が勝手に動いていた。うずくまる男の子の肩にポンっと優しく手を置いて、そのまま屈んで視線を合わせ、僕は男の子に語りかける。


「悪い悪魔なんか、お兄ちゃん達がやっつけちゃうから。だから君も大丈夫。みんなで一緒に港へ帰ろうね」

「……ほんと?」


 男の子はようやく顔を上げてくれた。まだ不安そうな顔をしているけれども、涙は跡だけになっている。


「うん。任せて!」


 そして立ち上がった僕は甲板にいる人たち全員を見渡した。不安なのはこの男の子だけじゃない。みんなの不安を解くためには、みんなの前で言わなければならない。きっとライナならそういうことをするだろうから。


「皆さんも! 安心してください」


 大きな声を張り上げた僕に、甲板にいる全員の視線が集まった。それでいい。僕はそのために声を張ったんだ。


「大海の悪魔は僕たちがなんとかします。だから皆さんはここで安心して待っていてください!」

「安心してって、お前みたいなガキに何ができると言うんだ!?」


 そう言ってきたのは船員の胸倉を掴んでいたおじさんだ。彼の言っていることはもっともだ。僕は勇者パーティを追放された身の十四歳。少なくとも自分が皆を安心させられるようなオーラを身にまとっているとは思えないし、本当に大海の悪魔を倒せる実力を持っているかなんてわからない。でも、さっきまでのまま皆を不安になんてさせられない。きっと僕が憧れた勇者なら、みんなの不安を取り除いて見せるからだ。


「僕はただの船客です。でも」


 元々勇者の仲間だったから。そう言おうと思ったが、ならば何故今は勇者の近くにいないのか、結局は実力がないのではと不信感を与えてしまうかもしれない。だったら――。


「でも、悪魔の足を無傷で倒すことができました。それはそこの船員さんや、この人が証言してくれます」

 

 そう言って僕は先ほど声をかけていた船員さんと、後ろにいるマントさんの方へと指をさす。正確に言えば倒したのは一本だけだから、自分の実力を少しだけ盛っているのだけれど。


「本体だって倒して見せます。だから安心していてください!」


 そう言って僕は、大海の悪魔が出たという船底へと駆けていった。自分が盛った実力を実現させるために。そして、皆と一緒に生きて陸へと帰るために。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ