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0-彼女らの本音

お待たせしました(?)

チャプター2スタートです。少し書き溜めもできたので気持ち更新頻度を上げられるかもしれないです。

――――――

 

「あれで良かったのだろうか」


 ブレイ・ドソドは出港した船を見ながらそう呟いた。出港した船には彼の弟子であるウェン・オールスが乗っている。

 ウェンはとても素直で真面目な人間だった。嘘をつこうとしても顔に出てすぐにばれてしまう、そんな彼のことをブレイはとても気に入っていた。

 しかしウェンの実力については別だ。彼の戦闘能力は非常に低いものだった。同じ教え方をしていても、ライナがすぐに覚えて実戦に移せることでもウェンは中々覚えることができなかった。どうやら覚えたことを瞬時に実行できず、考え込んでしまうことで動きが硬くなってしまうようだった。

 そのような人間は、ブレイが王国の騎士団に所属している時に指導している部下にも多く存在していた。しかしその部下たちは戦いの回数を増やすことでその弱点を克服していくのに対して、ウェンは旅の中で克服どころか悪化していく一方だ。ウェンがまだ十四歳という若さであることを考慮しても、戦力として数えることは中々難しかった。それはこの旅がただの冒険ではなく、世界に現れた魔王を倒すための重要な旅だということもある。

 だが、それでも彼は大事な仲間だった。そんな仲間を傷つけるような形で追い出してしまったことは正しかったのかと、ブレイは悩んでいたのだ。


「どうだろうな」


 絞り出すようにそう言ったのはリーダーであるライナ・サバイバだ。彼女はウェンと同じ村で育った人間であり、一番彼と同じ時間を過ごしてきた者だ。彼に対する思いはこの場にいる誰よりも強いはずだ。彼女はこの旅の重大さがわかっているからこそ、なるべく自分の感情を出さないようにしていた。そんな彼女も、自分の幼馴染に対しては少し私情を挟んでしまうことがあった。現に実力を劣っている彼を採用し続けたのはリーダーである彼女の権力を利用したものだ。それをわかっているからこそ、彼を追い出す際はライナ自身が話を切り出したのだ。


「彼のこのパーティに対する思い入れは強い。優しい言葉では動いてくれないと思ったから厳しい言い方をしたが、もっと言い方というものがあったかもしれないな」

「……すまない。実際に行動する君が、一番悩んでいることだったよな」

「いいんだブレイ。こうなったのは私の責任だ。私がもっと強ければ彼をこんな目に合わせることもなかったし、私にもっと教える力があれば彼の実力を引き出せたはずだ」

「でもそれって意味ないんじゃないの?」


 呆れた様子で言葉を発したのはカルテ・ヘイレンだ。ウェンと一緒に過ごした時間がこの中だと少ない方だからだろうか。彼女は一番、この件に対して冷静に判断をすることができていた。


「いくらライナが強くなろうと、ウェンを守っていたらその分だけ手間が増えて手子摺るだけでしょ。それに勇者であるライナを彼の教育に回して時間を食うくらいなら、その分先に進んだ方が世界のためだわ」

「おい。そんな言い方!」


 ウェンのことを悪く言うカルテの胸倉を、ブレイは怒りの形相を浮かべながらガシッと掴む。しかしカルテは表情一つ変えずに言葉を続けた。


「あんたたちはウェンに甘すぎんの。幼馴染だか弟子だか知らないけど、アイツがこのパーティにいてプラスになったことなんて数えるほどもないでしょ。剣術も、魔術も、その他の能力だってアタシたちには及ばない癖に」

「お前っ!」

「やめろブレイ! カルテの言うことは紛れもない事実だ!」


 カルテを殴りかかろうとするブレイを、ライナは叫び声をあげて静止させる。ブレイはカルテの前まで持ってきた拳を一種運だけより力強く握りしめると、その拳をどこにぶつけるわけでもなく、一人で解く。そしてそのままカルテの胸倉を掴んでいた手も放した。


「……悪かった」

「いえ。想像通りの反応だったわ」


 掴まれていた胸元を正しながら、カルテは息を整える。動揺はしていなかったものの、掴まれていたことで息苦しさはあったようだ。


「カルテの言うことは正しい。彼がいることで私たちに負担がかかっていたことは事実だ」

「ライナ……」

「……私は酷い女だ。彼を傷つけることでしか守れなかった。この償いは世界を救うことで必ず果たす」


 今はもう見えない船の方向を見て、ライナは最後にこう呟く。


「……本当に済まない。だがウェン、私は君に生きていてほしいんだ。君のことが、とても大事だから」


 そう言うとライナは宿屋の方向へとゆっくり歩いて行った。




「……ところで、マーモの姿が全く見えないんだけど」


 カルテはここまで話に加わってこなかったもう一人の仲間の姿を探す。するとその仲間は、とてとてと町の奥の方から走ってきた。


「す、すみません。色々と手間取っちゃって」

「色々って何よ」

「い、色々は色々です。教えられませんっ」

「ふぅん? じゃあ一回戻るわよ。アタシたちが乗る船が来るまでもう少し時間がかかるんだから」


 息を整えながら、マーモ・ティンスターは眼鏡を整える。はぐれていた仲間が合流できたことで安心したためだろうか。カルテはライナの背中を追って宿屋のほうへと走っていく。ブレイは一度マーモの顔をちらっと見るが、まだ動き出せない様子の彼女を見て宿屋で待っていた方が良さそうだと判断し、足を動かし始めた。


「……ウェンさん」


 その場に一人残る青髪の少女は空を見てぼそりと呟く。


「どうか、ご無事で」

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