プロローグ-幼い時のお話
年明けと同時投稿したくて急いで投稿しました。
続きは今から書きます。
雨が降っていた。
その日は特に酷い雨が村を襲っていた。そのため村の人たちは家から出ることはなく、ただ一人の少年だけが、外で座りながら雨を受けていた。
豪雨が少年の体を濡らす。冷たい雨が少年の体温を奪い、命の灯火を消そうとする。
このままでは死ぬかもしれない。そう思うところはあったが、それでも良いと思った。そうしたら、お父さんとお母さんに会えるものな……。少年は心の中でそう呟く。
つい最近亡くなった両親の顔を思い出し、俯いた少年の顔に笑みが浮かぶが、二人がいないという『現実』を思い出して表情がまた失われた。
消えてしまいたい。このまま雨に流されて、自分の存在を溶かしてしまいたい。まだ一桁の年齢しか生きていない少年は、両親のいなくなった人生に絶望して、死を望んでいた。
「どうした?」
そんな中、一人の少女が少年の前に現れた。少女は少年の友人だ。絹糸のような美しい黒髪が雨でぐちゃぐちゃになっている。
「風邪、ひくだろう」
「……死にたい」
「そうか」
少年の言葉を少女は否定しない。少女は両親を失った彼の気持ちを理解し切ることはできない。少女には優しい両親がまだ健在であり、今も外に出かけた少女のことを家で待っているのだ。
「だからさ、放っておいてくれないかな」
「断る」
少女は凛とした態度で冷たく、だがどこか優しく、少年の言葉を断ち切った。雨で前髪が下りているせいだろうか、地面に座る少年は視線だけを少女に向けるものの、その表情を見ることはできなかった。
「なんで」
「人が死んで喜ぶものがいるか。……いや、違うな」
自分の発した言葉に疑問を持った少女は、濡れた髪を掻き分けてまっすぐな瞳で少年を見る。
「お前がいなくなったら私が寂しいんだ。お前は、私にとって大事な友人だから」
「友人?」
「そうだ。輝石を持って生まれた私を、一人の人間として扱ってくれた、大事な友人だ」
「それは普通のことで――」
「私にとっては嬉しかったんだ。君は私の言葉を疑うのか?」
「そんなこと」
「ないんだろ。だからそうなんだ。私は君が大事なんだ。君に生きていて欲しいんだ。だから」
少女の言葉を聞いて、少年はようやく顔を上げた。
少女が少年に手を伸ばす。少年は少女のその手を掴む。絶望の沼に沈んでいた少年は、少女の手によってそこから救い出されたのだった。






