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情報屋、いかがですか?  作者: 和泉明日
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こんな人生間違っている。

目が覚めると、美少女が僕の顔をのぞき込んでいた。

異世界に転生した俺は、神から授かったチート能力で無双します。

俺は今、美少女3人と同居している。

学校に登校していると、空から天使が降ってきた。

こんな風に俺の物語を始めることができたのならどんなによかっただろう。


というか俺は心の中で美少女を求めすぎているのではないだろうか。

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連日の暑さもだんだんと収まりを見せてきた8月の終わり。

俺は、夏休みに始めた情報屋の利益でなんとかこの夏を超えることができた。

詰まるところ、何でも屋をかっこよくしたようなもんだ。

依頼人に必要な情報を集め、必要ならその依頼を解決する。

長いようで短い夏休みが明けて、高校では二学期が始まり、段々と生徒たちも普段の生活を取り戻しつつあった。

もちろん俺の通う高宮国際高校も例外なく始業式が行われた。


始業式が終わりクラスに戻ってくると、陽キャたちが窓際の席に集まりだした。

俺は友達がいないわけではないのだが、世間的に見たら陰キャの枠に入ってしまうのだろう。

俺も自覚はしているが、クラスに一人は必要な陰キャという名誉あるポストを担わせてもらっていることを嫌なんて思っていない。大嫌いだ。

大声で話しているから、俺のところまで声がよく聞こえてくる。

どうやら夏休みが例年よりも少なかったことに文句を言っているらしい。


「まじでこの学校ふざけてんよな。ブラック企業にもほどがあんだろ」

リーダー格の三井新太が口を開くと、周りの奴らもそれに同調した。

もちろん夏休みが少なくなったのには、エアコンの設置というちゃんとした理由があり、学校側もお前らを苦しめたくて休みを短くしたわけではないだろうに。


というか、それを一番不服に思っているのは我がクラスの担任でもある山本先生であろう。

二日酔いなのかただでさえ悪い目つきがいつにも増してひどくなっている。

いや、あの目はにらむだけで人を殺せるだろ。


そんなことを考えていると、背中に何か刃物で刺されたかのような衝撃が走った。


「いでっ!」


あまりの痛さに思わず声が出てしまった。後ろの方を振り向くと、そこには芯のでたボールペンを右手に持つ女の子が、ぷっくり怒ったような表情をして席に座っていた。


「何んだよ一条さん!それ人刺すものじゃないだろうよ!ていうかボールペンの先に赤っぽい液体がついてるのが見えるんですけど!それ俺の血じゃないよね!!!」

「こ、これはボールペンのインクだよ!どんなに呼んでもたたいても結君がこっちに気づいてくれないからでしょ!」

「後お前、俺のこと結君って言うのやめてっていったよな、その名前嫌いなんだ」

「え?かわいくていい名前だと思うんだけど」

「だから嫌いなんだよ。俺のことは春夏冬って呼んでくれ。


ふざけた名前かと思われるかもしれないが、これがれっきとした俺のなまえだ。

ちなみに読み方は[あきなし]ね。俺の苗字には四季の中で秋だけ含まれてないからこんな読み方になったらしい。ここテストに出るよ。


「いいじゃん。結君は結君だし!」

これだからコミュニケーションの化け物は困る。

しかし、彼女の話を聞く感じでは、こちらに非があるようなので何も言い返せない。


「で、でも刺すのは次からやめてほしい。危ないし危険だからな」

「結君日本語の使い方が間違ってるよ…?それって頭痛が痛いって言ってるようなものだからね?」


おっと、俺が新しく考案した強調表現のことを一条さんは知らないみたいだな。

まぁこの表現は俺の身内でしか使われてないから知らないのも無理はないか。

ちなみに俺の言う身内というのは、数ヶ月前にインターネットで知り合った[黒猫]と言う人物だけだ。

身内と聞いたら複数の人を想像してしまいがちだが、身内と言う言葉が単数に使ってはいけないなんて誰が決めた?

身内が一人なのは、俺の考えについてこれるのが黒猫さんだけだからだ。


「で、要件はなんなんだ?」

「そうそう!話が少しそれちゃってたね。夏休みにあったパーティーのことなんだけどさ、ほんとにありがとね!結君のおかげで無事に開催できたよ!」

「ほんとだぜ、クラスみんなで話し合って決めた大事なイベントだったからな、ほんとに助かったぜ」


一条の話に、教室の真反対にいる一軍陽キャの水田が乗っかってきた。

この距離でも躊躇なく話しかけてくるのか。恐るべきコミュニケーション能力だな。

俺がなぜこんなにも感謝をされているのかというと、パーティー前日まで、開催会場が決まってなかった。だから俺が助けてやったわけだ。

これも情報屋として受けた仕事である。

報酬はもちろんなしだが、その代わり一条に情報屋の宣伝をしてもらった。

まぁこれからは依頼がじゃんじゃん入って俺の財布も潤ってくるだろう。


水田のやつはクラス全員で話し合って決めたと言っていたが、俺は前日に一条から連絡をもらうまでそんな情報知らなかったけどな。

こんな陰キャに助けられて、さぞかし悔しかっただろうよ。

いや、こんなひねくれた考えしてるから俺は陰キャのままなんだろうね。


「そ、そうか、それはよかった。ま、また何かあったら俺でよければ協力させてくれ。」


俺は、水田が話しかけたことに若干戸惑い、声を少しうわずらせながらそう答えた。我ながらいいキョドリっぷりだな。

ラノベなんかで、陰キャを自称しているやつが普通に陽キャと話しているところをよく見るが、あれは嘘だ。そもそも陰キャの俺にはこちらから話しかける権利は有していない。

一条は別だ。こいつは陽キャ女子グループの中でもとびきりのやつだが、出身中学校が同じなだけあって普通に話すことができる。


すると間髪入れずに、陽キャ(バカ)の田長丸が教室の反対から俺に向かって走ってきて俺に抱きついてきた。


「ありがとな結!愛してるぜー!」


抱きつくな離れろ苦しい。俺はお前なんかを愛しちゃいないんだよ!バカが移るから離れろ。

田長丸雄大。こいつは勉強はできるのだが、それ以外のことはそこら辺の石ころ程度の知能しかないかのようにバカまっしぐらだ。

にしてもこいつ力強いな。びくともしない。

田長丸の言葉を皮切りに、一軍陽キャがゾロゾロ集まってきた。


「てかさー、あの時めっちゃ楽しくなかった?」

「あれはもう一生の思い出っしょ!」

「またやりたいねー」

「飯もうまいし、施設も綺麗だったからね!」

「あんときの凜夢の服ちょーかわいくなかった?」


そして、みんな俺への感謝なんて忘れてパーティー当日の思い出を話し出す。

もちろん俺はこの速度で切り替わる話について行けず、ここでリタイアした。

ふと、一条の方を見ると彼女は申し訳なさそうに俺の方を見て言った

「みんながごめんね!あと、ほんとにありがとうね!」


うん。かわいいから許す!!

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