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会津遊一 ホラー短編集

本当の自殺

作者: 会津遊一
掲載日:2009/09/07

後味が悪いと思いますので、ご注意を。

僕は、学校からの帰り。


同級生達から、石を投げつけられた。


ごんっと、ゴムタイヤを殴ったような鈍い音が聞こえる。


視界が白くかすむ。


やがて髪の毛の間から、ツツーと温かい血が流れ落ちていくのが分かった。


「このみにくい化け物が」


 同級生達が僕の事を、そうののしる。


取り囲んでいる全員が、蝋人形のような白い目で嘲笑あざわらっていた。


 でも僕は、これぐらいのいじめには慣れている。


本当は痛かったけど、我慢した。


嫌がる素振りを見せれば、同級生達はもっと虐めてくるに違いないんだ。


僕は、頬にまで流れる血も気にせずに、帰宅しようとした。


 その時。


髪の毛をギュッと引っ張られ、強引に引き倒された。


そのまま僕の手足を掴まれ、無理やりに自由を奪われた。


そして、顔に砂がかけられた。


シャベルで集められた大量の砂が口やら鼻に入り込み、息が出来なくなる。


 ただ、苦しくて、苦しくて。


僕がひっくり返ったカブト虫のように足掻あがくが、誰も手を放してくれない。


涙や吐瀉物としゃぶつが体の中から迫り上がって来るも、栓がされているので逆戻りする。


 もしかしたら、このまま死んでしまうのではないか。


そう思った時、同級生達は手を放してくれた。


 僕は慌てて砂を払い、ゼーゼーと酸素を吸い込む。


その時、離れた所から、死ねーと叫ぶ声が聞こえてきた。


見ると、そこには僕の事で楽しく談笑している同級生達の姿が合った。


きっとそのまま、寄り道でもして遊びに行くのだろう。


夕日の中に、同級生達は消えていった。


 僕は涙が出た。


それは苦しかったり、虐められたりしたから出たのではない。


同級生達が帰宅する姿を見て、


「あー、友達がいて羨ましいな」


そう思ってしまったからだった。


 僕の目からは、涙が何時もより多く流れ落ちていた。




帰宅した後。


今日の事を母親に報告した。


すると、頭を撫でられた。


「あなたは、とても素直で優しい子ね。何時までも、そういう心を大切にして欲しいわ」


「……でも、辛いよ」


そう言って、僕は甘えようとした。


 その時。


力強く、母は言った。


「聞きなさい。人は誰でも辛い時期があるのよ。そう誰でもよ。今はあなたの順番でも、やがてその同級生達にも回っていく日が来るわ。今は、歯を食いしばって耐えなさい」


頭をなでる母の手が、少し強くなっていた。


 でも、本当に、そうなんだろうか。


辛い事が、当番制のようにグルグル回っているなんて、ありえるんだろうか。


今の僕には、そう思えなかった。


とてもじゃないが、もう待てない。


もう、辛いのは嫌だった。




深夜。


家族が寝静まった頃に、僕は家を出た。


遺書を残して。


出来る限り、母が悲しまないように書いたつもりだった。


何もしてくれない父の事は、一言もつづらなかった。


 そして僕は死に場所を求めて彷徨さまよった。


でも、お金は一円もなかったので、行ける所は限られている。


駅前、住宅街、神社、ビル群ぐらいか。


どれも、死に場所には相応しいとは思えない。


何より近所では嫌な思い出しかないので、死んだ後に後悔が残りそうに思えた。


 仕方ない。


僕は、とりあえず遠出する為のお金を、父から勝手に借りる事にした。


最後なんだから、それぐらい良いだろう。


そう自分に言い聞かせ、僕は家に戻った。


 すると深夜にも関わらず、明かりが付いていたのである。


家に近づくと、大声で話す母と父の会話が聞こえてきた。


「ようやく、あの子が死ぬ事を選んでくれたわね。長い間、逃げないよう精神的に追い詰めてきた甲斐があったわ」

 

「ああ。あの醜い化け物の顔を見て、何度殺したいと思った事か」 

 

 

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― 新着の感想 ―
[一言] 目新しい落ちではないですがうまいと思いました。同じ事を思いついたとしても、こんなにシンプルには書けないや…。 ボクはこういう雰囲気の作品は好きです。あまり万人に好まれるような内容ではないです…
2009/09/11 14:16 退会済み
管理
[一言] うむ、見事に後味が悪いですね。 しかし同時に、潔さも感じます。子を思わない親はいないとか、こんなのはあり得ないとか、そんな風に思う、あるいは思いたい人もいるでしょう。いや、むしろ多数派だと思…
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