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(二)-4

 一時間目の授業が終わり、休み時間になった。

 私は即座に席を立ち、一番廊下側に位置するムサシ君の席まで行こうとした。すると、教室の後ろのドアから女子の声がした。良く聞く声だった。

 声の発生源の方を見ると、背の低い女子がいた。単発で毛先が明るくシャギーが入っている。どこかで聞いた声だと思ったら、その子は放送部の伊賀シノブだった。毎日昼休みの放送を手がけるDJの子だ。今日はどうやら球技大会の件できたようだ。サッカーの会場で使用する放送機器についての相談らしい。

 シノブが用件を言うと、ムサシ君は席を立ち、教室を出て行ってしまった。

 ああ、ムサシ君は、また行っちゃった。一言、「ありがとう」だけ伝えたいのに。

 結局一〇分間の休み時間が終わるチャイムが鳴ってからムサシ君は帰ってきた。その時点ですでに英語の湯田中栄吾先生は教室に待機しており、チャイムと同時に授業を始めてしまった。

 これでまたもやムサシ君に声をかけられなかった。


(続く)

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