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しばらく放置で

それから、宝物庫の外の通路や、地上への階段など、しつこく三人で探し回ったが、スズナカもジョニーもルネも居なかった。

とりあえず宝物庫に皆で集まってこれからどうしようか話し合っていると宝物庫奥の古びた宝箱がガタガタと動いて中からジェーンが顔を出してきた。

「あっ、あいつはどこ!?」

怯えた顔のジェーンに、もしかしてタジマもどきのことかと思って、その特徴を告げると、怯えた顔で何度も頷いた。

「ここに居たんですね……」

「てっ、展示されてたから触ろうとすると、いきなり殺気を浴びせられて、そ、それで隠れてた……正直、あれは無理……」

ジェーンにさっき起こったことを説明すると

「……道連れにそのタジマもどきを封印したってことはない?アイちゃんだけこっちに逃して」

「ジョニーとミイさんごとですか?あの自分大好きな二人が?」

あり得ないような気はするが、無いとも限らない気はする。

「または……修正者に単純に負けたとか……」

「そっちの気がしてるんですよね……」

しばらく二人で俯きあった後、ジェーンがようやく宝箱から出てきて

「天帝国に帰ろう、王様にも報告しないと……」

王様とはナナシのことだろう。私が頷きかけるとナバーンが近づいてきて

「……こんな時にすまないが、アイ閣下、ジェーン殿、余の歓待を受けてもらいたい。このままだと、ナンバ一帯の天帝国への印象が悪くなる」

チラチラとジェーンを見てくる。

やはり毒殺されたという嘘は見抜かれていたようだ。私は頭を下げて

「そうですね……天帝教皇代理として、ジョニーのアホの尻ぬぐいはしっかりやって帰ります」

あのアホは騒音をまき散らして、そして異次元で戦って消えた。

スズナカも混沌操作のために布教するとか言って実は修正者と私たちを戦わせることが目的だった。

もしかして……二人とも消えて、この星は……平和になった?

ということは、修正者のお陰?あれ……スズナカってよく考えたら個人的な欲望のために宇宙の平和を乱す、真の悪の元締めなのでは……?

しかも、膨大な力を持つ割に、いつまでも人として成長しないアホも消えたので、あれ……ちょっと待ってよ。私が一人でコツコツと神として混沌操作をする方がもしかして色々と捗るんじゃないの?

え……?まさかのあの二人が全ての災いの元凶……?

思わずジェーンの方を見ると、彼女は私の耳元で

「……確かに事態がクリーンになったわ。案外このままでいいかもしれない」

「とっ、とりあえず、国王陛下、よろしくお願いします」

「ああ、天帝教皇は心配だが、まずは両国の平和のためにしっかり式典を行おう」

ナバーンは胸を張って頼もしくそう言った。

ジョセフは腕を組んでずっと何かを考え込んでいる。


それから三日ほど、ナバーン主催のナンバ王室による大歓迎会が行われ、私は天帝国代表として、国王の高齢の母親とも会見をしたし

あらゆる貴族や民間の代表者たちと話をして

そしていくつもの会議に出席した。

毒を飲んで急死したということになっていたがその後すぐに駆け付けた私の回復魔法により、ギリギリで間に合い助かったという設定に塗り替えられたジェーンが常に横にいて補佐をしてくれたので、難しい話も難なく乗り越えた。

それに、都合よく復活したジェーンのことも、ジョニーの騒音ライブについても、事あるごとに常にナバーンが公の場で話題に出してフォローしてくれたので、そういう意味でもまったくストレスなく三日間の歓迎会を乗り越えさらに、ジョセフが自ら

「ホムンクルスの国全体の運用についての責任者になりたい」

と言ってくれたので、私とジェーンでナバーンに推挙するとあっさりと了承されて、これでナンバ国のホムンクルスについての問題も

次第に解決されていく流れになっていきそうだ。


国王であるナバーンに盛大に送迎されながら、黒船が停泊している港まで着くと

「これでアイ殿ともお別れか。正直言って余は天帝教皇の破天荒さも好きであったぞ」

手を差し出されたので、強く握り返して

「国王様、また何かあったらすぐに駆け付けますから。楽しかったです。ありがとうございました」

ナバーンは苦笑いして

「アイ閣下が居られるのなら、これからも天帝国、いやあちらの大陸は安泰であろう。ついていきたいのだが、母上がうるさいのでな」

「お名残惜しいですが、では……」

ジェーンが黒船へと手を翳し、横壁にハッチを開けてタラップをシュルシュルと伸ばしこちらへと降ろしてくると、背後で見守っていたナンバ国民から大歓声が上がり、それを聞きながら私たち二人はタラップを上がっていく。

外交大成功したなぁ。よかったなーと思いながら船内に戻り操舵室へと二人で行くとスズナカが居た……なんてことはなく、ジョニーの方も船内に気配はなかった。

ジェーンがいきなり笑い出して

「あの二人、ほんとにこの世界に要らなかったんだね……あははは」

「……二人には悪いけど、これで色々と冷静に世界を創りなおせそう」

スズナカとジョニーさえ居なければ、何もかも上手くいっている気がするよ!

いつの間にか黒船の自動操船を学んでいたジェーンに天帝国への航行を頼むことにした。


途中で巨大生物に絡まれることもなく、あっさりと天帝国東の港へとたどり着いた。

タラップから降りると、すぐに現地の高官と衛兵たちが駆けつけてきて私とジェーンは多少黒船の停泊についての指示を与えた後、空を駆けて首都へと帰っていった。


宮殿に戻ると、ナナシが出迎えてくれたので

会議室に移動して、ジェーンと共に今までの経緯を話すと興味深げに継ぎはぎの顔の両目を開き

「……そうか、つまり、スズナカは消えたのか。ジョニー君と共に」

「修正者に負けたみたいです。私もですけど」

ナナシは少し考え込んだ後に

「だとするならば、今のこの宇宙は修正者側の意志によるものとなっているな。スズナカの支配から交代しているはずだ」

「……なんか、あの二人には悪いんですけど、消えた後にすっごい上手く行ってますし、この星自体もこれから平和になる予感しかしないんですけど」

ナナシは両目を閉じて、少し何かを感じようとする仕草をすると

「……少し混沌粒子の動きを探ってみたが、我々を害するような意志は見当たらない。修正者からすると、スズナカ、ジョニー君、そしてルネの三体のみが不要と判断したようだな」

私は大きく息を吐いた。安堵のため息というか、やっと自分の人生を生きられそうな、そんな今までの不幸を吐き出す様なため息だったと思う。

ここまで長かった。まさかの修正者に私が救われるとは思ってもみなかったが、私としては宇宙外に行きたいとか、もっと好き勝手生きたいとかそんな希望も野望も一切なく、ただ平和に皆と生きていきたいだけだ。

「……混沌を処理しないといけませんね。一応、モチモッチスウィーン教の神はまだ現存しているはずです」

「探さなくていいのかね?」

ナナシの言葉に一瞬、私は固まった。

「誰をですか?」

「二人をだよ」

「あの、しばらく放置でよくないですか?どうせ死んでませんし下手したら自分から帰ってきますよ」

ナナシは苦笑いして頷いた。

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