表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
133/224

俺が中一から、頭の中で設定を作り始めたこの島だぞ!

お風呂から上がって宿泊室へと戻ると

椅子に座って寛ぐナナシの体からも湯気が出ていた。

温泉に入っていたようだ。

「……物質的な快楽というのも、時には良いものだな」

いつの間にか、地味なローブ姿になっているキャサリンがナナシのテーブル越しの椅子から、少しイライラした顔で

「……十分に待ったが……」

私たちを見つめてくる。ナンヤが邪気の無い顔で頷くと

「よし、いこー!」

元気よく、言ってきた。


温泉上がりでやる気十分のナンヤが、私のいつもの移動飛行魔法の上から、さらに虹色闘気で四人全員を覆う。

「ワープまではいかないけど、宮殿にすぐ戻れると思うよっ」

私が半信半疑ながら、天帝国の方角へと空を駆け始めると次の瞬間には、天帝国の帝都上空だった。

青空からは降り注ぐ午後の日差しが、空に浮かぶ私たちを照らしている。

「……あの、ナンヤちゃん……」

彼女は苦笑いして

「アイちゃんの力をちょっと借りたの。私の力をアイちゃんに入り込ませて操作しちゃったっ……ごめんっ」

頭を下げてくる。

「いや、いいんだけど……凄いなぁ。とにかく行こうよ」

私たち四人は、天帝国宮殿へと降下していった。


医務室に寝かされているお腹の大きなサウスは、キャサリンを見るとニカッと笑い

「面白れぇだろ?男が子供産むんだぜ?」

キャサリンは唖然とした顔で

「……なっ、何て言えばいいのか分からん。悪い、二人にしてくれないか?」

私たちに頼んできたので、とりあえず廊下へと出る。ナナシが継ぎはぎだらけの紫の頭を自ら触りながら

「……あまり、良いものではないな」

とポツリと呟いて、ナンヤも難しい顔で

「……みたいだねぇ……アイちゃん、どうするー?」

いやいきなり言われても……と思いながら

「えっと……サウスさんのお腹に宿る子供ですか?」

ナナシは軽く頷いて、涼し気な眼差しでナンヤを見る。

「えっとねー……アイちゃん、たぶん、子供産んだらサウスさん死んじゃうし、生まれる子供も、なんか狂暴な感じがするよー?というか人なのかなー……」

「どっ、どうしたら……」

予想外の言葉にオロオロしていると、ナナシが苦笑いしながら

「根本の原因を調査するべきだろうね。君は嫌だろうが」

ナンヤも腕組みして、ウンウンと頷いている。

「あーえーと……つまり、アホの創ったエロ島に向かえと……?」

世界観の違う二人が同時に頷いたので、私はその場に座り込みそうになり、どうにか踏みとどまる。

「いや、でも、あいつの領地っていうか、私が手を出したらダメって、そういう約束をですね……」

どうにか行かないでいい様にしようとごねていると、いきなり、廊下の向こうからパンツにマント姿のアホが全力疾走してきて、汗だくの坊主頭で私に詰め寄りながら

「どっ、どこに行ってたんだ!おっ、おお、また変な新キャラ連れてきたな……」

ナナシの異様な風体に一瞬気を取られ、すぐにまた私に向き直ると

「アイ!あの島はもうダメだ!消させてくれ!俺が一日かけて調教したが、もっと変な方向へと進みだした!」

私は踏みとどまっていた両ひざの力が抜けてその場に座り込んだ。

すぐにナンヤがしゃがみこんで

「だっ、だいじょうぶー?」

心配してくれる。ナナシは笑いながら

「どうも、ジョニー陛下だね。ナナシと言う。アイさんと君のお手伝いをしたい」

ジョニーはチラッとナナシを見て

「……猟奇的な見た目だな……使えるかもしれん……お前も来い!」

「私も行きたいな!興味があるよー?」

無邪気に言ってくるナンヤに私が

「あの……ついてきてほしいけど、たぶん、酷すぎる景色が待ってると思うからナンヤちゃんは、留守番してた方が……」

ナンヤは立ち上がるとプイッと後ろを向いて、頬を膨らませ

「……あのさー私を仲間外れはいけませんねー」

なんと少し怒りだした。私も立ち上がって

ジョニーとナナシに目で助けを求めるとアホが真剣な顔で

「ナンヤだったよな?ついてきてくれ。助けは一人でも多い方がいい」

「いや、止めてって意味だよ!ナンヤちゃん、純粋っぽいから、あんたの邪なエロワールド見せたくないんだって!」

ナンヤがくるっと振り向くと私に

「あのですねー。私ねー色々冒険してるんですよー?そんな子供じゃありません」

「大事なお友達を、アホのアホイメージで汚したくないの……」

いきなりニカッと笑ったナンヤはバシバシと私の背中を叩くと

「心配しないでよー。ダイジョブだよーそんな悪い感じはしないし」

もうついてくる気のようだ。大きくため息を吐いて

「分かった……で、そこのアホジョニー、どうしてほしいか少し話し合わない?」

ジョニーはブンブンと首を横に振り

「ダメだ!しょうもない会話パートで、貴重な時間を無駄にした!今すぐにいかなければ!」

ナナシが涼し気な両目で私を見つめ

「調査開始ということだな。妊娠している彼を助けるためにも行かねばな」

全然説明受けていないのに、全てを理解したような顔で言ってくる。

「はいはい……行きましょうか……ジョニー……」

ジョニーは私とナナシとナンヤを両腕広げて囲みながら触ると

「……行くぞ!エローン・エロル島へ!」

「何その島名……」

「住民たちが勝手につけてたんだからしょうがないだろ……」

ジョニーの不機嫌な言葉と共に、辺りの景色が歪んでいく。



……



生臭い……なにこの酷い臭い……。

私が両目を開けると、そこら中に簡素な皮のブラと際どい革製のショーツを着ただけの多種多様な若い女性たちが口から白い液体を吐き出して白目を剥いて横たわっている。

辺りには複数の建物があるが、藁葺き屋根の原始的な造りの小屋ばかりだ。

「えっと……どうしてこうなったの……?」

ジョニーは焦った顔で

「発射禁止にしたら、体内を逆流しだしたらしくて口から噴き出し始めたんだ……なんでそんな仕組みになってるんだ……。ふつう、出されなかったら内壁に吸収されるんだよ……ネットで読んだぞ……」

「あーえーと……つまり、あっ、サウスさんがその液体で妊娠したのは知ってる?」

ジョニーは真剣に頷いて

「アイたちを待っている間、一応、話も聞いたぞ。産みたいそうだな」

「……話し戻すけど、つまり、その股から生えているそれから出てくるものがジョニーの力で出せないようにしたら逆流して口から出るようになったと……?」

自分で纏めていて悲しい……なんでこんなことになったの……。

私、元名家の貴族で、天帝国の代理で、それでこの星の新しい支配者なのに、なんてものを見させられて、口にさせられているんだろう……。


凹んでいるとナナシが、近くで口から白い液体を流して気絶している、ぽっちゃりした小柄な女性の近くでしゃがみ、そのお腹のあたりを触りながら

「……ふむ……人ではないな。元来なら天使や悪魔となるような存在だ。そこのジョニー君の一存で、好きにできるがベースの身体はいじらない方がいいだろうね」

ジョニーがショックを受けた顔で

「そっ、そうなのか……人じゃないのか……通りで生えていると……」

ずっと黙っていたナンヤが

「……あのね?あっちのおっきな山に居る、この島の支配者は怒ってるよ?」

この集落の遠くに見えると、完全に女性の胸の二つの膨らみの形をした双子の山を指さして言ってくる。その二つの山頂の乳首部分には、曇った空から白い稲妻が落ちてきていて、その瞬間には、まるで、山頂からお乳を噴射しているように見える。

「……すごい、すごいバカ……なんでジョニーってこんなにバカなの……」

私がつい言ってしまうと、ジョニーは傷ついた顔で

「お、おい……俺が中一から、頭の中で設定を作り始めたこの島だぞ!?」

「何年もかけるなら、もっとちゃんとした設定作りなさいよ……!」

自分ではアニメに対して偉そうなことを言っているのに自分で創るものはしょうもないものしか作れないこのアホに呆れていると、ナンヤがいきなり大声で

「あの!山に支配者が!行かないと!」

気絶した女性の身体を調べていたナナシは立ち上がると

「大体、調査は終わったが、行くとしようか」

「あの、それで終わりなんですか?」

「ああ、あの妊娠した彼の腹の中身を変える方法は分かった」

ナナシは意味ありげな笑みを浮かべた。少し気になったが

「ナンヤちゃん……もう帰らない?あとはジョニーが発射禁止解除すれば、たぶん、住民たちも蘇るでしょ……アホのいい加減設定だろうし……」

ナンヤは真面目な顔で

「だめです。ジョニーさん、まーだ隠してるでしょ?」

ジョニーは急に焦った顔になり、そして諦めた感じで

「……あの、おっぱい山には……確かに、凄い、秘密がある……。支配者と言うか……とんでもない、エロ魔神が居るんだ……それに……他にも色んな変態が住む、三十二の集落がある……」

「……」

どうでもよすぎる……サウスを救う方法はもうナナシが発見したので早く帰りたい……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ