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“不死の無能”の神域超越《クロスオーバー》  作者: 大岸瑠璃
第一部 一章 異世界召喚編 追憶の復活
10/17

第九話  『絶望的混乱、狂乱、既視感』

グロ注意

■SIDE 天川一涙(イチル)


サァ―――と流れる、雨粒の音。


「――――――」


不思議なくらい静かな気分で、ゆっくりと目を開ける。頬に当たる硬い感触と、踵から後頭部にかけての刺すような冷たい感触。呆然とした手つきで頬を撫でると、手のひらに赤い液体が付着する。


比喩でもなく、赤い雨、赤い雲。


「……ここは……」


ボーっとする頭、ズキズキとした体の痛みに顔を(しか)めながら両腕に力を入れて上体を起こし、ふらつく頭を押さえながら周りを見渡した。


もう昼か……それか朝なのか。周りはそこまで暗くはない。視線の先には赤い水たまりがいくつも水を張っており、その一つのど真ん中に俺の身体は横たえられていたようだ。土が黒く、赤い水たまりと混じり合って生々しい色を作っている。


「そういえば……確か、ここは“魔界”なんだっけか……」


靄がかかったようだった頭が徐々に動き始める。


俺が無事なのは幸運か不幸か。そんな実感が全くわかない。


見渡す限りの、黒い地面。それは荒野のようでもあり、歪な木々がぽつぽつと見える。気がかりなのは、人の姿どころか動物の姿すら見当たらないことだ。魔族なんているのかと思ってしまうほどのサッパリとした風景である。


「まあ、危険はなさそう……って、そうだった。シズクがどこかに……」


そう言って視線を彷徨わせると、ほんの数メートル先の位置に目的の少女の身体が横たえられていた。見れば、水たまりに体を沈めてシズクの“最善の姿”の一端たる法衣服を濡らしている。近づいて、名を連呼しながらその体を揺すると十数秒ほどたっただろうか、うっすらと目を開けて少女は起き上がった。


「……イチル、君」

「おはよう。具合はどうだ?」

「大丈夫だと思う……ここは?」

「……アルクが言うには、魔族が住んでる場所……“魔界”らしい」

「……そっか」


頭がうまく回らないのか、シズクの返答は淡々としていた。それでも、その優しげな雰囲気はほとんど損なわれてはいない。その表情に胸が締め付けられるような思いが湧き上がる。


「ごめん……俺のせいで」


何度目か分からない謝罪の言葉を投げかけた。しかし、シズクはまたも笑ってそれを制する。



「君が謝る必要はないよ。元はと言えば、私が油断しちゃったせいだしね」


優しげな言葉は、むしろ鋭い槍のように俺の胸を突き刺した。


◇ ◇ ◇


「はっ……くしゅん!」


長時間雨に晒されていたせいか、すっかり体が冷えてしまっている。最寄りの木々の中でも最も雨を凌げそうな木を見つけて、その陰に入り込んだ。ブルブルと震えながら服を脱ぎ、上着から順に絞っていく。


粗方絞り終えると、今度は“時空の指輪”から着替えを取り出した。


「ぐっ、余分に入れておいてよ、よかったな……」


ちゃんと乾いた服を着て、その温かさにホッとする。絞った服を“時空の指輪”に戻し、木の下の比較的乾いた地面に腰を下ろした。そういえば少しお腹が空いているな。食堂からくすねたパンでも食べるか。


柔らかいパンをモサモサと口に入れ、大陸の地図を取り出しながら呆然と考える。


「これからどうしようか……」


まず、この“魔界”から出なければならない。“魔界”は魔族の生息領域。そこに留まるのは考えられない。次にここから北へ行き、アルベド王国に帰って保護を受けるのは無理。だったら、別の国へ言って、冒険者として生計を立てていく……


「……なんて考えても、無駄なんだよな」


そもそも、“再生”持ちの俺を“魔界”に送って厄介払いするためにアルクは俺をここまで送ったんだ。これで簡単に元の場所に帰ることができるなら何の意味があったんだって話になる。


「……裏切られた……いや、違うな。いらないから捨てられた、だけか……」


未だに実感がない。王国にも、ノリトにも、怒りを抱いているにはいるのだが、それは俺に力がなかったからで仕方のないことではないか、むしろ自然なことではないかと思ってしまう。力のないキャラが切り捨てられるパターンはラノベで何回も見たことはあるが、実際に自分が直面するとなるときついもんだ。


「……はは……」


無性に泣きたい気持ちになって目尻に涙が溜まり始める。その哀愁すら今は愛しく懐かしく思えて、俺は静かに涙を流していた。


「……イチル君」

「……っと、ん? 何?」


しばらく考え込んでいると、いつの間にか隣にシズクが腰を下ろしていた。慌てて涙を拭い、向き直る。反対側の方での着替えは終わったようだ。法衣服とは違うラフな服装で、思わずドキッとしてしまう。


「はい。あったかいよ」

「あ、ああ。ありがとう」


渡された石はほんのりと温かくなっており、その空気が体を包む。一瞬カイロかと思ったが、多分魔法的な何かだろう。生憎、魔法は使ったことがないし使えないから分からないが。


「……どうするの?」

「……わかんねえ」


シズクの問いに、俺はそう答えるしかない。呆然と深紅の雨を見つめていても結局答えは出ない。


「……ガク君たち、大丈夫かな……」

「あいつらは大丈夫だろ。俺と違って優秀だし」


いやみっぽくないだろうか。少し心配しながらシズクの顔を見つめていたが、シズクは顔を曇らせることもなかった。


「とりあえず、ここから出よう。話はそれからだ」

「……うん」


十分ほど暖を取り多少の食事も摂ったので出発することにする。地図はあるが方位磁針などの方角を表す道具はない。しかし、延々と赤い雲が続く空を仰ぐとかなり遠くに白い雲が見えた。分かりやすい。


「あっちの方向を進めば……多分着くんじゃないか?」

「まあ、行ってみようか」


ここが“魔界”である以上油断はできない。しかし視界も良好な上、見渡しが効くので最低限に警戒しつつ進むことにした。


途中途中休憩を入れながら歩を進める。流れる光景はまさに荒廃と言った感じだった。


黒い土に赤い雨、歪な木々。これだけ見れば世界の終わりをそのまま映し出したような光景。魔族もよくこんな場所に住めるものである。


どれほど時間がたっただろうか。


終わりの見えないその道を歩き続け、そろそろ疲れを感じてきた頃。最寄りの大きな木の陰で休憩を入れていた。水も少なく、食料も有限。今更気づいたこの事態にどう対処すべきかと水を飲みながら考えていると、反対側の木の陰のすぐ近くでドゴォッ! と激しい音がして、地が揺れた。


「……」

「……」


シズクと顔を見合わせ、硬直する。そっと顔だけ出して何事かと様子を窺うと、そこには巨大な殻が見えた。頭とそこから伸びる二本の角。前腕は大きく発達していて、この場所でのみ適応されるであろう土色の黒い殻に体を覆っている。足元には巨大な穴が開いていた。


現れたのは、トリケラトプスと飛竜(ワイバーン)を合体させたような姿の化け物。


しかも、大きさがシャレにならない。何せ、顔の部分だけで俺の身体くらいの大きさはある。赤い目は血走っており、荒い鼻息を立てるその姿はさながら獲物を探しているようだった。


すると、その背中に人影が乗っていることに気が付く。禍々しい意匠の大剣を背中に括り付け、魔術師然とした衣服で黒い肌を覆った男。同じく漆黒の耳は尖っていて、ファンタジーで言うダークエルフと言ったところだろうか。


「ふむ……この近くにいるのか? 探せ」


明らかにヤバそうな奴ではあるが、迂闊に動けない。俺たちをさがしているのだろうか。それにしてもなんでバレた?答えなんぞ出るはずもない。


ただ言えるのは、見晴らしがよいこの場所で見つからずに逃げるなんて不可能に近いことだ。この木を使って何とか乗り切るしかない。シズクとアイコンタクトで目を交わす。息を潜めてやり過ごそうとシズクと体を寄せ、身を固くした。


その瞬間、角龍(命名)がピクリとその巨体を震わせる。首をもたげ、警戒するように周囲を見渡していた。


ば、ばれてないよな……?


シズクと木に密着するように身を隠しながら、バクバクと脈打つ心臓を必死に抑える。体を通じてシズクの鼓動も聞こえてきて、どちらがどちらの鼓動なのか分からなくなってきた。


「……ちっ、邪魔なことを」


しかし、角龍が警戒したのは別の理由のようだ。


「WOWOWO!!」


唸り声と共に、俺たちの頭上……木の葉の部分から、角龍の前に緑色のゴリラのような魔物が5匹ほど現れる。緑色のゴリラは優に2mほどの体格を誇っており、体に走る蒼い線を脈々と際立たせていた。


一匹のゴリラが雄叫びをあげ角龍の方向に突撃すると、他のゴリラたちも雄叫びをあげ角龍に突っ込んでいく。木の陰から顔をのぞかせ、これなら少しは時間が稼げるかと腰を浮かせた。


だが、


「やれやれ……」


ダークエルフの男が億劫そうに首を振ると、その手を地面に翳し、何かを唱え始める。


その地面に漆黒の穴が生成され、ズブリズブリと湿った音を立てながら新たな魔物が這い上がってきた。前腕を発達させたその魔物は、緑色のゴリラと姿()()()酷似している。


しかし、色が違いすぎる。角龍に向かうゴリラは濃い目の緑色だが、這いあがってきたゴリラは真っ黒だった。しかも、両腕に加えて両脇にまた二本腕が生えている。


「WOWOWOWOOOO!!」


物々しい雄叫びを上げたと思った直後、黒ゴリラは緑ゴリラを遥かに超える速度で疾駆し、跳躍して回転、二本の拳を先頭の緑ゴリラに振り下ろした。


ズドォッ!


殴っただけでは到底出せるはずもない音を出して黒ゴリラの拳が緑ゴリラの脳天に炸裂する。すると、グシャッ! という短い音を響かせ、緑ゴリラの頭部は爆発、さらにその余剰ダメージで緑ゴリラの倒れた地面にクレーターができた。


は?


その光景に気を取られている隙に、黒ゴリラは残り四体の緑ゴリラに疾駆する。単独では勝てないと判断したのか、緑ゴリラは散開し、黒ゴリラを囲みにかかった。


しかし、その囲みより黒ゴリラのほうが速い。黒ゴリラは囲いから脱出すると、一番端の緑ゴリラの頭を地面に押さえつけて爆砕させ、腕をもぎ取ってもう一匹に投げつける。投げられた腕はドパンッ! と発砲した拳銃のような音を響かせながら、緑ゴリラの頭部に炸裂、首をあらぬ方向に捻じ曲げさせた。


最後の二匹が、雄叫びを上げながら一斉に飛び掛かる。しかし、黒ゴリラは二匹の緑ゴリラの腕をつかみ、重さなど感じさせない勢いで二匹を激突させた。二匹の緑ゴリラはそのままズルリと地面に這いつくばる。やはり、首の骨が折れてしまっているようだった。


「全く、魔王様にも逆らおうとする愚かな下等種どもが」


ダークエルフの男が吐き捨てるように緑ゴリラの骸を蹴りつける。


「……」


広がる、紫の血。それはまるで、俺と黒ゴリラが出会った先の末路のように見えた。


(イチル君、いったいどうなっ)

(ダメだ。見るな)


木の陰から乗り出そうとしたシズクを引っ込める。見て気持ちのいいものでもないし、あまり騒がれても不味いことになるだろう。

とはいえ、俺の乾いた笑みでシズクは色々と察してしまったようだが。


この一週間の訓練で“S級タレント”たるシュウトやガクの訓練風景は目にしてきた。シュウトの“超次元射手”は様々な属性を持つエネルギーの球体を『蹴り』、相手に飛ばして攻撃するという極めて単純なもの。しかし、その威力はすさまじく、属性を込めていない“無”のエネルギーの時ですら常人であれば全身粉砕骨折くらいはするだろう。


下手したらこの黒ゴリラは、そんなシュウトよりも強い。


シュウトやガクがまだ力を引き出せていないというのもあるかもしれないが、それにしても今の俺たちにとっては強すぎる。


“再生”持ちの俺はともかく、シズクは気づかれれば絶対死ぬだろう。ここは乗り切らねば、と腰を下ろす。


それが間違いだった。


パキッ


その音は理不尽なほどに大きく響く。


腰を下ろした拍子に足元の小枝が折れてしまったのだ。背中から這い上がるような冷たい感覚。額から冷汗が噴き出る。


気づかれてませんように気づかれてませんように気づかれてませんように気づかれてませんように気づかれてませんように気づかれてませんように…………心の中で連呼しながら、震える首筋を回して黒ゴリラたちを確認する。


ダークエルフの男はばっちり俺たちを見ていた。


狂喜に歪んだ笑みを向け、鮮血のように赤い目玉がこちらを捉えている。一瞬硬直したが頭の中でガンガンと鳴り響く警鐘に従い、俺は弾かれたように叫んだ!


「逃げるぞ、シズク!」

「見つけたぞ人族ゥ!」


ダークエルフの男は背中の大剣を取り出し右肩に構える。そして、腰を落とし脚にグッと力を込めた。


「すみませぇん!」

「キャッ!?」


ダークエルフの接近を本能と共に悟るとシズクに情けない声で謝りつつその体を引き寄せ、全力で後ろにダイブする。

瞬間、ダークエルフの身体が消えた。後ろに残像を残しながら、超高速で突撃したのだ。


直後、嵐のような旋風を巻き起こしながら大剣が左薙ぎに振るわれ、先ほどまで身を隠していた巨大な木が俺たちのいた空間ごと両断された。地面を揺らし、土煙を上げながら樹木が倒れる。硬い地面をシズクごとごろごろと転がりながら、10mほど吹っ飛んだところでやっと停止した。


柔らかい感触に余韻を抱く余裕もなく、シズクをすぐに体から離してダークエルフと向き合う。


幾つもの水たまりを転がったせいでせっかくの服も赤黒く汚れてしまっている。ダークエルフは余裕の表情でゆらりと立ち上がり、大剣の切っ先をこちらへ向けた。


「なんだ、結界に反応があって、人族がついに攻めてきたかときてみれば……とんだ子供ではないか。まさか、迷い込んだのか? いや、そんな馬鹿ではないだろう」

「ごめんだけど、そのまさかだよ。俺たちだって望んでここに来たわけじゃない。どうか、見逃してくれないか?」

「すまんが、そういうわけにはいかない。何しろ、人族を嬲るなんて久しぶりだ……思う存分、楽しませてもらおう」


呆れたように肩をすくめたダークエルフに、少しは対話の余地があるかと話しかけてみたが返ってきたのはさらに這いあがってくる黒ゴリラだった。


血走った眼でこちらを見つめてくる黒ゴリラ。この光景はあたかも地獄の軍勢のようである。

もう諦めるか……いや、せめてシズクは逃がそうと決意した瞬間、


「逃げて……イチル君!」

―――え、


俺の眼前で光り輝く障壁と、黒ゴリラの拳が衝突していた。

気が付けば、俺は後ろに突き飛ばされている。


「はぁっ!」


尻餅をついて呆然としながら顔を上げると、シズクは黒ゴリラに錫杖をぶつけていた。しかし、その錫杖も容易く黒ゴリラに掴まれている。


「く、ぅ……」

「WOWO」

「バカめ。それは魔王様御自らが生み出した眷属!普通の魔物とは大違いだっ!」


黒ゴリラとダークエルフがシズクの攻撃を嘲笑い、錫杖はあっけなく放られた。しかし、迫る黒ゴリラの拳をシズクは光の障壁で受け止める。

その攻防を見ながら、俺は暫し呆然としていた。


何を……シズクは何をしている?


「い、イチル君……逃げてっ!早く!」

「で、でも……」

「いいからっ!」


頭が追い付かない。なんで? なんでシズクは俺を逃がそうとする? 俺の“再生”は例え体をバラバラにされようが、消し炭にされようが治る。俺が逃げても、何の意味がある?


その混乱が、足を鈍らせる。俺が逃げるより、シズクが逃げたほうがよっぽどいいのに。


「うおおおおおおおあああああ!!」

「イチル君!?」


咆哮を上げ、黒ゴリラに突撃する。大丈夫、俺は死なないんだから。その意思を視線で送っても、シズクは分かってくれないようだった。恐怖でガクガクと震える身体に鞭打ちながら、俺は転ばないように必死に走る。


だが次の瞬間、シズクを起点に猛烈な風が吹いた。軽くはないはずの俺の身体が軽々と浮き飛ばされ、20mほど後退する。地面を転がった拍子に口に入った土を噛み締めながら、地面の土を強く握りしめた。

何で……何でだよ!! 俺じゃ足止めにもならないってか!? 怒りに顔を歪め、再び腰を上げて突撃しようとする。


だが、それは叶わなかった。


「シズッ!! …………え?」


そこには……シズクの姿は何もなかった。代わりに……複数体の黒ゴリラがその地面をたたいていた。弾けた果実のように……地面から、()()()()()()()()が弾けている。


なんでシズクがいないんだ? どうして水が噴き出しているんだ? 赤い水? 水たまり? なんでそんな水たまりを、


「っ、はぁ、はぁっ、はあ、ああ、ああああああああああ!!?」


そんな現実逃避は続くはずもない。頭を押さえて狂ったように叫び声を上げるのが精一杯。


「何をしているっ! やめろっ! や˝め˝ろ˝おおおおおおおおお―――!!」


形容しがたい吐き気が体中にぐるぐる渦巻く。弾けてしまいそうなくらい苦しかった。狂ったように雄たけびを上げて地面を叩く黒ゴリラたちに突撃する。落ちていた錫杖を拾い、巨大な肉体に思い切り叩き付けた。


「……WO?」


ハエに刺されたか、とでも言いたげにのっそりと、振り向く黒ゴリラ。その時、できた隙間から少しだけ見えてしまった。


―――破裂したニクと、散々に破れた法衣服を。


「―――」


先ほどの狂乱が嘘のように、振り上げた腕を下げる。


何も、考えられなくなった。世界が、遠くなった。世界から、色がなくなった。

守れなかった。守る力がなかった。守られることさえ……できなかった。

俺が殺した。俺が殺した。俺が殺した。あの時俺が音を立てなければ、彼女は助かった。


俺が、俺が、俺が、俺が、俺が、俺が、俺が、俺が、俺が、俺が、俺が、俺が、俺が、俺が、俺が、俺が、俺が、俺が、俺が、俺が、俺が、俺が、俺が、俺が、俺が、俺が、俺が、俺が、俺が…………。


「WOOOOOOO」

「WOOOO」

「WOOOOOOOOOO」

「WOOOOOO」

「WOOO」


黒ゴリラが、一斉に俺に殺到する。頭を潰される感覚、首が捻じ曲がる感覚、腕を折られる感覚、足が粉砕される感覚、臓物が溢れ出す感覚。


その全てが、俺への断罪のようだった。


再生する。再生する。再生する。

何度黒ゴリラたちが俺を叩き潰そうと、俺は再生し続ける。逃げられない。でもそれでいい。

彼女が受けた苦しみの数十倍……否、これから無限に、俺はその苦しみを味わい続ける。


―――その痛みに、何か既視感を覚えて。


プツンと音を立てて、何かが切れた。


「―――ぐっ、う、あああああ!!」


俺は初めて、叫んだ。痛みではない。

そして、コマ送りのように流れるそれは決して架空の物語などではない。()()()()()()


気が付けば、俺はこの言葉を呟いていた。


「―――《解放せよ(リリース)》」


瞬間、俺の意識はそこで途切れた。

最後の部分を少し修正しました。

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