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真っ赤な鮮血が地面にジワジワと広がる。未だピクピクと動く内臓や手を震えに、巡士考太は肉の塊となってしまった桃袋愛海が先ほどまで生きていたのだ、と理解する。訳も分からない、といった驚愕というか唖然の表情で転がる上半身を、巡士考太は放心しながら見つめていた。まるで両足が地面に縫い付けられたかのように動かなかった。
――そんな巡士考太が我に返ったのは、夕日シホの叫び声を聞いた時だ。
「キャー!!」
可愛らしい悲鳴ではない。心の底からの恐怖の叫びであった。巡士考太は咄嗟に夕日シホの手を取って走り出した。もう片方の手で彼女の弟、一に向ける物の距離があって握ることは無かった。
三人は反射的に駆け出す。双子から逃げるように。
双子はそれをポカン……とした表情で見送ってしまうものの、すぐにハッと我に返る。そしてニコニコと嬉しそうに笑い「鬼事だって」と口にする。顔を見合わせる双子。
「楽しめるかな?」
「楽しめるよ」
「次は誰にする?」
「あの小さい子とかどう?」
「なんだっけ?」
「たしか……『一』お兄ちゃんだよ」
「そっか」
「そうだよ」
「じゃあ、行こうか」
「うん」
テンポの良い会話を繰り広げながら、お互いに頷き合うと、双子は逃げた三人の背を見つめた。二人は同じタイミングで走り出す。パタパタ、パタパタ、と。
その速さは異様であった。まるで自転車のような速さだ。あっという間に距離を詰めてくる双子に、後方を走っていた夕日一は絶叫する。その声に、双子は嬉しそうな顔をする。
「「ねえ、遊ぼう?」」
双子はそう言って手に持っている『なわ』を夕日一の身体に絡めた。彼は咄嗟に去ってしまった姉の背に向かい手を伸ばした。
「ね……ちゃ、」
その言葉を最後に夕日一は、絡まる『なわ』に呼吸と止められ意識を失った。




