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「下」
歌が終わると同時に、双子の問いも関係なく桃袋愛海は答えた。そしてクルリッと前を向く。双子は既に準備を終えていたので嬉しそうな顔をして出迎えた。今度は交差も無く平坦に真っ直ぐであった。まるで算数の計算に使う『=』のようであった。しかし地面との距離はそこそこ近い。しかし地面に身体を付けて進めば何てことは無い。彼女も巡士考太の目論見通り、身体を地面につけ匍匐前進して『なわ』の下を通った。通り終わると彼女はパンパンッ、と砂埃を払う。白いブラウスが見事に黒々と汚れている。きっと帰ったら怒られるであろう。いやむしろその前に証拠隠滅するのではないだろうか?
双子は相変わらず淡白だ。
「じゃあ、最後だね~」
「ね~」
クスクス、双子が嫌な笑いを出し始める。何だか嫌な予感がする、巡士考太は思った。
「最後は少しルールが変わるからね」
「気を付けて選んでね」
クスクスクスクス、耳にこびりつくような嫌な笑いである。巡士考太は耳を塞ぎたい心情に駆られながらも、新しく提示されるルールを聞いた。
〈追加ルール〉
⑪なわとびが増える。
⑫鬼が増える。
⑬増えた『なわ』も鬼も透明になる。
⑭不可能な『なわ』の張り方が可能。
――これが新たに追加された項目である。しかしこの内容は圧倒的に不利がある事は明白であった。巡士考太は声を上げる。もちろん桃袋愛海もである。
「待て! それじゃあ不公平だ!」
「そうよ、縄も鬼も見えないなんて!!」
講義を上げると、鬼はまるでまたか……という様子で口を開く。
「僕たちは見えるから安心して。その他の鬼が見えないだけだから」
「それに見えなくても『なわ』はキラキラ光るから大丈夫だよ」
「「ね~」」
双子が口々に言い、最終的にはニッコリと笑って黙殺する。
「それに泣いても笑っても次で最後。むしろ窮地に追い詰められたのは僕たちなんだよ? だったら最後ぐらい僕たちを有利にしたって罰は当たらないよ。それに三択もある。その三つもある選択肢の中で僕たちが『なわ』を張っても穴はある。むしろ分が悪いのは僕たちなんだよ?」
双子のもっともな言葉に巡士考太と桃袋愛海は言葉を無くす。それと同時に巡士考太は、急に大人びた口調で話す双子に目を丸くした。全てを飲み込む双子の黒い瞳が四人を射抜く。
双子は笑う。
「「さあ、始めよう!」」
双子は笑顔で三戦目を告げた。