第一話:ロンリークリスマス:ライミッション
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『ぶっちゃけた話、マーベルシネマティックユニバースってどれから観てもいいんじゃない。いや、だってそうじゃん。普通、商売するにあたって完全に一見さんお断りにするとは思えないんだよ』
『スターウォーズのプリクエル(前日譚)三部作は言うほどつまらなくもないし実際面白いところは真面目に面白いよな』
『ワイルドスピードをMEGAMAXからしか観てないのにスカイミッションで泣いて良かったんだろうか』
最近はもっぱらこんなことを思い始めている。何故かって?映画にハマり始めたからさ。なぜここまで自分の思考に流れてきているのか。そりゃ、魅力的だしハマればハマるほど奥が深いからだろ。
だが、ひとつ問題が。さっき言ったここら辺を友達の前で言ったら「へー、藪崎って映画マニアなんだね~」と言われてしまった。違うんだよ。実は見始めたのはつい半年前なんだよ。
やめろ、そんな目で見るんじゃあない。そんな詳しくないのにめっちゃ詳しいと思われたら後に引けなくなるだろ。それにだ、だいたい大バジェットのアクション映画がほとんどだぞ、俺の観た映画って。
でも、そんなことは考え過ぎなきゃいいんだ。むしろ、これは好機と考えるべきなんじゃないか?自分がハマりそうな趣味を学んだり掘り下げる良い機会じゃないか。
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クリスマスか。この季節になるとマライア・キャリーやWham!の歌声が耳に嫌でも入ってきて強制的にクリスマスの気分にしてくれる。盛り上がるなぁ。もちろん、これは皮肉だ。
この日なのになんで俺は外でブラついいるんだ?バイトも入れず、友達を遊びに誘わずただ商店街近くの公園でコーヒーとホットドッグをたいらげている。かっこいいとでも思っているのか。ああその通り。
せめて、クリスマスの間くらいカッコつけたっていいじゃないか。なんの下心もないのに。
悴むとまではいかないが水を浴びたら温まりそうな右手で携帯を起動した。やることと言えばSNSくらいだ。どうも俺の友達は全員彼女持ちかバイト戦士のようで俺を暇にさせてくれる。そのおかげでネット上での繋がりでの友人と話すことが多い。
タイムラインを見た。思ったとおりにクリスマスを恋人と過ごすことに妬いている人たちが多い。もともとクリスマスは家族と過ごす日じゃないのか?大切な人っていうワードを恋人と勘違いしたのか。いかにも恋愛至上主義な日本人らしい勘違いだ。
とは言いつつ、こんな皮肉屋のような語り方をしている俺も人のことは言えないよな。
そして、もう一つ想定の範囲内のことが。クリスマスに観る映画についての呟きだ。恋愛という行為に逆さ張りをしていかにもアクション映画好きが喜びそうな映画をクリスマス映画として扱うこの風習。たしかにクリスマスを題材にしたアクション映画はそれなりにある。定番のダイ・ハードからリーサル・ウェポン、アメコミ映画ならバットマンリターンず、シュワちゃん主演映画ならジングル・オール・ザ・ウェイ。流石は’クリスマスの本家ということもあってジャンルが豊富だ。
でもだ、純粋にそれら作品を観たいならまだしも、ただの逆さ張りの手段として観るとしていたら。それは恐らく惨めな行為のトップ3を飾れるだろう。
止そうよ。クリスマスなんてなんの祝日でもないのに張り合うなんて。あーあー、恋人と過ごせる奴と俺にどんな差があるんだよ。
惨めだと思いつつ、自虐をしながら街を歩いていたその時、行きつけのレンタルビデオ店を見つけた。小銭があったら借りる。なかったら借りない。あった。
今のご時世、レンタルビデオ屋に行かずともネットの配信で手軽に観れる。なのにそこへ行きたくなるのはなんでだろう。行動が刷り込まれているわけでもないのに。
さて、なにを借りよう。という当然の思考をしながらたどり着いたのはアダルトビデオのコーナーののれんだった。この時期はサンタのコスチュームをした女優のビデオがはやる時期だ。だがだ、性の6時間というものをカップルがよろしくしてる最中にこっちは一人寂しく股間のホワイトクリスマスなんてあまりにも悲しすぎないか?それにいつもやってることじゃないか。せめて、クリスマスくらいはクリスマスかきなんてせずになんか特別なことをしたいよ。
そんなわけでクリスマス特集のコーナーへ赴いた。全年齢向きのコーナーの。
あー、だめだ。もう有名どころは粗方借りられているな。もう少しなんかこう変化球を攻めてみるか?
そんな独り言を出力したその時、一つのDVDのパッケージが表を向いていた。スモークという映画だ。名前なら聞いたことはある。嘘の付き方どうこうって感じの映画だとは聞いたことはある。クリスマスが題材ということも。
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家にたどり着いたのは夕方の6時だった。夕という感じを使うにはいささか暗くなり過ぎな気もするが、まぁ夕方でいいだろ。夕飯の支度をし、少しゲームをしてからこの先ほど借りてきたスモークという映画を観ることにした。なぜか、その時はいつもなら観る映画をSNSで呟くのに今日に限ってはそんな気にならなかった。性の6時間の最中だから無気力になっただけなのかと思ったが単純に気まぐれだ。
観た……クリスマス要素少なっ!というか、雰囲気が淡々でこういうノリの映画に慣れてなかったんでおもわずウトウトしちまった。なので最初の40分を二回観ちゃったよ。
でも、こういう映画もいいなぁ。ある意味日常モノだと思うんだ。人の過ごす日常ってどこかユーモラスになるときがある。この映画はそれを純粋に再現したんだと思うんだ。だからテンションが平坦なのは当然なんだよ。
劇的にしたら説明がもっとわかりやすくなるはずなのにあえて多くを語らない。これがリアルな日常を描くことを補っているんだと思う。
まぁ、作品の描き方は俺はよくわからないから後にするけど、これラストがいいなぁ。クリスマスに突然舞台が移るんだけどここに作品の良さの全てが詰まっているんじゃないか。
ある登場人物がついた嘘と行為はけっして完全に良いこととは言い難い。でも、人を傷つけない嘘もありえるんだって教えてくれた気がする。そうか、わかったぞクリスマスの過ごし方が。
たしかにクリスマスは大切な人と過ごす日だ。でも、そんな日に誰かを妬んでいちゃあ明らかに不愉快にしちまう。じゃあ、身近に大切な人がいない奴はどう過ごせばいいんだ?今わかったよ。楽しいと嘘をつけばいいんだ。皮肉抜きに、楽しいと思えるように。嘘には変わりないさ。でもクリスマスを楽しく過ごしている人たちの助けにはなり得るんじゃないのかな。もし、ここで正直に楽しく過ごしている人やクリスマスを妬んだらそれこそ人を傷つけて不愉快にしてしまう。だからこういうときは嘘をついてもいいんじゃないのかな。
はぁ、なんだかあのラストを見ると親父や母さんは元気にしてるかが気になってきたな。
……電話するか。
「あぁ、もしもし。母さん俺だよ。辰哉。うん?まぁ、そのうち実家に帰るしせっかくだからって思って。うん、元気さ。親父は?あぁ、聞こえたよ。まぁ、特に用事もなく電話したけどまぁその、メリークリスマス」
ふぅ。そういえばバットマンリターンズのラストでこんなセリフあったよな。
メリークリスマス。人々に幸あれ
遅いクリスマスだけど来年のクリスマスの過ごし方の参考になったら嬉しいな♪(BY 作者)