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18話 二人(一人と一匹?)の過去

今回書き直しに時間がかかってしまいました。

PV10万越え、ありがとうございます。


2017.11.10リュートの年齢を18にしました。

 



「リュートも疲れてるでしょ。怪我は治したしHPも回復させたけど疲労感残ってるはず」


「ガウ」


 えっとなぜか虎にスリスリされてます。懐かれた?

 アス君はぐっすり寝てしまったし、帰りたく無いけどレイディの様子も見てこないと。一応結界張りなおし、明日また来るかな。

 兄様、じゃなかった、リュートの頭を撫でるとゴロゴロ喉を鳴らす。


「リュートも寝た方がいいよ、明日また様子見に来るから無理しないで休んでてね」


「グルゥ」


 リュートはアス君にぴったり寄り添うようと前足に頭を乗せ眼を閉じる。

 すー、すーとアス君の寝息が聞こえる。毛布を掛けなおしそっと部屋を出、《ライト》を消してから《ウインドバリア》を掛け直す。これで明日の朝まで冷えることはないだろう。

 後ろ髪引かれるとはこのことか、ついなんども振り返ってしまった。


 さあ、宿に戻ってレイディにご飯あげなきゃ。まってるだろうな、拗ねてるかも。






 

 


 翌日、朝一屋台で朝食を3人分テイクアウトした。小鍋に野菜タップリポタージュスープと卵とハムのサンドイッチとマッシュポテト。途中お肉屋でソーセージを見繕い小屋に向かう。

 リュートも人と同じ物食べるって言ってたから大丈夫よね。


 あれ?昨日の小屋の前でリュートがまるまり座っていた。思わず駆け寄ってしまう。


「リュートだけ?アス君はいないの?リュートだってまだ休んでなきゃだめだよ、ヒールじゃ怪我は治ったけど失った血や体力は回復しないんだから」


 前にしゃがんで目線を合わせるとリュートは私の袖を噛んで引っ張る。


「ついてこいってこと?」


「ガウ」





 しばらく歩くと街の小綺麗な地区、割と裕福層の住宅街に来た。

 側溝をアス君が泥塗れで掃除をしていた。


「ガウ」


「あ、兄しゃま。こんな所に来ちゃダメでしゅ。あれ、オネーしゃんも?」


 オネーしゃん…ケモ耳少年から呼ばれるとまた…はっ、いかんいかん。


「一緒にご飯食べようと思ってね」


「もう終わるからしゅこしまってて」


『ご飯』ときいて嬉しそうに笑ったアス君、かわゆす。

 走って近くにいた男に声をかける。リュートとゆっくり後をついて行った。


 どうもアス君に仕事をくれたのはこの男のようだ。多分この辺の家の使用人だろう。


「お待たしぇ、今日は50ウルも貰いました」


 嬉しそうにするアス君、5ウルでパンが一個買える、しかし1時間ほどで50ウルか、子供にしても安いなと思ってたら衝撃が…


「朝から2時間も頑張ったから」


 なんですと、2時間!2時間で50ウル……ショックを受けてる私に追い打ちをかけるやつが。


「おい、坊主明日も来れるのか?」


 返事をしようとしたアス君より先に私が返事をする。


「いえ、この子が来るのは今日までです。明日からは私の手伝いをしてもらうことになっているので」


 突然声を掛けた私の方を男は驚いた顔を向ける。睨んでる私にひきつつも


「そう、か、なら他の奴に頼むさ」


 捨てセリフのようにいい、男は屋敷に入って行った。多分自分の仕事を小遣いにもならない金額で子供にさせていたんだろう。にしても安すぎる。こんな値段ではスラムの人間も引き受けないだろう。


「オネーしゃん…」


 仕事をなくして不満顔のアス君にニッコリ微笑む。


「本当よ、アス君に私のお手伝いをして欲しいの。その事もあるから戻ってご飯食べながらお話ししましょ」


 お手伝いは今考えついた。冴えてる私、これでアス君達をスラムから脱出させられるかも。


「僕川で洗って来ましゅ」


 駆け出そうとするアス君を呼び止め、小川の水は冷たいので魔法で綺麗にできると説明し《ピュリフィケイション》をかけた。リュートにもかける。


「うわっ」

「ガウッ」


 ほんのり暖かい光がアス君達を包み汚れを浄化する。





  !!!な、なんですとぉぉっ!



「しゅごい、綺麗になった」


 目の前には純白をベースに所々に黒のメッシュが入った髪にやや褐色かかった肌のキラッキラの美少年。灰色髪は汚れだった。

 リュートが白虎だったのはわかったがアス君も白虎獣人だったのね。

 愛い~~っ!思わずぎゅーっと抱きしめてしまった。


「オネーしゃん、く、苦しいでしゅ」

「ハッ、ごめんなさい、つい」


「ガウゥ」


 リュートが割って入って来た。

 いいじゃんちょっとくらい。


 



 アス君達の寝床に戻って朝ごはんにしよう。

 戸板をずらして中に入ると、そこに見知らぬ薄汚れて汚い髭面の浮浪者の様な男がいた。


「あっ」

「ガルルゥ」


 アス君が声をあげたのと同時にリュートが威嚇の唸り声をあげた。


「なんだよ、テメエら」


「それはこっちの台詞よ、ここはこの子達の場所なんだから」


「なんのこった、知らねえな、ここは前から俺が使ってるんだ、ガキなんざしらねえよ」


「毛布も、毛皮も無くなってましゅ…」


 アス君の震える声に周りを見回すが毛皮も毛布もない。

 アス君は唸るリュートにしがみついた。


「ここに置いてあった毛皮と毛布はどうしたの?」


「けっ、知らねえっつってんだろうが。毛皮も毛布もここにそんなもんはねえよ」


 汚い髭面の浮浪者の様な男が何か食べてるところをみると速攻売りやがったな。

 しかも酒瓶、朝っぱらから仕事もせず子供から取り上げたもので酒を買うとは、終わってるな此奴。


「っつ」


 アス君が変な声をあげた、あ、ヤバっ殺気(黒いオーラ)が漏れてる、ひっひっふーひっひっふー深呼吸。



「オネーしゃん…」


 アス君が震える手で私の手を握った。


「ガウガウ」


「ん、兄しゃまがここを出ようって」


 立ち上がり小汚ねえオッサンを睨みつける。


「そう、まあいいわ。ところでここの壁、魔法で作った壁だから。もうそろそろ魔力が切れる頃かしら、そうね5分もすれば砂になって崩れるから逃げたほうがいいわよ」


 ほんとはそんな魔法じゃないから崩れないけど、小汚ねえオッサンにはわかるまい。私達は身を翻し外に向かう。アス君は私と手をつないで早く出ようと引っ張る。


 アス君と手を繋いだまま小屋から少し離れた場所で立ち止まる。小汚ねえオッサンは出てこないが魔法を発動。


「《砂変化(サンドチェンジ)》からの《地震(クエイク)》」


  ズズズッズズズン!バキバキバキ!


 地鳴りと破壊音がするが知らん顔、アス君は振り向きびっくり顔、あ、かわええの。

 《サンドチェンジ》で石壁を壊したあと、クエイクで揺らしてやれば朽ちかけの小屋はあっけなく倒壊した。

 ちゃんと注意はしたから逃げなかったのは自業自得。因果応報さ。

 ほぼ朽ちた屋根の重みじゃせいぜい肋骨にヒビが入る程度の負傷だろうし。

 殺人は判定球赤くなるのでやりませんよ?


「さ、行こうか、朝ごはんは私の宿の部屋で一緒に食べましょう」


 歩きながらアス君が謝ってきた。


「ゴメンなしゃい、オネーしゃん、貸してもらった毛皮も毛布もとられた…」


「気にしなくていいのよ、あれくらい、他にもあるから」


 俯くアス君に視線を合わせる為にしゃがみこむ。

 情け無い顔をするアス君の頭を撫でる。(耳に手が当たるのは不可抗力ぅ!)

 俯いたまま今度は私にしがみついて来た。

 もう、毛布と毛皮くらい、ハグの代償として惜しくもなんともございません。


「もしかしてあの毛皮をとった人って、前にリュートを蹴った人?」


 こくんと頷くアス君。あのクソ野郎家屋の下敷きだけでは生ぬるかったか。






 

 


  宿の部屋の床に新たな毛皮(角猪)を敷きその上で朝食を食べる。器にポタージュスープをよそい、リュートの分は氷魔法の応用で冷ましてあげる。皿に置いたサンドイッチも器用に食べるな、虎形態で。

 朝食を食べ終わり、林檎を剥きながらアス君の話をきく。四季のダンジョンのおかげかこの街では季節関係なく果物が手に入る。


「1年前に村が盗賊に襲われたんでしゅ、父しゃん達は僕と兄しゃまと隣のお姉しゃんを一緒に逃がしてくれたんでしゅ。盗賊は女子供を攫うから。

 森に逃げたんだけど追いかけられて、お姉しゃんと僕を逃しょうと、兄しゃまが盗賊の気を引こうと飛び出したんだけど、そのしぇいで兄しゃまが捕まって……

 僕も逃げきれなくて、お姉しゃんだけはなんとか逃げられたと思うんでしゅ。

 気がついた時は檻の中でした。その後兄しゃまと『ショーカン』ってとこに売られたんでしゅ」


「『ショーカン』はご飯も食べしゃせてくれたけど、毎日お風呂に入れられてゴシゴシ擦られるし『仕事』は変なのだったからやだった」


『ショーカン』って商館かな?丁稚みたいな仕事だったのか、お風呂に毎日って客商売なら身綺麗にしてないといけないから普通か。林檎を両手で持ちシャクシャク食べるアス君、可愛すぎ。


「半年前『ショーカン』が火事になって、その時他のみんなと一緒に逃げたんでしゅ。『テーコク』からここまで逃げて来て最初は5人いたんだけど、みんな捕まって『コッキョー』超えられたのは僕と兄しゃまの二人だけ…」


 その時の事を思い出したのか声が少し震えている。

 リュートが立ち上がりアス君の顔を舐めた。


「兄しゃま、痛いでしゅ」


 うん、虎の舌はザラザラして舐められると痛いよね。


「馬車の荷台に紛れてここまで来たんでしゅが、兄しゃまの腕に『呪いの魔道具』がはめられていて、国境を越えたら発動しゅる仕組みだったみたい」


「ガウ」


 リュートが前脚を見せる、白い毛に紋様の様なものがある。

 闇魔法の《呪い(カース)》なら光魔法の《解呪(リムーブカース)》で祓えるかな。《呪返し(カースバック)》は魔道具製作者に行くから、魔道具つけた人の所には行かないし、この手の魔道具制作者は《呪返し返し(カースリフレクト)》を準備してたりする。


「そうだ、アス君達の住処、潰しちゃったお詫びにしばらくここで一緒に寝泊まりして欲しいの、さっき言った仕事のこともあるし」


  仕事、と言った途端にアス君の眉間にシワが寄った。


「『ショーカン』のお仕事は嫌でしゅ。『奥様(オキャク)』のおっぱいちゅーちゅーしたり、おまたぺろぺろなめさされたりなんか絶対しないでしゅ、兄しゃまもだめでしゅよ」





  ・・・



  ・・・・・




 ちょ、ちょ、ちょ、ちょ~~~~~~っと待てい!!!


 今なんつった、ちゅーちゅー?ぺろぺろ?


 ………ってまさか『ショーカン』って『商館』じゃなくて『娼館』の方かっ!

 ま・さ・か…男娼専門の娼館かぁ、えっと、この白虎は獣化してるだけで人型に戻れなくて……

 アス君美少年だし…オニーサンのリュートもきっと美少年…そこに貴族や金持ちの有閑マダムが『奥様(オキャク)』が…



「そんな…そんな仕事じゃないから。私冒険者で、エオカにはダンジョンに行くために来たの。ソロでチーム組んでないから、ポーターになってくれないかなって思ったの」


 アス君がホッとしつつも困り顔。

 リュートがこっちを見上げたと持ったら手のひらをペロリとひと舐めした。


 ・・・ぺろぺろ?


「えっと、アス君達って…何歳なのかな?」


「僕は8しゃいでしゅ、兄しゃまは18しゃいでしゅ」


「もしかして兄…リュートはお店に出てた?」


 アス君がチラリとリュートを見る。


「兄しゃまは『店』に出てひと月で『売れっ子』になったって『大旦那』が言ってました。

 そのおかげで僕が『禿(かむろ)』でいられるんだって…」


「グルルゥ」


「なに、兄しゃま、『クソ親父め!』って?」


 もしかしてリュートアス君に内緒にしてたのかな?

 え、兄さまのとこにはオッさんの客も来たと。


 …2次元のBLはいいがリアルで衆道の世界は嫌だぁぁぁ。



 ……滅せよ帝国


 orz、本当にこの体勢で崩折れた。




 う〜ん、アス君のお兄さんだからいいとこ4〜5歳上と思ったが18歳か(しかも元男娼…)

 子供と虎なので一部屋でいいかと思ったんだが。

 とりあえず《解呪(リムーブカース)》して見るか。


「僕、僕…オネーしゃんの『お仕事』したい」


 アス君がリュートの方を見て言うと、リュートが頷き頬をスリスリする。ああ、いいな、私もスリスリしたい。・・・当然アス君の方。

 リュートがこっちを向き頭を下げる。


「ガウガゥ」

「兄しゃまもお願いしましゅって」


「僕、お金貯めて『教会』で兄しゃまの呪いを解いてもらうんだ」


 アス君がリュートにしがみつく。


「そう、解呪ね。できるかどうか先ず私がやって見ていいかしら」


「オネーしゃん光魔法使えるんでしゅか」


「ええ、リュートもいいかな」












 エルが知らないだけでオルフェリアの王都にも男娼専門の娼館はあります。帝国と違って奴隷じゃないですが。

アス君の主な仕事は掃除洗濯、兄様のお世話です。ちゅーちゅーぺろぺろは兄さまに『仕事』の話を聴いただけ。


 アス (。・д・。)「店に出てする仕事ってどんなことするの?」

 兄さま |( ̄3 ̄)|「ん~、おっぱいチューチューしたりおまたぺろぺろなめたり?、全然楽しくないよ」

 アス (。・Д・。)「え~なんか不味ちょう」


 兄さまはわかりやすく説明したつもり………


 アス君はちゅーちゅーぺろぺろの話を聞いて自分が『仕事』をする夢を見てうなされたことがあります。


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