訓練開始?
「とりあえず、もう帰るね。 話は明日聞いてあげるからさ」
疲労困憊でこれ以上説明されても訳分からないし、スマホを見たら母親から着信が何件も入っていた。
「……分かった。 明日また会おう、必ず」
私はダッシュで家に向かった。
時刻は深夜0時だ。
さて、なんて言い訳しようか……
ピコピコ、ピコピコ。
「ううっ、早すぎる……」
携帯のアラームで目を覚ます。
時刻は朝の7時。
昨日は散々だった。
クドーに誘拐されるわ、母さんにめちゃくちゃ怒られるわ…… 私はただただ頭を下げることしかできなかった。
「しかも今日はスタシのバイト。 はぁ~、こんなの夏休みじゃないよ……」
歯を磨いて顔を洗い、仕度を済ませるとチャリで駅前まで向かった。
店に到着したらまずタイムカードを押す。
「おはようございます~」
ロッカーに向かうとメンバーと鉢合わせたので軽く挨拶する。
この人は先輩の水元さん。
大学1年生で、私の3つ上だ。
「何か眠そうな顔してるね」
「実は昨日、朝帰りしちゃいまして」
えっ、と少しびっくりした顔をされる。
ふっふ、一体何を想像しているのやら。
制服に着替えて開店の準備に入る。
コーヒー豆をマシーンにセットし、トーストをスライスする。
私は調理担当ではないが、こういう簡単な仕事なら任せてもらえる。
そうこうしている内に、開店の時間になった。
朝はやっぱりOLとかサラリーマンの客が多い。
「アメリカンコーヒーのミドル」
「水出しコーヒー入りました~」
何がアメリカンよ、格好つけちゃって……
「ホットコーヒー」
「暑いのにホットコーヒー入りました~…… って、クドー! 今一番忙しいんだから、後にしてよ!」
とりあえずホットコーヒーを渡し、しばらく待つように伝える。
昼休憩、店の裏に連れ出して昨日の続きを話す。
「徹夜で巨人兵の解析を行っていた。 地球で使っても問題ないレベルまで武器を調整したから、君にテストしてもらいたい」
……早速ハイレベルな会話が始まったわね。
私はこめかみをグリグリ押して、気合いを入れてから返事をした。
「一個質問なんだけど、何で巨人兵をそのまま使わないわけ?」
「理由は簡単だよ。 コントロールできない、それだけさ。 手っ取り早く、巨人兵の力を君に宿して戦うのが一番いいんだ。 それで昨日、巨人兵の滅びの槍の解析を完了させて、実際に使えるレベルに調整した」
さてさて、会話のやり取りが困難になってまいりました。
「何だか分からないから、とりあえず実物を見るわ。 バイトが終わったらそっち行くから」
「……待っている」
バイトが終わったのが5時。
今から向かったら5時30分か……
今日は無理ね。
怒られちゃうもん。