巨人兵
「うっ……」
私は目を覚ました。
どうやら頭をぶつけて気絶していたらしい。
「起きたかい。 全く…… やってくれたね」
クドーはモニターに頭を突っ込んだ状態でそうつぶやいた。
私は内心うまくいったと思った。
これで宇宙船のどこかが破損していれば、長旅はできなくなり、修理のため地球に不時着しなければならない。
「君のせいでガソリンのタンクに亀裂が入った。 このまま旅を続行するのは不可能だ」
っし!
私はガッツポーズを取った。
「じゃあ、一旦地球に帰らないといけないわね」
「……全部君の思惑通りか。 でもこれは非常にマズいよ、君たち人類にとって」
人類って……
宇宙人の負け惜しみも案外子供じみてるわね。
「はいはい、早く帰りましょ」
「……後でゆっくり話をしよう」
クドーは地球に向けて進路を取った。
スマホを操作して、着陸の体制に入る。
大気圏を抜け、出発した地点に戻ってきた。
宇宙船のステルス機能を使って、回りからは見えない状態にする。
「着いたーっ」
宇宙船から外を眺めると、時刻は夜中のようだ。
このまま帰っても怒られるし、かといって朝帰りは尚更マズい。
どうしようかと悩んでいると、クドーが声をかけてきた。
「これで僕は二度とここから出て行けなくなったわけだけど、それが何を意味するか、今から説明しよう」
クドーの顔は真剣そのものであり、その口から語られたことが冗談ではないことを物語っていた。
自分の生まれた国は戦争の真っ只中であり、自分はそこの兵士であった。
敵国に潜入して機密情報を盗み、母国に帰る途中にここに立ち寄った。
その機密情報は戦争の勝敗を左右するほど重要なものであり、自分には追っ手が迫っている。
もし連中が自分を見つけたら、ここで戦いが起こりかねない。
「最悪、機密情報もろとも地球を消し去ろうとするかも知れない」
「……えーと」
単語しか聞き取れなかった……
というか、そこら辺の女子高生だぞ、私。
「これを見てくれ」
クドーはスマホの画像を見せてきた。
そこには、SFアニメに出てきそうな、ロボットのような物が写されていた。
「これは巨人兵。 敵国が長年研究していた殺戮兵器だ」
まさか、さっきの機密情報ってこれのこと?
「追っ手は2人だけど、敵国の精鋭だ。 ここがバレるのは時間の問題だと思う」
……たった2人?
「2人だけ?」
「数で侮らない方がいいよ。 ヴァリーとミサカの名前は全宇宙に知れ渡っているから。 地球の人間なら2人だけで滅ぼせる」
ちょ、嘘つけコノヤロー…… と言いたい所だったけど、それがマジだったら相当ヤバくない?
「とにかく、この2人を倒す以外に道がないのなら、方法は一つ。 この巨人兵を君に着せる」
……あの、ついてけないっす。
作者の暴走が始まる