鳥カゴ
「私、そろそろおいとましようかな……」
やばい、そう思って宇宙船から出ようとしたが、クドーが出口に回り込んで行く手を阻む。
「なぜ出て行く? ここにいれば君の願望は叶えられる」
「ふざけないでよ。 そりゃ、漫画喫茶で一日中過ごせたら私は幸せだけど、こんな所にずっと居られるわけないでしょ」
なぜだ? と聞き返してくる。
本当に分からないのか? 家に帰らなければ親が心配するし、心配させたくもない。
そんなことをいちいち説明するのは馬鹿みたいだ。
「とにかく、通してくれないなら警察に連絡するわ」
「無駄だ。もうこの宇宙船は地球を離れた」
……嘘。
私は床にへたり込んでしまった。
しばらく放心状態だったが、私は気を取り直して立ち上がった。
引き返すように説得するんだ。
部屋の中を散策すると、扉を発見した。
ガチャリ、と扉を押すと、スッキリとした部屋が現れた。
クドーもいる。
「ねぇ、本当にお願い。 地球に帰して」
「僕の気は変わらない」
随分自分勝手な宇宙人だ。
こんなやつとずっと一緒なんてあり得ない。
「あなたには猫がいるじゃない。 それに、一体どこに向かっているの?」
「目的地は次の惑星だけど、辿り着くまでに50年はかかるんだ。 猫の寿命は短いから、人間がちょうど良かった」
……50年ですって!?
何でこんなやつのために一生を捧げなきゃいけないのよ!
……しかし、怒鳴り散らした所でこいつの気が変わることはなさそうだ。
クドーが寝ている隙にでも、行き先を変更しちゃえばいいわ。
問題は、どうやって宇宙船を操縦したらいいのか。
「この宇宙船はどうやって動かしてるの?」
「この宇宙船は惑星の回りを飛んでいる隕石にアームで抱きつくようにして捕まって、離脱するときだけエンジンを噴かす。 そういう風にして飛んでいる」
……なるほど。
となれば、まずはそのアームの使い方をマスターしなければならない。
「クドー、私にやり方教えてよ」