猫との遭遇
翌日、バイトは休みだったので、市民プールに行くことにした。
自転車で風を切って進んでいくと、チラっとあるものが目に入った。
そこにいたのは青い色をした猫で、品種は確かロシアンブルーだ。
私は一旦自転車を路肩に止めて、近づいた。
猫はこちらを一瞥し、脇の林へと姿をくらませた。
「あ…… まって!」
写メを撮ろうとしたのだが、それより早く逃げられてしまった。
別に、急いでプールに行く必要はないか、そう思って猫を追っていくと、見失ってしまった。
「あれっ?」
素早い動きで逃げられたか?
猫が消えた辺りをよく見ると、異変に気付いた。
その一帯だけ、なぜか景色が歪んでいる。
「んんっ?」
目をこすってもう一度見るが、まるでレンズ越しに景色を見てるようだ。
光を屈折する、透明な何かがそこに存在している。
「何なのこれ……」
コツ、コツ、と音を鳴らして材質を確かめてみる。
石をぶつけたら分かるかも? と、そこら辺に落ちている小石を投げつけてみた。
キイーーーンという金属音。
「写メにとっとこ」
そう思ってスマホを取り出した時だった。
「君は……」
現れたのはスタシで変な質問をしてきたあの客だった。
裏に隠れていたのか?
足元にさっきの猫がいる。
「何でここが分かったの?」
「あ、その…… 猫を追いかけてたらここに辿り着いて」
「僕の飼い猫だよ。 一人でさみしかったのと、あんまり鳴かないから好きなんだ」
そうだったのか……
それにしても、不可解なことばかりだ。
「ねえ、この透明は何?」
「……秘密を守れるなら教えてもいいよ。 どうする?」
「私、口は堅いのよ」
写メで撮って友達に見せびらかすつもりだったけど……
「じゃあ教えてあげるよ。 これは僕の宇宙船だ」
「ほんとに宇宙船なの? 証拠は?」
「中に入ってみれば分かる」
私が躊躇していると、痺れを切らしたのか、男はポケットからスマホを取り出して何やら操作を始めた。
「これで信じてくれる?」
目の前に、銀色の円盤が現れた。
「正真正銘、宇宙船だよ」
透明にしていたのは、宇宙船を隠すためだったのか。
ということは、この人は宇宙人……?
私は好奇心から中に入ってみることにした。
「お邪魔しまーす…… って、広っ!」
宇宙船の外見と、中の広さが合っていない。
まるで、別空間とつながっているようだ。
「僕の名前はクドー。 今少し困っている」
このクドーって宇宙人は、見たた目は私と同じ人間のように見える。
別に変身しているのかしら……?
クドーは現状を説明し始めた。