表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/14

現実

 夕方、店を出るとクドーが待っていた。


「あ、待ってたんだ」


 私を誘い出す方法を思いついたのだろうか?

どんな手を使ってその気にさせてくるのか、少し楽しみだ。


「……色々考えてみたよ。 そして手っ取り早く君をその気にさせる方法を思いついた。 これを見てくれ」


 クドーはスマホを手渡してきた。

街中の動画か?

辺りは粉塵に包まれ、視界はかなり悪く、撮影している場所がどこなのか検討もつかない。


「再生してみてくれ」


 言われた通り再生してみる。

すると、スマホから悲鳴のようなものが聞こえてきた。


「えっ…… 何よこれ……」


 手ブレが激しく、撮影してる人は何かから逃げているみたいだ。

途中振り返ると、後ろを走っていた男から血が噴き出た。


「……クソッ」


 撮影している本人の声だ。

戦争ものの映画か?

私はそのシーンを見て動画を止めた。


「何の悪ふざけ? ムードのムの字も出てないけど」


「その動画は戦争の様子だよ。 実際に僕の国で起こっているね」


 ……!

じゃあ、さっき血を噴いて倒れた人って……

私は急に吐き気を覚え、その場に嘔吐く。


「君は平和な環境で育ってきたから、戦争というものを知らない。 この動画のようなことが今から地球で行われるんだ」


 嘘でしょ……

てか、こんなの完全に脅しじゃない……

それでも、私の浮かれた気分は完全に冷めていた。


「……明日はバイトがないから、戦い方を教えて」


「この前の雑木林に来てくれ。 場所はロシアンブルーが案内するよ」







 夏休みも気がつけば10日が経過していた。

私は自転車で雑木林に向かっていたが、踏み込むペダルはやけに重い。


「はぁ、想像してた展開と全然違うんだけど」


 内心クドーがデートに誘い出してくれるのを期待していた。

そして、私を説得するために私の願望を全て叶えてくれる。

しかし、その妄想は霧散した。

昨日の動画で現実に引き戻されてしまった。


 雑木林に到着し、自転車を脇に止める。

まるで私を待っていたかのように、ロシアンブルーが行儀よく座っていた。






 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ