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勇者が倒せない!  作者: お終い
第一章
8/12

魔王のおしごと

 キューちゃんとウルフはその後朝までヘラの魔王城で二人で飲み明かした。


 そして二人はお昼ごろにハーデスの魔王城に戻った。ウルフとキューちゃんは「そろそろ二人が心配だ」ということで戻ってきたのだ。

 でもハーデスの魔王城では予想に反して、いや予想道理にいつものハーデスとヘラがいた。

 因みにハーデスのいつも道理とは、壁に上半身がめり込んでいる状態のことだ。そしてそのハーデスの隣には鎧をつけた下半身がめり込んでいた。

 キューちゃんとウルフはすぐにこの状況を理解することができた。

 自称勇者が魔王城にやってくる。ハーデスは大好きな姉の前でカッコイイ姿を見せようと勇者と闘うも、当然のように瞬殺されて壁にめり込む。それを見てブチギレたヘラが勇者を瞬殺して壁にめり込ませる。そして今、ヘラがハーデスを壁から引き抜こうとしている所。という状況を二秒ほどで二人のお付きは理解した。

「戻りましたよ」

 ウルフが呆れたようにヘラに声をかける。

 チッ

 今更主人が舌打ちしたくらいでウルフはつっかからない、というかつっかかれない。

 昔ウルフがヘラのお付きになったばかりのころ、ヘラが自分にむかってした舌打ちを指摘しただけで全治四か月の大怪我をした。

 数えだしたらキリがないが、ウルフはヘラに何度も大怪我を負わされてきた。自分でもよくお付きを辞めなかったなと思うほどに。

「そろそろ仕事の方に戻らないとサタン様に怒られますよ」

 一瞬ヘラの体がビクンと反応したが、ヘラはウルフの言葉を無視する。

「今仕事に戻ればサタン様に怒られないで済みますよ」

 大魔王サタンとはそんなにも怖いのだろうか、あのヘラが一度渋ったものの文句も言わずに自分の城に戻って行った。

 大魔王サタンについては後々説明があるだろう。


「さ、ハーデス様も仕事しますよ。書類が溜まってますので」

「やだ」

 ハーデスは文句を言いながらも引きずられながら自分の仕事部屋に連れていかれた。



 ここで今までほとんど説明のなかった魔王の仕事とお付きの仕事を少し見てみよう。

 まずは魔王の仕事。魔王だからと言って偉そうにふんぞり返って勇者と闘っていればいいというわけではない。まずは魔王城の経費の管理、これは実は魔王の仕事だ。食費、水道代、電気代、ガス代、修理費、タロウの餌代、従業員(キューちゃん)の給料、自分のお小遣い、国の警備の強化等々。一ヶ月にかかるお金を全て計算して大魔王に提出しなければならない。

 魔王の収入源は多数あるが、一番メインは他の魔族からの税金だ。因みにヘラは趣味で家庭菜園をやっていて育てた野菜を他の魔族に売っている。

 そして年に一度の魔王集会。魔王三人衆と大魔王の報告会だ。これには勿論お付き達も参加する。

 それと勿論魔王城にやってきた勇者たちの相手もしなければいけない。各魔王城によって差はあるが、やってくる勇者の数は自称を含め約百人~から二百人程度だ。勿論九割が自称勇者で、本物の勇者がやってくることはどの魔王城でも多くはない。

 魔王の仕事は大まかに説明すればこんな感じだ。


 続いてお付きの仕事、魔王の身の回りの世話がメインだ。そのほかに年に一度の魔王集会用の資料の作成や、魔王と勇者の闘いの記録などがある。

 ハーデスに仕えているキューちゃんだけは、ハーデスが勇者と闘うときに必ず一対一になるように入場の制限をしたりする。なぜならハーデスが弱いから。一対複数だとハーデスが殺される確率が高くなってしまうから。勇者が一人なら、ハーデスが殺されかけてもキューちゃんが止めに入る事が出来る。

 勿論ウルフは止めに入ったりなんかしないし、入場制限もしない。なぜならヘラは強いし、なによりウルフ自身がめんどくさいから。

 因みにペットであるケルベロスのタロウには当然仕事がない。しいて言うならば、仕事で疲れているハーデスを癒すことくらいか。

 余談になるが、魔王を倒した時に手に入るバッジの模様はその魔王城にいる動物をモチーフにしている。ハーデスの場合はケルベロス、ヘラの場合は勿論ケルベロスではない。

 余談ついでにお付きの者がどうやって選ばれるか説明しておこう。選出方法は大きく分けて二つある。指名制と志願制だ。指名制はお店でお気に入りの女の子を指名するがごとく、魔王自身が自分のお付きにする魔族を自ら探してお願いするのだ。勿論『お願い』なので頼まれた魔族は拒否することができる。拒否したからといって罰があるわけではないので嫌な人は普通に拒否する。因みにハーデスは五十人の魔族に拒否された。

「五十人にも拒否されたのかよww」と笑うまえに、むしろ豆腐メンタルであるハーデスが拒否されても五十人に声をかけたと褒めてあげるべきだろう。

 五十一人目に声かけたのがキューちゃん(無職家なし)で彼女は「やっと働ける」と涙を流しながら喜んで今に至る、といった感じである。


 当然のようにヘラの場合は志願制だ。志願してきた魔族はなんと二千五百人、あの美貌なら沢山の魔族が志願してくるのも頷ける。因みにハーデスの場合はゼロだったので自らお願いしたのだ。

 なんでウルフをお付きにしたのかはヘラ本人しか知らない。ウルフにもハーデスにも教えてないのだ。


 魔王の仕事とは想像以上に普通で、想像道理ハーデスは人望なんてないのだ。それでもハーデスは魔王なのだ。

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