魔王集会です
「明日は魔王集会ですよ」
キューちゃんの突然の宣告にハーデスはご飯の入っていたお茶碗を落とした。
キューちゃんの方に目を向けてそれは本当か? とハーデスは声に出さずに、訴える。
本当です、と彼女は声に出さなかったがハーデスにはしっかりと伝わった。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
ハーデスの悲しき叫びは城中に響いた。
一応魔王ともあろう者が泣き叫びだだをこねるのはいかがなものか? まるでおもちゃをねだる子供のように手足をバタバタさせる。すぐにキューちゃんに黙らされるが。
「もうちょっと優しく止めてよ、…いてて……」
「5%くらいしか力出してませんが」
ハーデスはこのバカ力め…と思ったが、また殴られそうなので口に出さなかった。
ハーデスは渋々明日のために準備をし出した。一応スーツと革靴を出してタロウの首輪とリードを用意した。明日の書類に軽く目を通してから通常業務に戻る。
ハーデスはテキトーな性格なのでこの程度で終わりなのだ。
キューちゃんは自分の準備をして終わり、というわけではない。数十枚の書類とお茶菓子、タロウのエサとおもちゃ等々。お付きと言うのは結構大変なのだ。
魔王集会の会場は大魔王の、つまりハーデスの父親の城で行う。移動には専用の車を使う。勿論運転手はキューちゃんだ。
今まであまり説明がなかったが、この世界の交通の便はかなり発達している。車や船、飛行機に電車(のような物)が走っている。昔は、ハーデスやヘラが生まれるよりずっとずっと昔は人間と魔族が協力して世界を豊かにしようとしていた為である。
「早く乗って下さい。おいて行きますよ」
キューちゃんにせかされてハーデスは急いで助手席に乗る。タロウは後部座席だ。
大体移動にかかる時間は二時間くらいだ。
城には『~close~また来てね(=゜ω゜)ノ』と書いてある立て札を置いてある。これを見た勇者は何故か素直に帰って行く。みんなカフェ気分できているのだろうか。
ハーデスは移動中はほぼ寝てる。起きた時は大体トイレか腹が減ったかのどっちかだ。
ハーデスにとってはあっという間に、キューちゃんとタロウにとっては二時間の旅を終えて大魔王の城に到着した。
二人と一匹は迷うことなく城の中を歩いてく。
「おっひさー」
なんとも軽い挨拶したのはこの城に務めるメイドのベリーだ。彼女はサキュバスであり、キューちゃんの双子の姉だ。彼女たちは本当に瓜二つだ。少し垂れ目で瞳の色が綺麗な水色なのがベリーだ。反対に釣り目で紅の瞳なのがキューちゃんだ。
最初の頃はハーデスも二人の見分けがつかなかった。
「ベリー、久しぶり」
キューちゃんはニッコリ笑ってから小さく手を振った。
「みんなまだなので奥の部屋で待っててください」
大きな門のようなドアを開けると天井が吹き抜けになっているとてつもなく広い『大魔王の間』が広がっている。そこはハーデスの城の大広間よりもはるかに広い。その部屋の奥は僅か五段のみの低い階段があり、ほかの場所より少しばかり高くなっている。そしてそこには黒くて禍々しい大きなイスが置いてある。背もたれは大きな赤い角が両端から伸びている。その二本の角の内右側の角をイスの中にしまうように押すと、奥の居住スペースへの隠し扉が開く。因みにその隠し扉はイスの左側にある。
ドアの奥には普通の家のような廊下、少し進んだ右側には少し広めな普通のリビングダイニングキッチン。左側には普通の家にしては広い会議室、およそ三十畳。そして会議室の横にはサタンの趣味で温泉が引いてある。露天風呂と屋内風呂が一つづつ。露天風呂の隣にトイレがある。そして廊下の突き当りには二階へ続く階段がある。二階にはサタンの部屋とサタンのお付きの部屋、そして三兄弟の部屋が一つづつある。因みにベリーは通いなので住んでいない。
ハーデスとキューちゃんは会議室に入りいつもの席に座る。そして十分後、ヘラとウルフが入ってきた。ヘラは入ってきて速攻でハーデスの隣に座る。因みにお付きは主人の後ろに立つ決まりになっている。
そしてさらに十分後、身長が百五十センチくらいの角の生えた少年と眼鏡をかけた黒いストレートの髪の女性が入ってきた。
「オッス」
少年が顔の横辺りに手をあげてけだるそうにそう言った。
「久しぶり、ルシ兄。それとパイソンも」
身長が百五十センチくらいで肩まであるぼさぼさの茶色の髪の毛、そしてその頭の両脇から生えている立派な角。そう、彼は魔王の一人でハーデスやヘラの兄でもあるルシファーなのだ。
ぱっちりとした目に高い鼻、口が裂けているんじゃないかと思うほどの大きな口からは鋭い牙が見える。(アクセサリーショップで千三百オルで購入。)
輪郭は綺麗な逆三角形だ。
因みにこう見えてサタンを除く三人の魔王の中で一番力が強い。魔術も体術も彼に勝てるのは恐らく全魔族の中でもサタンくらいだろう。なんとなく予想は出来ると思うが禁句は『チビ』と『ガキ』。これを言った者は基本死にかける。流石に殺しはしない。正確はおおざっぱでテキトー。服装は今はスーツだが。好きな物はスポーツ全般とヘラ、嫌いなものはハーデス。ハーデスが嫌いな理由は自分が大好きなヘラが自分よりハーデスの事を好いているから、つまり嫉妬だ。シスコンだ。
もう一人のパイソンと呼ばれた女性は基本おしとやかな性格で争いは好まない。でもいざ戦うとなるとその特殊な眼鏡をはずす。すると黒く長い髪はすべて漆黒の蛇に変わり、彼女の切れ長の目を見つめてしまった者は体が石になってしまう。彼女はメドゥーサなのだ。高い鼻と桜色の綺麗な唇の小さな口。
ルシファーは迷うことなくヘラの隣に座る。ヘラはハーデスの事を嫌っているルシファーをあまり良く思ってない。ヘラが小さく舌打ちをした。
「はいはいみんな静かに。そろそろサタン君が来るよ。」
そう言いながら部屋に入ってきたのはサタンのお付きであり妻の、つまり三人の魔王の母親であるヴァンパイアのブラッドだ。身長は三人の魔王の中で一番背が高いハーデスよりも高く、太ってもなく痩せすぎでもないモデル顔負けの体系だ。腰まである黒く長い髪に赤い瞳と切れ長の目、鼻は高く色っぽい艶のある桜色の唇の隙間からは鋭い牙が覗く。(これは自前。)
ヴァンパイアと言うとニンニクが苦手、十字架が苦手、日の光が苦手、水が苦手、など弱点が多く一般的にはあまり強いイメージはないだろう。だがそれはほとんどが間違いだ。ニンニクは普通に食べるし十字架を見てもなんともない、日の光が出ている昼間だって普通に行動する。ただ泳ぎは得意ではないので、水が苦手と言うのはその通りだろう。それに血を吸う事で量によって身体能力が上昇する。つまり魔王程(ハーデスは除く)ではないものの、十分強いのだ。
「ちゃ――――――っす!!!」
とんでもなく高いテンションの頭に角の生えたおっさんが、全魔族を統治する大魔王サタン、その人だ。
短いツンツンの髪にぼさぼさに伸びた髭、少し丸い輪郭で頭の両脇に二本の角が生えている。わりとぱっちりした目と若干低い鼻と「プール入ってたの?」と言いたくなるような紫色の唇、歯だけがきれいなのが少しムカつく。身長はブラッドよりも高く、鎧を着ているのか思うほどのムキムキの筋肉。見た目からして強そうだ。
「はいじゃあみんな揃ったんでね、恒例の……BBQ大会を始めたいと思いまーす!!!」
「「「ウェ―――――イ!!」」」
「じゃないでしょ!!」
サタンがボケて、その他がノッて、ブラッドがツッコミ、お決まりだ。
「はいじゃあ気を取り直してもう一度、これから魔王集会を始めまーす」




