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エクス:リミッター  作者: シゲ作
8/11

第一章 旅立ち 第8部 蟻と獣

夏風邪でしょうか?大分熱っぽいです。

みなさんもお気をつけください。

それでは第8部です^ - ^


翌朝、ルースとライオは試合の影響を引きずる事なく起床し、お互いに昨日の感想を言いながら、野営の後片付けをしていく。



「それにしたってルースの動きは速ぇよなぁ、…おまけに不規則に刀ブンブン振ってくるから当てづらいし、避けづらい。正直やりにくかったぜ。」


「よく言うよ。ライオの方だってなんだあの馬鹿力?しかも、こっちの太刀筋を勘で避けていくなんて本当に人間かよ。」


「失礼な!!れっきとした人間だ!」



軽く冗談を言いながら作業を進めていき、しばらくして出発できるようになると2人の下に自分の準備が終えたアリスが歩いてくる。



「ライオさん、ルース君。おはようございます。」


「おはよ!姉貴。」


「おはようございます。アリスさん。」



長い金髪のサラサラストレートをなびかせながら朝の挨拶をしてくるアリス。



「昨日は、良く眠れましたか?」


「ええ、問題ないですね。」


「バッチリだぜ!姉貴。今すぐにでも戦える!」



『それは良かったです。』と返答したアリスが2人を『朝食の準備が整ったので食べましょう。』と誘い、昨日食事をした様に3人で朝食を囲みながら座る。


食事の際の会話は、主に昨日の試合と今日の討伐時の作戦についてだった。



「お2人とも、昨日は楽しそうでしたね。」


「まぁなー。あんだけ力だせる相手なんて、姉貴と親父以外じゃ今まで居なかったからなー。」


「俺はじっちゃんが死んでからは、山奥に住んでいたおかげで対人戦闘の経験がほとんどありませんでしたからね。いい勉強になりました。」



『魔獣並みの勘の良さの相手でしたが。』とルースが付け加えると、ライオの『ひでぇ!』と言った叫びで場が和み食事が進んでいく。


そして、ひとしきり昨日の話をした後今日の討伐に向けての話に移行する。



「ここから、残り2~3時間程歩けば恐らく今回の討伐対象であるマーリーアントが出没する区間に入ります。その際に細かくお話する事は出来ませんのでここで話しておきたいと思います。」



先ほどまでの朗らかな笑顔とは裏腹に、秀麗な顔を引き締めたアリスが続けて話す。



「先日お話しした通り、今回はお2人で討伐を完遂するようにしてください。本来であれば私も参加して討伐の可能性を上げるべきでしょうが、これは修行の一環でもあります。」



アリスの話を、同じく表情を引き締めながら聞くルースとライオ。



「マーリーアントはある程度の強さを持っているとはいえ、話を聞く限り恐らく〈魔獣〉へと進化しているでしょう。本来ならば魔獣クラスをたった2人で討伐など、並の冒険者では無理な事……ですが、お2人が編入する予定の学園にはそんな事は当たり前に出来てしまう人たちばかりが集まった場所です。この程度で手こずっていては学園で生き残る事など出来ないと思ってください。」



『但し…』とアリスが続け、



「昨日のお2人の試合を見る限り余程の事が起こらない限り大丈夫でしょう。」



と締め括り、いつもの笑顔に戻るアリス。それを見て、ルース達も表情を緩める。



「〈魔獣〉かぁ……。俺は相手した事は無いけど、ルースはあるのか?」


「ああ。森に住んでいる時に数えれる程度だがな、後はレグルスに向かう途中にマーリーアントの〈魔獣〉と遭遇したな。」


「マジかよ?!」


「…まぁな。だが、今回のよりも恐らく俺が以前戦った奴は弱いはずだ、何せ只硬いだけで、『口から強酸』なんて芸当してこなかったからな。」



淡々と語るルースに、ライオは既に魔獣との交戦経験があるルースに驚き、アリスは興味深そうにルースを見ながら質問する。



「ルース君はその魔獣を今までどうやって倒してきたのですか?」


「どう?……とは?」


「……いえ、先日ルース君が暮らして居た森の場所を教えてもらいましたが、あそこは〈魔物〉でもかなり危険な個体が出現する森です。加えて、それらの〈魔獣〉ともなれば早々に手出しができる様なレベルの相手では無いと思ったものですから。」


「普通ですよ。じっちゃんから教えてもらった刀術と、昨日の試合でも見せた〈雷〉の魔法で倒していました。」



暗に『何か隠してませんか?』とアリスに聞かれていると思ったルースはすぐさま、用意していたかの様な返答で答える。



(アリスさんってライオとはまた、違った意味で勘が鋭そうだな……。ま、じっちゃんから『あれ』の事は出来るだけ黙っておけって言われてるから今はまだ…な。)



『そうですか。』と大人しく引くアリスに代わり、今度はライオがルースに話しかけてきた。



「そういやぁ、ルースは昨日は〈雷〉使ってたけどよ、他の属性は使えるのか?」


「一応、〈風〉も使えるな。」




魔法の属性


魔力を持つ者が使える〈魔法〉には〈属性〉と呼ばれるものがあり、大きく分けて3つに分類される。


まず、〈光の3属性〉と呼ばれる、

【火】【水】【風】

次に〈闇の3属性〉と呼ばれる、

【地】【雷】【氷】

そして、これらに属さない

【癒】

がある。


さらに、これは〈下位属性〉と呼ばれるもので各属性それぞれに〈上位属性〉というものも存在する。


〈魔法〉を使用する際には詠唱と呼ばれるものが必要無いかわりに行使する魔法の属性に対応する〈精霊〉に魔力を渡し、初めて魔法が発動する仕組みになっている。

また、上位属性の魔法を使用するには各属性の名のある〈精霊〉との契約をしなければ使用出来ない。


また、〈魔力〉を持つ人間が複数の属性を使用する事は可能だが、それには他の属性に適応しているかどうかの条件と、本人のたゆまない努力と修行が必要になってくる。


とはいえ、複数の属性を使用出来るのはそこまで珍しい事ではない、が。

適応する属性の〈数〉が多ければそれだけ有望な〈エクス使い〉であるというのは間違いない。





「ま、俺も一応って感じだけど〈地〉も使えるぜ、まだ攻撃には使えないけどな。」


「俺もだ、まだ修行中だしな。ほとんど攻撃に〈風〉は使えない。出来て小範囲の探索と短時間の飛行くらいだな。」


「そんだけ出来るならまだいいぜ……、俺なんかまだ砂場をちょろっと弄るくらいしか出来ないっての……。」



ルースの発言にライオが若干げんなりしつつも、昨日よりもお互いの事を知れた2人はその後も自身が使える魔法の事で会話を広げていく。



「ぶっちゃけ、〈雷〉ってどうなんだ?」


「どう?っていうのは?」


「いや、ほら。使い安さとかその辺りの事なんだけどよ。実際俺が使える〈火〉は全部【創造武具】で使っちまってるから、例えば、火球を作って飛ばす…なんて事は出来ないからな。完全に接近戦オンリーでの使用しかできないわけよ。んで、ルースも刀使うからメインは接近戦だろ?2人とも近接戦闘だと厳しくないかなーって思ってな。」



(……ライオも割と考えてるんだな。)



言葉には出さず失礼な事を考えていたルースだが、



「その辺りは問題ないな。俺は距離に応じて使い分けができるくらいには使える。近距離なら、昨日も使った〈雷刃〉があるし、中、遠距離にも対応した技がある。」


「そっか。なら今日は基本的に俺が前衛でルースがその後ろ…って具合で隊列組めばいいか。」


「ああ、それが1番効率的だからな、それでいこう。」



あらかた話を終えた3人は後片付けをした後、再び軽く身支度を整えアリスの『では、行きましょうか。』の声に従い目的の場所まで歩き出した。





そろそろ昼に差し掛かろうかという時間、野営地点を出発した3人は今、生い茂った草に身も隠しながらじっと待っていた。


そして……。



(来ました。)



小さくつぶやく様な声でそう口を開いたアリスであったが、逃さずその声を聞いたルースとライオはアリスと同じ方向を見る。そこには…全長5m程の巨大なマーリーアントが姿を現した。


巨大なマーリーアントは餌を探す様に頭振り、動く獲物を逃さないよう注意深く進んでいた。



(で、でかいな……。ルース…本当にあんなのと戦ったのかよ。)


(いや、俺が戦った奴はせいぜい3mくらいのやつだ。多分〈魔獣〉になって間もなかったんだろうな。)


『それでもでけぇな。』と小声で喋るライオにアリスが注意をする。



(あまりお喋りをしてる暇はありませんよ、ライオさん。さぁ、お2人共のタイミングでいいですから、行って来てください。)



そう言われたライオは顔を引き締め直し、ルースに向き直りタイミングを知らせる為に手で『3』を作り合図し、それに声も出さず頷くルース。


ライオが指を一つずつ折り曲げ、2人が飛び出すタイミングを合わせる。


(3……2……1……ゼロ!!)


ガサっ!!と草葉から飛び出し目標に向かって走っていく。とまず、最初にライオが『創造武具』を発動させる。



「アグニっ!!!」



ライオの両腕に赤い手甲が装着され、次いで飛び出したルースがマーリーアントを射程内に捉えた瞬間、魔力を一気に〈雷〉の精霊に渡し、魔法を放つ。



「紫電!!!」



左手から伸びる青白い雷の閃光、それがバチバチと音を鳴らして走り、ライオの横を通った後にマーリーアントに着弾する。



ドォオオオオオン!!!



寸分違わずに、ルースが放った雷の一撃はマーリーアントの横腹に命中し、爆音を上げる。

爆煙がマーリーアントを包む中、赤いの手甲を纏った右手を振り下ろすライオ。



「うらぁああああ!!!」



ドォオオオオオン!!


直後、先ほどの雷の一撃『紫電』と同等の爆音が響き煙が上がる。

警戒する為に途中で足を止めたルースの下に、一撃見舞ったライオが背面ジャンプで戻ってくる。



「どーだ!!!効いただろ?!」



と言いながらも警戒を解かないライオ。ルースもまた刀を抜きながら警戒をする。


晴れる爆煙……その中に…。


足の何本かが爆散した状態のマーリーアントが立っていた。



「うっし!!!効いてる!ドンドン行くぜぇーーー!!!」



爆煙が晴れたと同時にこちらに向き直したマーリーアントに向かってライオが突っ込んで行く。

それを見越していたかの様にすぐ様魔力を溜め、再度精霊に渡して援護するルース。



「オラオラオラぁあああ!!」



両腕を交互に殴りつけ、マーリーアントの口撃を避けながら自身の攻撃を当てるライオ。


その時…。



「っ?!ライオ!!少し仰け反った!多分〈強酸〉だ!避けろよ!!」


「っ!…あいよっ!!」



返事を返したライオはマーリーアントの強酸をひらりと躱し、再度殴りかかる。



「やっぱりあいつ獣だな。」



ライオの攻撃の合間を縫って紫電を放つルースはそんな事を口にしていた。


ライオの爆発を伴う攻撃、ルースの爆発の間を縫うように繰り出される魔法。


それらをマーリーアントの口撃をかいくぐりながら休むことなく続けていく。


そして…



「こぉれでぇ!!終わりだぁああ!!」



ライオが、渾身の力を溜めて右腕を最後の一撃と言わんばかり振り下ろし、激しい爆発が起きた。



爆煙が舞い、しばらく静観していた2人が見たものは……。


断末の叫びすらあげることなく朽ちたマーリーアントの姿だった。






数分警戒した後、マーリーアントが動く気配がないことを確認した2人が互いに近づき、拳を合わせて勝利を確信した。



「やったぜ!!ルース!!〈魔獣〉討伐完了だ!!」


「ああ、お疲れ。今回はほとんどライオにもってかれたな。」


「いやいや!ここは2人の勝利だろ!」



戦闘が終わり、アリスの下へ帰る2人。

その2人をやはり天使の様な笑顔で迎えるアリスの姿があった。



「お2人とも、お疲れさまでした。お見事でしたよ。」


「いやー!最初はデカさにビビったけど、割と対したことなかったぜ……っとと。」


「おい。大丈夫か?しっかりしろ。」



軽口を叩いていたライオが、よろけるのを、片手で腕を掴みながら支えるルースにライオが『ちょろっと力使い過ぎたかな』と言った瞬間……



ルースは背後に気配を感じ振り返る。



「……?……っ!!」



振り返った視線の先、そこには……




先ほどのマーリーアント以上の大きさを持つ、〈ある〉魔獣がこちらへ歩いてきていた。






今回はライオの活躍でしたが、次回はルースが無双!!する予定です。^o^

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