表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/5

CANDYPOP3『白土さん』

CANDYPOP3『白土さん』




私は教室の閉まった窓から外を眺めていた。



「雨だね」私はがっかりしながら言った。



「しょうがないでしょ?梅雨なんだから。さっさとお弁当食べないと、この湿気で腐るわよ」私の目の前には、麻衣が既にお弁当を食べ始めている。



「お久しぶり、百武さん」私たちの横に椅子を置いて池澤君が座った。



「池澤君」私は驚いてしまった。



「また、亜矢に悪い虫が集ってきた」麻衣は深い溜息を漏らす。



「まぁ、まぁ、硬いこと言わない」と池澤君が弁当を机に置こうとすると、麻衣はその手を抑えた。



「これから仕事をするんだから、弁当置くな」麻衣は机の上にスケッチブックを広げた。



池澤君は手で弁当を持ちながら食べる。



「池澤君、森下君との将棋はどうだったんですか?」私が池澤君に言うと、池澤君は嬉しそうに笑った。



「五連敗」池澤君は箸を持ってるほうの手でパーを作って私に見せた。



「さすが森下君だ」私は嬉しくなっていった。



「クソ!」池澤君はわざとらしく悔しがった。



「俺は百武さんが好きなんだけど」池澤君が演技の途中で突然の言ってきた。



私は固まってしまった。



「あんた、池澤っていったっけ?」麻衣の言葉に池澤君は頷く。



「この亜矢はガチでボーイズラブだから」麻衣は池澤君を睨みつける。



「そう、・・・・そうですよ。私はボーイズラブなんだから」私は池澤君を見ないように言った。



こういうのは、だいたいボーイズラブと言えば大体引いて近づいてこない。



「俺はボーイズラブでも構わない!」池澤君は自信満々に言った。



「わ、私はボーイズラブじゃないです!!」思わず私は大声で言ってしまった。



「どっち?」池澤君は私を困惑の表情で見つめる。



「もう、どっか行ってください」私は池澤君を追い払った。



「はぁ」私は深いため気を漏らした。



私はクラスの中を見渡す。



いつもの森下君のグループ。



だけど、白土さんのグループがないどころか、白土さんすらいなかった。






昼から本格的な大雨となり、シトシトと雨が飽きもせず降っている。



森下君がイライラしながらいつもの席に座っている。



いつも時間にうるさい白土さんが来ていない。



ガラガラっと扉が開き、やっと白土さんが現れて何も言わずにいつもの机に座った。



「やっと揃ったか・・・・・じゃ、これからロリータファッションの作戦会議を行う」森下君は両肘を机に付いて手を組んで目の前に置いた。



「なにそれ?碇ゲンドウのマネ?」白土さんは不機嫌そうに言う。



「そ、それでロリータファッションの服はどうするんですか?」私は森下君に話を即させた。



「それなら問題ない」そう言って、さっきから森下君の足元にあるでっかいバックから服を取り出した。



机の上にはまさにロリータファッションがどっさりと、靴や髪飾りとかかなり充実してる。



「森下、あんたまさか幼女を誘拐して着せ替えしてるんじゃないでしょうね?」白土さんは森下君から体を離す。



「馬鹿か。俺は犯罪者じゃない、・・・・これは姉貴から借りてきたんだよ。姉貴は小さい頃はロリータファッション中毒だったからな」森下君は偉そうに言った。



「この弟にしてその姉ありって感じね」白土さんの言葉に私は頷きそうになってしまった。



私は白土さんをずっと見ていた。



この前、私は森下君の報告をしたときも白土さんは上の空だ。



「それじゃ・・・・・俺はまたあの池澤の相手しに行くから。好きなものを探して、着てもいいから決めておけよ」森下君は私をチラリと見て、美術室を後にした。



「さてと・・・・さっさと終わらしちゃいましょ」白土さんがロリータファッションの服を物色し始めた。



「そうですね」私は明るい声を上げた。



しばらく、私たちは黙々と服を選んでいく。



「ねぇ?」白土さんの声が聞こえる。



「なんですか?」私は笑顔で白土さんを見ると、白土さんは服を物色していた。



「私、先輩に告白しようと思うの」白土さんも私を見た。



「す、スゴイです。すごくいいと思いますよ」私は嬉しくなって、白土さんの手を握った。



「私も・・・・ショタコンだってことも打ち明けようと思う」白土さんの真剣な表情をしている。



「あっ」私の白土さんを握っていた手がするりと落ちてしまった。



森下君の報告を聞いたから・・・・・。



「私は別に森下が成功したから、打ち明けるんじゃないよ」私の思考を読み取って、白土さんは笑顔で言った。



「先輩に隠し事をしたくないの・・・・・私は本当の自分を分かって好きになって欲しい。百武さん、私はこれでいいのかな?」今度は白土さんが私の手を握った。



白土さんの手は少し冷たい汗で濡れ、震えていた。



「大丈夫・・・大丈夫だよ」私は白土さんの震える手をしっかり握ってあげた。






放課後。



フリーズしてる白土さんは隣にいる私の手をずっと握っている。



これから白土さんが告白するっていうのにこれじゃ、森下君の再現じゃないか。



結局、私は白土さんの告白するところまで付き添うことになった。



体育館の裏、梅雨のうっとうしくらいの雨は降り続いていた。



体育館の中では、バスケ部の練習が終わったばかりで中から賑やかな声が聞こえてくる。



もうすぐ、約束の時間だ。



「気をしっかりね」私が言うと、白土さんはウンウンと首を縦に振るだけだ。



「来た、白土さん頑張って」私は白土さんの肩を叩き、遠くのほうに避難した。



遠くからでも白土さんの意中の人が、今白土さんの目の前にいるのが確認できる。



自分のことじゃないのに、凄いドキドキする。



会話は聞こえないのだが、私はわくわくしながら二人の動向を見守った。



その時。



白土さんは突然走り出して、大雨なのに傘も差さずにその場から立ち去ってしまった。



白土さんの意中の人も体育館に戻っていく。



その場には白土さんのお気に入りの傘しか残っていなかった。



私は「なんで?」っと思いながら二人のいた場所に戻っていく。



私はその場に残されてしまった傘を手に持った。



この傘どうしよう?あとから白土さんが取りに来るかな?



私は散々悩んで、傘は体育館の壁に立てかけておいた。



そして、どうしようもない胸の苦しさが私に押し寄せてくる。



私がショタコンを言うことを止めるべきだったのかな?

白土さんに森下君の報告なんかしなきゃよかったかな?

なんで?なんで白土さんみたいないい人をふっちゃうんだろう?



最後には訳のわからない怒りがわくが、私は落ち着くように自分に言い聞かせて大きく深呼吸した。



一番辛いのは白土さんなんだ。



私はずっと、白土さんが走って見えなくなっていく景色を思い出していた。






梅雨が終わり、日が皮膚をさすような感覚へと変わっていく頃・・・・放課後の美術室の会議は森下君主催のロリータファッション会が行われた。



そのころになるとセーラー服からブランスへと衣替えが終わって、この換気の悪い美術室はちょっとした熱気に包まれていた。



ロリータファッションにも夏用の露出の多いものがあると、森下君は偉そうに説明していた。



白土さんは会議にはいつものように参加し、森下君に嫌味を垂らす。



それでもちゃんと白土さんはロリコン、ショタコンの話は封じてくれていて、森下君はものすごく感謝していた。



白土さんもいざロリータファッションに着替えるとその気になってきて、途中から森下君主催から白土さん主催へと権限が移行していく。



私と白土さん、緋香里さんで楽しく着せ替えをすることができた。



「じゃ、俺は緋香里を送っていくから」緋香里さんは用事があるということで、先に着替えて制服に戻っている。



そして、森下君は緋香里さんを連れて、美術室を後にした。



私は緋香里さんの満足そうな笑顔を見れてすごい嬉しい気持ちになっていた。



「そろそろ、私たちも着替え・・・・・」私は白土さんを見て言葉を飲み込んだ。



白土さんは椅子に座り、何かを耐えるように眼を瞑っている。



そうだ、あれから大して時間が経ってないんだ。



頑張って明るく振舞ってたんだよね?



ショタコンなんて関係ない、白土さんは列記とした女の子なんだから。



私は白土さんの隣に座った。



白土さんは隣に座る私に気付いて、顔を見合す。



「ごめん」白土さんはそう言って、私に抱き着いて泣き始めた。



「私もごめんなさい」私ももらい泣きしてしまって泣き始めてしまった。



私たちは二人とも泣き続けた。



どちらが先に泣き終わったんだろ?



美術室の中で二人のグスグスという音だけが残る。



不意に、私と白土さんは目があった。



そして・・・・ふっと、白土さんは私に唇を合わせてきた。



私は突然のことで驚き、何か言おうとしたが口が塞がっていて何も言えない。



「ん?」ガラッと美術室の扉が開き、森下君が私と白土さんがキスをしているところを丁度目撃されてしまった。



「いや、違うんです」私は白土さんから唇を外して、森下君に言う。



「おいおい・・・・レズなら他でやってくれ、亜矢」森下君は真剣な眼差しで言った。



「こ、これは事故なんですよ・・・・・ほら、白土さんも何か言ってくださいよ」私は白土さんに言ったが、白土さんは顔を赤らめて俯いたままだ。



「亜矢、このロリコンの神聖な美術室にレズを持ち込まないでくれよ。・・・・でも、亜矢はボーイズラブ、ロリコン、ショタコン、レズまで制覇してしまったか」そう言って森下君は笑った。



「だから!違うんですって!」私は大声を上げた。



「白土・・・・その辺で勘弁してやれよ」突然森下君は白土さんに言った。



白土さんは舌打ちをして、森下君を見る。



「面白いところだったのに」そう言って白土さんがため息を漏らす。



「ちょっと、どういうことですか?」私は白土さんに驚いて言及した。



「亜矢、ショタコンの理論を考えれば解るだろ?白土は小学生をもてあそんで、辱める姿を見るのが大好きなんだから。それと同じ原理さ」そう言って森下君はため息を漏らす。



「でも・・・・・・・・・白土も調子が戻ってきたみたいだし、亜矢も白土を勘弁してやってくれ」森下君は私を宥めるように言う。



「でも・・・・私、ファーストキス奪われてるんですよ?」私は言った。



が、私はこの二人にこの発言がまずい事に気付いてなかった。



しばらくの間をおいて、白土さんが口を開いた。



「亜矢って・・・・・処女?」私はその発言に固まってしまった。



「あ、それは俺も生物学的に気になる」森下君も白土さんの発言に乗ってきた。



「あ・・・・・え・・・・・」私は生物学的ってなに?と思いながらも、反論の言葉が出てこない。



「処女じゃないのに、ファーストキスもまだってのはそれはそれで凄いけど」白土さんが怪しげな笑みを見せる。 



「さて、亜矢イジリも楽しんだことだし、着替えるから森下は美術室の外に出ってって」そう言って、白土さんは森下君に手で追っ払う仕草をする。



「はいはい」森下君はそう言って、美術室を出ていく。



「あ・・・・あの・・・・」会話に置いてけぼりの私は完全に遊ばれてる。



白土さんは私に背を向けて着替え始めたので、私も白土さんに背を向けて着替え始めた。



「亜矢?」私の背中から白土さんの声が聞こえる。



「はい?」



「ありがと」白土さんの言葉に、私はくすぐったくなってしまった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ