に。
「さてと。貴方を鶯谷の間に連れて行かないとね。」
不安げに揺れる紫金の瞳は見ないフリをして雪柳と部屋の外にでる。外には恭しく私の式が頭を垂れている。しゃん、と扇子を鳴らすと靄のよう消えていなくなる。雪柳は驚いてマジマジと私を見ていてそれに少し苦笑いを漏らす。
「私たちは、式と呼ばれるモノを使役するの。それならば貴方もわかるでしょう?」
鬼、ならば私たちと一戦交えたこともあるはず。大抵の一族ならば式を一対だけ使役する。
「寄り代は自らが使う、そこに宿る式は自らの分身、に近いかな。」
私の寄り代は蒼い扇子、音が鳴るのは扇子についている鈴の音。式の能力が高いほど使う者が高位な証。
「だから、貴方が私に危害を加えようものならば私の意志に関係なくこの子たちは貴方を殺そうとするでしょうね。」
「……信じていない、という牽制か?」
少しだけ怪訝な顔をした彼にふっと笑って。
「そうともとれるけど、貴方が何かをしようとするときよ。何もしなければこちらも何もしないわ。私、先制攻撃はしたくないタチなの。」
雪柳は私を見て何かを考えるように黙り込んだ。別に式だけが私の能力ではないから雪柳に話したところで害はない。
「ほら、ここが鶯谷の間よ。今日からあなたの部屋ね。」
襖を開け、雪柳を中に入れる。一応客人用だからある程度は広いしある程度の家具もある。生活するには困らない。
「さて、細かいことは後で聞くわ。とりあえず手っ取り早く契るわよ。」
婿入りなんて、馬鹿げたこと仰る伯父なんかしるか。と思いつつ、揺れた紫金の瞳を深く覗き込んで。彼の心に手を触れて私は能力を動かす。




