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異世界大陸統一記  作者: クロキダンカー
1章召喚の章
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只今脱走中

 「まだ出来んのか?」


 宰相でも有る男が部屋の中に居る兵士に問いかける。


 「は。昨日までの進行状態から見ても今日中には出来るかと」


 「落ちついたらどうだ?宰相よ」


 兵士が答えた後、別の男が落ち着かない宰相に声をかける。


 「お言葉ですが殿下。今日で奴を閉じ込めちょうど100日、これほど長く待たされたのですから落ち着けと言われましても無理でございます。これでやっと殺すための口実が出来るのですし」


 「くくく」っと不気味な笑いを浮かべ、宰相が殿下であるメリウスに答える。


 「宰相はなぜそこまであの男を殺すことにこだわる?魔法が使えないのだぞ」


 「それは簡単な理由です殿下。もう1人の異世界から来たカカシ殿の成長ぶりはお聞きでしょうか?」


 「ああ、もちろん知ってる。もう魔法を自在に使いこなし、剣の腕前でも近衛の部隊長と互角とか」


 「そうです。それに頭が良く、異世界ではかなりの教育を受けたのかと思われているほどです。私が危惧するのは、あの能無しが化けて敵国につく事だけなのです。魔法は使えないと言っても何かしらの能力を持っていると思われていますし」


 「なるほど。他の者は皆そこまで真剣に考えてない。危険な存在になってから殺そうと思ってるようだがそれでは遅いと考えているのだな」


 「そうです。危険な芽は早めに摘んでおいたほうが安心していられるでしょうし」


 「ふふふ。宰相は本当にこの国の未来のみ考えているのだな。まぁそのおかげで今回父を説得するのに時間がかからなかったから、感謝すべきだな」


 メリウスは自分の疑問を解決したが、今度は宰相の方に疑問が出来たようだ。


 「殿下。お聞きしてもよろしいですか?」


 「なんだ?」


 「はい。なぜあの王の許可なしでは持ちだせない本を訳させようと考えたのですか?殿下も私と同じであの男に国の秘密が書かれているかもしれない本を読ませ、それを口実に殺そうと画策なさったとは思えないのです」


 宰相が自分の疑問をぶつける。


 「そんな事か。それは簡単にいえば俺の好奇心だ。あの本は我が王家に代々伝わる家宝。だが古代文字の為にまったく読めず、何が書いてあるかも不明。故に何が書かれているのか気になったのだ。それより宰相よ、もしあの本が機密に関する物だった場合はいいが、そうではなかった場合どうやって殺す口実にするのだ?流石に国の機密を知らない者は殺せないぞ?」


 宰相の疑問に答え、宰相にどうするのか聞く。


 「ご心配なく。あの男が仕事を開始した時点でどうやっても口実が出来るようになっておりますから」


 宰相は自信満々に答える。


 「ほう、聞かせてくれ」


 「はい。まずあの男は殿下に文字が読めるというふうに答えたのです、『もし文字が読めませんでした』と言って来たら殿下にウソをついた事にあるので不敬罪になり殺せます。それに、無理にあの部屋から出ようとしたら見張りの兵士に殺されます。本が仮に訳されたとなれば、『古代文字の禁令』に触れるため死罪になりますので確実に殺せるのです」


 「そうか。ではあの部屋に入った時点で、本が訳されようが訳されまいがあの男には死しかないのだな」


 宰相は満面の笑みを浮かべ「はい」と答えた。

 その時だった。部屋のドアが叩かれ、兵士が5冊の本を持って入ってきた。


 「お待たせいたしました。本が届きました」


 そう言って部屋の中に居た兵士に本を渡し出ていった。本を受け取った兵士は宰相に本を渡す。


 「おお、ついに出来たか!!宰相読んでみてくれ」


 「はい」


 メリウスは宰相に促し、促された宰相は咳払いをした後読み上げ始めた。


 「 春は、あけぼの」


 宰相は1冊目を読み上げ始めた。


 「次」


 「祇園精舎の鐘の声」


 宰相がメリウスの要望にこたえるが、期待通りの物は5冊の中には無かった。


 「1冊目は『枕草子』・2冊目は『平家物語』・3冊目は『徒然草』・4冊目は『源氏物語』・5冊目の『トンネルをくぐると』で始まる本は知らないが、他は皆有名な本ばかりではないか!」


 メリウスは期待外れだった事に落ち込む。


 「ええ、しかも一言一句間違いがございません。これ全てを覚えている事は不可能ですし、書いてあったのではないかと思いますが・・・・」


 宰相の方は書かれている内容に戸惑っている。書かれていた4冊の本の内容全てがこの国の学校の教科書に載っている程有名な物なのだからだ。 


 「大変です」


 先ほど本を持ってきた兵士が扉をすごい勢いで開けて入ってきた。


 「不礼であろうが!!」


 部屋の中に居た兵がノックもせず入ってきた兵を怒鳴りつける。


 「よい。どうした?」


 怒鳴る兵に声をかけ、宰相が入ってきた兵に聞く。


 「は。ご命令により見張っていた男が姿をくらましました」


 「「なんだと!!!!!」」


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