幽閉と監禁の違いが分からない
「何もなしか。・・・腹減った」
異世界に来て2日目の朝、俺は食料を探すために部屋の中を物色していた。
(・・・よわった。ここに来てから何も食べてないし、腹が減って眠れない。どうしよう?)
部屋の中で立ち、考えていると廊下に足音がし部屋の扉の前で止まった。
(うん?俺を見張ってると思われる兵士の交代か?)
昨日はきずかなかったが、朝起きると扉の外に人の気配がしていた。
部屋の扉にやってきた人物は、扉の前で何か話している。そして話声がなくなると扉が開き、18才くらいの男が3人の護衛と見られる兵士を伴ってやってきた。
(誰だ?それに兵士も昨日見た奴と鎧が違う)
部屋にやってきた兵士と少年を見ていると、兵士の1人が前に出てきて顔面を殴ってきた。
「殿下の御前だ。ひれ伏せカスが」
殴られ倒れた俺に兵士が告げる。
(昨日の奴より力が強い。にしてもムカつくな)
ムカついた俺は寝転んだまま口で反撃する。
「カスっていうのは物なんだよ。話したり、ひれ伏す事も物には出来ね―んだよ。そもそも話しかけてきた時点で俺のことを人ってみなしてんだよ。そんなのもわかんねーのか?バーカ」
自分でも何を言いたいのか良く分からない事を言っていた。これではまるで小学生のケンカだ。
だが、こんな訳の分からない言葉に兵士の顔はみるみる赤くなっていく。
「貴様!!!」
そう言って腰にかけていた剣を抜こうとした時だった。
「能無しの分際で面白い事をいうね」
殿下と言われた男が口を開き、剣を抜こうとした兵士を止めた。そして何の前触れもなしに聞いてきた。
「何の能力をもらった?」
(能力!?・・なぜ知ってる?)
「不思議か?カカシ殿の話によると、ここに来る際に何かしらの力をもらったはずだ」
俺の疑問に思っていた事を答えてくれた。
(あいつか!!めんどくさい事をしてくれた。・・・それよりどうする?ウソで切り抜けるか?)
「ああ、ウソは通じない。ウソを見抜く能力が僕にはあるから」
俺の考えている事に対して殿下がくぎを刺してきた。
「全ての言葉を読む事が出来ます」
俺は悩んだ末、ウソか本当か自分でもよく分からないことを告げた。
殿下はこの言葉を聞くと、一瞬驚いた顔をし、急いで扉に向かって走っていった。
「殿下!どちらへ??」
3人の護衛と思われる兵士は予想外の行動だったのか慌てて呼びかけ、後を追う。
「父にところへ行く」
そう兵士に告げると扉を開き、部屋から出ていった。護衛も続いて出ていく。
(何がウソを見抜く能力だ?そんな能力無いくせに)
1人になった俺は横たわった状態から起きあがり、床の上に座る。
(去り際に万象の目を使ったが、こいつはすごく便利だな。相手の才能や能力を見抜くのだから)
扉に向かい走り始めた時に、殿下の背中を万象の目で見るとゲームのステータス見たいのが一瞬だけ見えた。普通の人なら読めないが今の俺には十分だ。絶対記憶で瞬時に記憶されるのだから。
(えー、名前はメリウス・アドーレ・アスガラ。年齢は18才。属性は火と土。才能は統治者。能力はなし)
俺は殿下ことメリウスの背中に映った物を思い出す。
(これだけわかれば十分だな。で、この属性っていうのが魔法の属性なのだろう。確か全部で4種類のはずだ。その内の2種は分かった。よく読む小説とかだと基本は火・水・風・土で、派生に雷・氷といった物がくるけど、ここでも同じなんだろうか)
≪ぐぅ~≫
お腹の鳴る音がした。体が限界だと告げている。
どうしようもないから扉の前に居る兵士に声でもかけてみようかなと思った時、扉が開きお盆を持った兵士が1人入ってきた。その兵士はお盆を入り口近くのテーブルの上に置き何も言わずに去っていった。
(おお、パンとスープだ!!これ食べて良いってことなのか?何も言わずに去っていったけど・・・。まぁ何か言われたらそれはその時でいいや)
俺は1人納得しパンとスープを食べ始めた。
パンは固めだがスープにつければ何も問題はなく、スープはコンソメに近い味で少しだけ野菜と思わしき物が入っているだけのシンプルな物だが、とてつもなく美味しく感じられた。
「美味かった」
パンとスープをあっという間に平らげ、胃に物が入り落ち着いた俺は部屋の中に何か無いかと探し始めた。
しばらくの間探していたが特に何もなく、手持無沙汰になっていると再び廊下に靴の音が聞こえてきた。
今回の方が人数がおおい。そして、再び扉の前で止まり、話声がしたあと扉が開いた。
今回扉から入ってきた人は全員鎧を着ており、洋服姿の人は誰もいなかった。
「ついてこい!!」
やってきた男の中で1番偉そうなおっさんが俺に対して言うと、俺の周りを他の兵士が取り囲んだ。
(この状態で逆らったら袋叩き決定だな。ここは素直に従う方が得策だろう)
そう考えた俺は了承し後をついていくことにした。
★
部屋を出て約10分が経つが未だに移動を続けている。今まで階段をあがったり、下がったりを繰り返し、正直元の部屋から上に行ったのか下に行ったのか分からなくなり始めたころ、やっと1つの扉の前に辿り着いた。
「中に入れ」
先頭を歩いていた男が俺にそう命令した。俺は中に入ったがそこは兵士の詰め所みたいな見張り台しかない部屋だった。
「あの扉をくぐれ」
また同じ男が部屋の中にある扉を指し示す。
言われたようにその2つ目の扉を開くと、その部屋にはベット、机、椅子、そして大量の本が置かれていた。
「ここでこれからは生活と仕事をしろ。仕事は机に置いてある本を我々が読める字に書き換える事。後ろの本棚に関係有ると思われる本を置いておいた。食事は1日朝と夕の2回。トイレやなどといったものは奥にある扉の先にある。以上だ。あと、仕事終了までここからはでれない」
そう言いい俺1人を残し皆が居なくなった。
(これって幽閉じゃねぇ!?)