異世界は楽しくなさそうな気配
(ザワザワ騒がしいな。・・・それより、頭が痛い。風邪でもひいたのか?)
そんな寝転んでいる俺の肩を誰かが叩き始めた。そして徐々に力が強くなってきた。
「何だよ!!」
俺は強く叩かれる事にイライラし顔を叩いてる奴に向ける。するとそこにあったのは見知らぬ人の顔だった。そして、辺りには鎧を着た兵士が5~6人西洋の槍を俺に向け立っている。その兵の先におっさんが3人、みんな似たような服装で立っており、左を見ると俺と同じ感じで槍を向けられた15・6の少年が変な模様の書かれた床に座っている。
(なんじゃこりゃ?みんな中世ヨーロッパの人みたいな服装をしてる)
俺は1人混乱していると3人のうち真中に居たおっさんが一歩前に出た。そして手をかざし何か合図をすると囲っていた兵士が槍を下した。
「ようこそ、アスガラ王国へ、伝説のブシ様がた。私はこの王国の宰相をしておりますアインテルンと申す者でございます。先ほどは槍を向けるなどの無礼の数々お許しを」
そう言って俺と隣の少年に向かって頭を下げた。そうすると残りのおっさん2人も頭を下げる。
(そうだった、俺は異世界に来たんだ。だからここに居る人はみんなこんな格好をしてるのか。となると、この床に書いてある模様は魔法陣か?)
「出来ましたらお名前をお聞かせ願えませんか」
アインテルンと名乗るおっさんは頭を上げ、訪ねてきた。
「カカシ・ムトウです」
俺より先に隣に居た少年が名乗った。
「アオイ・エドガワです」
「カカシ様にアオイ様ですか。早速ではありますがおふた方にやっていただきたい事がございます」
そう宰相が言うと兵士が1人、2種類のガラスの様に透明な玉を持ってきた。
「これは魔力の測定器と属性判明器という物でございます。この世界では魔法がありますので、おふた方にはこれで魔力と属性を調べていただきます。まずはカカシ様から」
そう宰相が言い、兵士がカカシと名乗る少年の前に玉を持って行く。
「どうすれば?」
「玉の上に手をのせていただければ大丈夫です」
カカシは宰相が言ったとおりに玉に手をのせる。すると玉が光り透明だった所に数値が現れた。
「ま、魔力:5000です」
現れた数字を兵士が少しどもって読み上げると部屋の中が騒然となった。
「魔力5000だと!?一般の約10倍、宮廷魔導師の2倍ではないか」
こんな感じのセリフがあちこちから聞こえてくる。
当の本人であるカカシは辺りが騒ぐ事を全く気にせずもう1つの玉に手をのせた。
「・・・よ、よ、4属性持ちです」
兵士が更にどもりながらもう1つの玉に現れた結果を告げると、部屋は一転して静かになった。
「な、・・・・・4属性だと!!・・・・・・・伝説のブシ様と同じではないか」
静かになった部屋にで宰相が狼狽しながら呟いた。
宰相の他は誰もしゃべらず変な沈黙が部屋に流れた。
「・・カカシ様をお部屋にお連れしろ。カカシ様今日はお部屋でお休みください。そして明日、王との謁見をしていただきたいのですが」
誰もしゃべらない部屋で宰相が指示を出す。
王との謁見についてカカシは「はい」とうなずくと、兵士に先導され部屋を出ていった。
(なんか良く分からんが、カカシが規格外すぎたってことだけは確からしいな)
部屋の様子からそう考えていた俺のまえに顔を青くした兵士が玉を持ってきた。
「では、アオイ様。お願いします」
宰相も何処か青い顔をしている。
そんな変な空気の中俺も玉に手をのせる。
「ま、魔力:5500」
兵士が俺の魔力を読み上げる。今度は誰もしゃべらない。というより絶句している。
俺はもう1つの玉に手をのせる。
「・・・え、・・・属性・・・0」
兵士の人は慌てた様子で目をこすり、何回も見直している。
部屋の空気が凍った。
「そんな馬鹿な!見間違いではないのか?」
兵士の報告を聞いた宰相が信じられないっという顔で兵士に聞き返す。
「いいえ、間違いなく属性0です」
そう宰相に報告する兵士の俺を見る目には蔑みの感情が現れている。そして、徐々に他の人も蔑んだ目、もしくは汚いものを見るような目で俺を見てくる。
(属性もちだったカカシの時と明らかに違うな。自分の感情を隠そうとしている人は1人もいない。嫌な予感しかしないねぇ)
「宰相いかがなさいますか」
今までしゃべらなかった向かって右側のおっさんが宰相に聞いた。
「私は至急王に報告し、対応を決める。こいつは仕方ないから部屋に連れてゆけ」
そう指示をだし宰相と2人のおっさんは部屋を出て行った。
(あーあ。今までの様付けからこいつになったよ・・・。どうすっかね)
1人考え事をしていると最初に俺を叩いてきた兵士が話はじめた。
「おい、異世界から来た能無し。部屋に連れて行くからついてこい」
(能無しだってよ。初めて言われたよ)
そう思い、自虐を感じ少し笑った。そうしたらいきなり腹を殴られた。
「何笑ってんだよ、能無しが。貴様の様な汚物と一緒に居るだけで反吐が出るわ!」
こう言って2~3発殴ってきた。最後には唾も吐きつけてくるというおまけつきで。
初めて本格的に殴られた俺は動けなくなって床にうずくまった。
(くそ、イって―。口の中切れたか?血の味しかしねぇや。動けそうにないね)
俺が動けなくなったと見た兵士たちは引きずるようにして動かし始めた。床は木ではなく石なので痛さが半端ない。
(俺生きて部屋にたどりつくのか?)
★
あの部屋から引きずられる事5~6分何とか生きて部屋にたどりついた。と言っても俺を引きずった兵士たちは俺を部屋の床に放置し、去り際に1発ずつ蹴りを入れていったから、かなりのダメージをうけているが。
(ここが部屋か)
少し落ち着いたので部屋の中を見渡す。そこは部屋と言うには余りにも広い場所だった。正直会議室といっても何も問題がないくらいの部屋に大きめのベットをはじめとする豪華な家具が置かれていた。
(豪華な部屋だな。庶民的生活をこの前までしていた俺には広すぎて落ち着けない部屋だ。家具も高いのだろう。そう言えば、ここに来るまでの廊下も絵やら彫刻やら色々な物が置いてあったな。それに階段があったのが見えたからここは屋敷というより塔または城ってとこか?情報が少なすぎるて分かんないな。少し探ってみるか。俺の安全にも関わってくるし)
そう決心し早速『悪魔の耳』を使ってみることにした。
(おお、聞こえる聞こえる。とりあえず宰相の声を探って盗聴するか)
そう決めると宰相が話している声がはっきり聞こえてきた。どうやらもめてるみたいだ。
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「殺すべきです。放置するには魔力が高すぎます」
「いえ、ここは城から出し見張りを付け機会を伺ったのち殺す方がいいかと」
「そうだ、何も今すぐ殺す必要はない。なんたって属性を持っていないのだぞ。何が出来る?」
「しかし、もし国外に出られて我が国の敵となった場合はどうするのです?ここは完全に芽を摘んでおくべきです」
「今のは聞き捨てなりませんな。宰相殿は我ら軍部が他国の兵に負けるとお思いなのですかな」
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(聞くのをやめよう。・・・疲れる。)
悪魔の耳を止め今入った情報から少し考える。
(まず、話し合いの議題は俺をどうするかという感じだろう。宰相は俺を殺したいようだ。他の奴は宰相に反対してるだけのか、本当に殺さないでも大丈夫と思ってるだけなのか分からないから何とも言えない。どっちにしろ逃げる事も出来ないから運に任せるしかないのか。それと初めに宰相が言っていた『伝説のブシ殿』って言い方も気になるけど情報がなさすぎる。今俺に出来るのは天命を待つのみか・・・)
俺は諦めて寝ることにした。色々あって疲れたし、意識をもう保てない。