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異世界大陸統一記  作者: クロキダンカー
2章王国内乱の章
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反撃の狼煙1

~王子派の本隊~

 ドン・ドン・ドン

 物凄い地響きをたてながら20万の軍勢が進む。目標は旧王都イニエスタ。敵は女王の軍勢5万。数で圧倒している為この20万の軍の中で勝利を疑うものは1人を除き居なかった。

 その1人とは四家であるラノス家当主にして軍務卿のマオカ・ラノス。


 「将軍、まだすっきりしませんか?」


 側近の1人がずっと悩んだ顔をしている彼に問いかける。正直側近や部下には理解できなかった。1人の男の存在を出陣前からずっと気にしているのだ。その男の名は、ブレイダ―・ストロング。前将軍であり、10年以上前に将軍職を去った老将だ。軍を離れて長くなるので今回の参戦者の中でも若い者は知られていないが、彼はすごかった。家の爵位は高くないが、前王トール・イニエスタに見出されその腕っ節で将軍職にまで駆け上ったという伝説の男である。だがそんな男でも今回の戦は勝てないと皆は思う。なぜなら兵力差は4倍の上に、かなりの高齢である為昔の様に戦場の前線に出て力を揮えないからだ。

 しかし、いくら周りが言葉をかけてもラノス卿の顔はすっきりとする事は無い。


 「何かある気がする」


 何度目になるか分からないほど聞いてきた答えに側近はため息をついた。


 「将軍、もうじき先鋒隊が一本道にさしかかる頃です。そこで何も無ければブレイダ―元将軍は老いた、何かあったら元将軍は健在という風な考え方をしてはどうでしょうか?」


 言葉では無理だと判断した側近の1人が提案した。


 「分かった。確かに何か仕掛けてくるとなるとあの一本道しかないからな」


 少し前進した事に側近たちはほほ笑んだ時だった。前方の一本道の方から騒ぎ声が聞こえ始めた。

 何事かと騒然とする本隊に馬が走ってきた。


 「申し上げます。一本道の入り口に落とし穴がありましたが、先鋒隊が梯子をかけてわたる模様です」


 「分かった。先鋒がそこを越えなければ後が詰まる」


 伝令の『落とし穴』という言葉に何か一大事でも起こったのかと思っていた側近たちはホッとした。

 反対にラノス卿だけが顔をしかめた。


 「やはり健在か・・・」


 側近たちに聞こえない位の小さな声で呟いた。





 ~アオイ~


 「いよいよだな」


 「ああ、いよいよだ」


 マークと俺がこの道に近づいてくる大軍を見ながら話をしている。


 「それにしてもすごい数だ。あれが全部敵っていうんだから驚きだよ」


 「正直黒い塊にしか見えないけどな」


 マークの言うとおり物凄い地響きと鎧の擦れる音をたてながらやって来る軍団は、1つの黒い塊にしか見えず、正直相手の数の多さにうんざりする。


 「確か先鋒は貴族の軍で構成されてるんだろ?正直敵に同情するよ」


 「どうしてさ」


 「貴族の軍っていうのは基本、自領の領民や傭兵が中心になる。そんな彼らがこれから地獄の落とし穴に入るんだから」


 そう言って俺の方を物凄い目で見てくる。


 「自分はその後の兵たちに同情します。何と言ってもあの地獄の落とし穴の上を通らなくてはならないのですから」


 マークだけではなく、ラルフさんまで俺の方を物凄い目で見てきた。


 「ラルフ兵長、もしかして落とし穴にビビってるんですか?」


 そう言って俺やマークより少し年上のジンがラルフさんに言う。このジンは身長180センチくらいのイケメン君だ。年上だが本人の希望で呼び捨てで呼んでる。


 「ジン。見てれば分かる。もうすぐ先鋒隊が落とし穴に落ちるからな」


 少し青い顔でラルフさんがジンを引っ叩いた。


 「お、敵が走りだした。・・・かかった」


 叩かれたが全く反省の色が無い軽い感じでジンが告げた。

 そして下から悲鳴やうめき声が聞こえ始めた。


 「う~ん。良く見えない」


 ジンの言うとうり崖のこの位置からでは落とし穴がどうなっているのか分からない。しかし、敵は走っていた為次々と落とし穴に落ちてゆく。


 「な~んで走ったんだ?分かる?隊長」


 「あの馬車の荷台をどかす為だろ」


 そう言って俺は落とし穴の先に置いてある馬車の荷台のバリケードを指差す。


 「普通、落とし穴なんて考えないから、目の前に大軍が通るのに邪魔な物があったらどかすように指示を出すだろ?そうなったら兵士たちは走るに決まってるし、急に人間は止まれない」


 俺の解説に「おおー」というどよめきが起きた。


 「だから隊長はあれを俺らに置かせたのか?」


 「半分正解。あの馬車の荷台も罠になる」


 更に兵たちの間で「おおー」という声が上がる。


 「じゃあ、な~んでラルフ兵長や若は敵に同情するの?」


 「ジン、それは俺が教えよう」


 そう言ってマークが教える為に一歩前に出た。


 「昨日渡した魔法付きの杭を覚えてるか?」


 マークの問いに皆が思いっきり首を縦に振る。


 「あの杭にかかっている魔法は、強化魔法と言ってアオイしか使えない古代魔法だ。木を切る道具にも切れ味が強化するように魔法がかけられていたから、その凄さは体験したと思う」


 皆の俺を見る目に尊敬というか憧れの色が入る。


 (ジジイ、今わかったよ。なんで俺の策をあんな風に披露したか)


 軍議でのジジイの気持ちが分かってしまった俺は、気分がとても良くなっている。


 「話を戻すが、昨日の木の杭は強化魔法によって鎧をも貫く鋭さを持っている」


 マークの言葉は衝撃的だったようで皆が驚き始めた。中には顔色が悪い者もいる。


 「それと同じ魔法が付いた杭が落とし穴の中に立っている」


 シーンという静寂がこの場に流れた。


 「じ、じゃあ、あの落とし穴に落ちたら・・・」


 「串刺しだ」


 ジンが少し震えた声でした質問に、マークははっきりと答えた。


 「更にだ」


 そう言って今度はラルフさんが一歩前に出る。


 「落ちた者は地獄だが、後の者も地獄だ。あの落とし穴を塞ぐだけの土は無いので、攻城用の梯子を使って渡ってるだろ?その渡ってる者も落ちれば串刺し、落ちなくても先に落ちた者の串刺しの死体を絶対に見る事になる。しかも、城に続く大軍の通れる唯一の一本道の為、今回参加した敵兵全員がこの状況に充てはまる」


 マークとラルフさんの説明により、俺を見る目に尊敬や憧れの色は消え、皆恐怖の色を浮かべている。


 「あ、あの。落とし穴は2つ造ったんですけど」


 1人の兵の質問が更にこの場の空気をシーンとさせた。


 「そう言えば、自分達も杭の束は2つ造りました」


 もう1人の告白の後、静寂から一転してざわめきに代わり、俺を見る目もますますヤバくなってきた。


 「隊長。まさか・・・」


 「さ~、知らないな・・・」


 これ以上変な目で見られるのはきついので誤魔化そうと試みるが、みんなの追求の目から逃れられそうにない。


 「いや、あの。・・その・・1つ入り口に罠仕掛けたら・・出口のとこにもう1つなんて考えないかなというか・・罠を警戒してもまた落とし穴なんて考えないだろうから引っかかるかな・・なんて考えたりしてみた」


 しどろもどろになりながら、告白した。案の定、俺を見る目が更にひどくなった。





 ~先鋒隊の中の先鋒隊~

 王子派の軍の中の先鋒隊を率いる貴族たちは、イライラしていた。ここに着くまでの間、王都陥落後味方に着いた者や爵位が低い者の扱いがひどかったからだ。更に先鋒という最も危険な役割を命じられたのは、出来るだけ少ない損失で大きな見返りを求める傾向の強い貴族達なので反発とストレスが大きくかかっていた。


 「申し上げます。一本道が見えてきましたが、道には馬車の荷台が置いてあり、通ることができません」


 前方を確認させた兵の報告にイラつきから一転して気分が良くなる。


 「なら百程の兵を出し荷台を確認させろ。今回の出兵では見つけた者にその宝などが与えられるのだ。他のものよりも早くに見つけろ」


 先鋒隊に居た貴族の何人かが同じような命を出した為、多くの兵が一本道に群がっていったが、入り口で消えてしまった。


 「何事だ?」


 突然兵が消えた事に戸惑いながら確認の兵を出す。


 「落とし穴です」


 そう言う確認に行った兵士の顔色は悪い。だが、今はそれどころではない。


 「なら、梯子を持って行き掛けろ」


 そう言い今度は兵に梯子を持たせ行かせる。


 「申し上げます。先鋒隊後方からの伝令です。『速く進まれよ』との事です」


 「くそが」


 後方からの伝令に悪態をついたがどうしようもないので、全軍で落とし穴付近まで行き、梯子を渡ることにした。

 落とし穴に近づき馬を下りた時に穴の中を見て皆の顔色が変わった。穴の中には自分の部下や同じ先鋒隊の落ちた兵士が串刺しの状態になっているのだ。手、腕、腹、頭など体のいたるところから木の杭が飛び出している。しかも、穴の奥行きは約3M程有る為かなり移動に時間がかかり、その間中死体を見なければならないのだ。


 「これを考えた奴は本当に人間か?」


 自然とそんな言葉が出てしまう。

 だが、こんなところで引き返すわけにもいかないので梯子をいやいやながらも渡りきる。

 そして、穴の反対側に着いたら一目散に荷台へとかけて行った。




 ~アオイ~

 「あのさ。いい加減そんな目で俺を見るのをやめてくれない」


 皆のこの上ない程冷たい視線を集めている俺は、限界にきたのでそんな目で見ないように頼む。


 「そんなこと言っても、正直こんな人と思えないような罠を仕掛ける人間じゃあね?」


 「そうです。若の言うとうりです」


 マークの言葉に皆が賛同する。


 「隊長、な~んで穴を渡りきった連中は荷台に向かって走ってるんです?」


 救いの声がジンより上がり、その言葉に惹かれてみんなで崖の下を見つからないように見る。今いる所には防音の結界は張ってある為音は漏れないが、姿は見えてしまう。

 崖の下では確かに穴を渡った者が荷台に人が群がって中を確認している。


 「あれは、お宝が無いか見てるんですよ」


 戦場経験豊富なラルフさんが嫌そうな声でだが解説を始めた。


 「戦場では、お宝に遭遇する事多々有るんです。そして所有権で揉めない様に発見者にそのお宝が与えられるという決まりもあるんです。だから貴族なんかはああやってお宝は無いかと荷台に群がってるんです」


 「そうなんだ。けど、残念だったね。荷台は全部酒とこの葉しかないんだから」


 俺が笑うと皆がつられて笑った。


 「ところでアオイ。あの酒はまだ使わないのか?」


 よほど気になるのかマークが聞いてきた。


 「まだだよ。もっとこの道に人が入ったら使うよ。何て云ったってとっておきだからね」


 俺はそう言った後また笑みを浮かべたが、今度は誰も笑みは浮かべず引きつった顔をした。

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